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【イベントレポート】 IBDとはたらくプロジェクト「自分らしくはたらく」を考える:前編

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ライター:Media116編集部

5月18日(土)、秋葉原のUDX ギャラリーにて「IBDとはたらくプロジェクト」のキックオフイベントが開催されました。IBDとは、国から難病に指定されているクローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease)のこと。その患者数は世界的に増加していますが、適切な治療により健康な人とほとんど変わらない日常生活を送ることも可能です。

「IBDとはたらくプロジェクト」とは、ヤンセンファーマ株式会社が、IBD患者の就労支援に特化した新たな取り組みとして立ち上げたもの。今回のキックオフイベントでは、IBDと付き合いながら「自分らしくはたらく」をテーマに、IBD患者であることを公表している脚本家の北川悦吏子さんのスペシャルトークをはじめ、専門家による講演、当事者によるパネルディスカッションなどが行われました。そんなイベント当日の様子を、前編・後編と二つに分けてレポートしていきます!

IBDってどんな病気?

IBDとは、炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease)のことで、主にクローン病や潰瘍性大腸炎を指します。どちらも慢性的な下痢や腹痛、下血などが主な症状です。国内の患者数は約29万人で、就業率はクローン病、潰瘍性大腸炎ともに約6割程度に留まっています。また、患者の4人に1人が病気を理由に転職した経験を持ち、約3割の人が病気であることを開示せずに就労しています。つまり、希望する仕事や働く環境のもと、自分らしい働き方ができているIBD患者は、まだまだ少ないと言えます。

【ゲストトーク】 脚本家・北川悦吏子さん 「IBDとともに私が脚本家を続けられた理由」

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1989年にデビューして以降、数々のヒットドラマの脚本を生み出してきた北川悦吏子(きたがわえりこ)さん。人気脚本家として脚光を浴びる一方で、腎臓病、IBD、左耳失聴など、常に病と闘いながら執筆活動を続けてきました。そんな北川さんが病気と向き合う過程で、「脚本を書き続ける」という行為はどのような意味を持っていたのでしょうか。

「私が潰瘍性大腸炎と診断されたのは2000年頃で、もともと抱えていた腎臓病が治ったと言わてから5年後のことでした。それから10年後に大腸を全摘出しました。全摘したら元気になると聞いていましたが、入院中は痛みで眠ることもできず、夜中に壁を蹴って看護師さんに注意されたこともあります。縫合不全などが起こり、その後もトラブルが続きます。先生も手をこまねいているような状態が続きました。

そんな中で、私は、脚本を書く、という仕事を支えにして来たようなところがあります。もちろん、ただ、苦しむ、ただ痛みに耐える、という状況の時には、何も他のことは出来ないのですが、少しでも、元気な時間が、穏やかな時間が自分にやって来ると、パソコンを叩き始めたり、物語の構想を、病院の中の売店で買ってきたノートに書き始めたりしました。病気を忘れるために、人生で何か夢中になれるものが必要だと感じます。それが私にとっては脚本を書くという仕事。脚本に夢中になることで生きていく道を探したんですね。私は強い人間ではないので、怖いのも嫌、痛いのも嫌。達観は出来ないわけです。受け入れることなんて出来ない。体はどうにもならなくても、メンタルだけは守りたい。どうしたら病気の辛さを忘れて穏やかに過ごせるか。そのために、仕事、脚本を書く、ということを利用したわけです。

2018年に放送されたNHKの朝ドラ「半分、青い。」の脚本は、最初にお話をいただいてから実現するまで3年かかりました。私は左耳を失聴していますが、それをモチーフにぜひ、ドラマを書きたいと思った。番組関係者も、いろんなことを経て来ている北川さんだから書けるものがあるんじゃないか、と思ってくれた。いろんな人の理解と強力を得て、脚本家にとって最大に過酷だ、と言われる仕事、朝ドラをなんとか、全話書き上げることができました。主人公はハンディキャップを負った女の子で、彼女が人生をどう切り抜けていくか、という私自身の人生を地で行くような作品となりました。」

病気に時間を取られるのはではなく 夢中になれることを見つけて幸せに生きたい

北川さんは2015年に、ご自身がIBD患者であることを公表しています。そのタイミングで病気を公表した理由とは? また、公表後にどのような変化があったのでしょうか。さらにIBD当事者として、北川さんなりの「自分らしく生きる」方法を教えてくれました。

「私が病名を公表した理由は、娘が成長したから。それに、若い頃は健やかなイメージでありたいと思っていたので、あえて病名は公表しなかったんでしょうね。でも公表したことがYahoo!のトップニュースになり、いろんな方が連絡をくださったし、このような場に呼んでいただけたのも嬉しいですね。まあ、隠すことでもないよな、みたいな感覚に全ての人がなったら、楽だと思う。私自身、入院中に読んだ雑誌の闘病記にとても勇気付けられたんです。だから私が話すことで『そんなに大変でも朝ドラの脚本が書けるんだ』と思ってもらえたら。それに、この病気独特の辛さ。再燃した『またか…』という気持ちなど、当事者にしかわからないことも『わかるよ』と言ってもらえるだけで、公表して良かったと思えます。

IBDという病気は本当に辛くて、でも元気な人にはなかなかその辛さをわかってもらえませんよね。私は1日フルで動くのは無理で、1日1イベントしか動けません。疲れから眠くなってしまうことも多く、病気にすごく時間を取られていると感じます。でも人生のわずかな、元気な時間まで病気に絡め取られたくない。病気を治すことに専念するのではなくて、要点だけ押さえたら楽しいこと、夢中になれることに集中していいんじゃないかと思うんです。

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私の職業は特殊なので例外だと思わないで欲しいのですが、番組関係者に『打ち合わせの時間をなんとか2時間以内にしてほしい』と頼んだこともあります。でも、自分のルールを人に押し付けるのではなく、ギブアンドテイクで巻き込んでいく。理解してもらえば何かやり方はあるはずだと思ってやってきました。人生を病気だけに絡め取られないよう、光がさす瞬間を見逃さないように。この病気があっても幸せに生きる方法は絶対にある。それだけは言いたいです」。

【特別講演】 atGPジョブトレ ベネファイ施設長・藤大介さん 「就労支援のプロが語る、したいことを続けるためのセルフマネジメント術」

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続いては、株式会社ゼネラルパートナーズが運営する就労移行支援事業所「ベネファイ」で、難病専門の就労をサポートしている藤大介さんによる講演です。就職活動における「セルフマネジメント」の重要性について、一般的にも当てはまる就職に欠かせないメソッドを伝授してくれました。

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「私がこれまでIBD患者の方たちのお話をうかがってきた中で、したいことが続けられない理由には3つのストレスが関係していました。一つ目は『対人関係上によるストレス』。二つ目は『業務負荷によるストレス』。そして三つ目が『疾病の理解が得られないことによるストレス』です。このようなストレスをセルフマネジメントしていくことが、「したいことを続ける」ために役立っていきます。

セルフマネジメントは就職活動の鍵とも言えます。この理由は、ご自身の状況や希望を言語化してコミュニケーションすることが、就職先での合理的配慮を実現するために不可欠だからです。特に難病であるIBDは、職場のほとんどの方は病気に関する知識がありません。病気について、いかにわかりやすく、いかに相手の不安を解消する伝え方ができるか。そこが重要です。

言語化できるよう事前に整理しておきたいのは、まずは『自分のこと』。どのようなことがストレスや体調不良を引き起こし、対処法やリカバリーに必要な期間はどれくらいか。そして、どのような働き方が公私のバランスや自己実現に適しているのかも整理しましょう。プライベートで実現したいことのために必要な収入に優先順位を置く、キャリアアップややりがいを重視するなど、労働はあくまでそれらのための手段です。」

セルフマネジメントで人と繋がり 自分らしい働き方に必要なサポーターを見つけよう

IBD当事者に限らず、労働者には働く上で得られる「権利」と、果たすべき「義務」が発生します。そんな権利と義務のバランスを保つためにも、病気について言語化し、それを伝えるコミュニケーションが大切。さらに、セルフマネジメントを通して、自分のサポーターとなってくれる人について整理することも、自分らしい働き方をしていく上で重要なポイントに。

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「難病を抱えて働く方への配慮やサポートは、職場が合理的配慮として行うべきことであり、当事者の方がもつ権利です。企業、職場は従業員の安全に配慮する義務がありますから、IBD患者の皆様も、きちんと必要な配慮を説明し、理解してもらったうえで働くことができます。でも、いざ働き始めると『トイレや休憩が必要なタイミングで言い出せなかった』、『自分だけ休憩が欲しいとは言えずに我慢する日々が続いた』というケースがありました。つまり、体調を優先すべきか、仕事を優先すべきかを見極める状況が出てきます。これは働くスタイルとも関係しますね。また、権利がある一方で義務もあります。ご自身が職場で担う義務は果たされているか、権利とのバランスもモニタリングする。職場内で良好なコミュニケーションを維持していくためにも重要なことです。自分の権利と果たすべき義務について、考えてみてほしいと思います。

先に「自分のこと」について言語化できるように、とお話ししましたが、『疾病の状態』について言語化することも重要です。IBDの知識がない相手の誤解や不安を避けるために、具体的にイメージできる表現を心がけましょう。例えばトイレの頻度や時間も『1日3回程度を1回10分くらい』と伝えれば、イメージを持ってもらいやすくなります。『人口の約1%の人が神経系の下痢や便秘を抱えていると言われますので、それほど珍しいことではありません』といった表現も、相手が抱く難病に対するイメージをやわらげることが可能でしょう。

最後に、ご自身の身の周りにいる『サポーター』についても整理し、職場の方に伝えられるようにしてみてください。これは、主治医や栄養士、助成機関の担当者、家族や友人、パートナー、患者会のような同じ立場の人たち、今の時代はSNSでの繋がりも、ストレスを緩衝するソーシャルサポートの役割を果たします。これらの方々は、就職前は客観的な視点から語ってくれる相手として、就職後はストレスマネジメント上のキーマンとして大きな役割を果たしてくれます。そして入社後は同僚の方たち。職場でもご自身のことをわかりやすく伝えられれば、ストレスフルにならず働きやすい環境の実現が可能となるはずです。セルフマネジメントによって人の繋がりを作っていくと、自分にない力も得ながら、したいことを続けていくことが可能となります」。

病気と自分と向き合うことが 自分らしい働き方をするための第一歩

北川悦吏子さんのお話からは、「自分のルールを理解してもらいながら、ギブアンドテイクで周囲を巻き込んでいく」ということ。藤大介さんのお話からは、「セルフマネジメントを行いながら自分のことを言語化して伝え、人とのつながりをつくることが重要」ということを教えていただきました。どちらも、自分にできること・できないことをしっかり伝えるコミュニケーションが不可欠と言えます。『この病気の大変さは自分にしかわからない…』と殻に閉じこもるのではなく、自分の病気と向き合い、自分には何ができて、理解とサポートが必要なことは何なのか、自分の言葉で伝えられることが重要なんですね。

後編では、3名のIBD当事者と専門家によるパネルディスカッションの模様をレポート。職種も働き方も異なる3者3様の事例と、来場者からの質疑応答コーナーも行われました。

>>後編へ続く

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