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靴が視覚障がい者を道案内!?噂の「あしらせ」体験してみた!

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ライター:榎戸篤(えのきど)

靴が目的地まで案内してくれる――――
視覚障がい者にとって、そんな夢のような製品があるという噂を耳にしました。

その名は、「あしらせ」
ぜひ試したい!と、視覚障がい(弱視)の筆者が体験&取材させてもらうことに

便利なのはもちろん、歩くことが楽しくなる、そんな製品だったので、ぜひご覧ください!

靴が道案内!?視覚障がい者の歩行サポート、「あしらせ」とは?

「あしらせ」は、靴に装着した器具が足元を振動させ、目的地まで誘導してくれる歩行ナビゲーションシステムのことです。
左へ曲がる時に左足が振動、右へ曲がる時に右足が振動、目的地の方角も振動で教えてくれます。

本田技研工業株式会社(Honda)発の第1号スタートアップとして起業した株式会社 Ashiraseが提供し、2023年1月にベータ版の先行販売が開始されました。

国内で多くのメディアに取り上げられているほか、2023年1月には世界最大規模のテクノロジー見本市CES(開催・米ラスベガス)でInnovation Awardを受賞するなど、世界からも注目が集まっています。

あしらせは本当に便利なのか?体験してみた!

さっそく体験!
今回は、あしらせを使い、Ashirase東京支社(東京都墨田区)からスカイツリー近くの喫茶店へ行くことにしました。

Ashiraseの千野歩代表取締役CEOが持ってきてくれたのは、コレ!!

あしらせ 器具+スマホ

あしらせ、てっきり大きな器具かと思いきや、靴に収まるサイズ。
クリップのようなもので靴にはさむため、取り外しも簡単そうです。

あしらせをセッティング

さっそく、器具とペアリングさせたスマホのマップに目的地を入力。
すると・・・

ブーブー!と、スマホのバイブのように、靴が振動し始めました!!

最初に、歩き始めの体の向きを前後左右の4方向で教えてくれます。
歩き始めが前方の場合は両足の前側、後方の場合は両足のかかと、右の場合は右足の側面、左の場合は左足の側面が振動するので、体の向きを調整。両足の前側が振動したら、その方向に歩き始めます。

普段地図アプリに目的地を入力したのち、方角がわからず、でたらめに数十メートル歩き方角を確かめるというRPGゲームのようなことをやっているボクにとって、その場で方角が分かるのは嬉しいです。

さっそく歩き始めます。
すると、左足がゆっくりした間隔で振動し始めました。
「次、左に曲がるよ」というサインです。
カーナビみたいですね。

そのまま直進すると、左足の振動の間隔が縮まり、曲がる5〜10メートル位手前になると、ずっと振動し続けるように。
それに従い左折します。

すると、またゆっくり右足が震え、直進すると振動の間隔が縮まり、ずっと振動し続けたところで右折・・・
これを繰り返していきます。

少し迷っても、つま先を地面にトントンとすると、再度ルートを検索し直して、体の向きを教えてくれるところから始まるので、安心です。

少しずつあしらせの使い方に慣れ始めたボク。
周囲を観察してみると・・・

スカイツリー周辺

大通りではトラックが走る音がし、細い路地に入ると住宅や小さな工場があることがわかりました。
「スカイツリーの周りって、昔ながらの下町って感じなんだな~意外~もっとオシャレタウンかと思った~」という感想を抱くボク。

「ん??」
・・・と、そこでふと気づきました。
普段こんなに周りの雰囲気を感じているだろうか?と。

いつもスマホの地図を目に近づけ確認し、少し歩いては立ち止まり、再び確認・・・を繰り返すボク。
道の途中で立ち止まるたび、後ろの歩行者や自転車に神経をとがらせ、ストレスを感じているため、周りの雰囲気に気を配る余裕なんてありません。

きっと、普段スカイツリーの周りを歩いたら、「スカイツリー、きれいだね~」と、幼稚園児でも言える感想を言っていたことでしょう。

しかし今は違う。
美しいスカイツリーの下には、昔ながらの住宅や工場が広がっていることを知っている。

歩くって、こんなにいろいろなことを教えてくれ、こんなに豊かな体験だったんですね。

そして両足が長く振動し、目的地到着のサインが。
スカイツリーのすぐ近く、住宅街の一角にあるオシャレな喫茶店にたどり着いたのでした。

スカイツリー周辺を歩く

あしらせ 体験して感じたメリット・デメリット

視覚障がい(弱視)から見たあしらせのメリットとして、
・歩行に集中しやすい
・地図アプリをいちいち見る必要がない
・道の途中で立ち止まるストレスが軽減される
・ルートの再検索がラク
・スタート時の方角が一発でわかる
・目的地に到着した際、つま先トントンすると目的地の方角を教えてくれるのが便利(個人的に、普段目的地がどの建物かわからないことが多いため)

があるとボクは感じました。

一方で、あしらせが苦手とすることとして、
・駅や商業施設など大きい目的地に対して、入り口をピンポイントに指し示すことが難しい
・現状、大きな施設内のナビが苦手
・新宿や渋谷など、地上や地下の高低差がある場所のナビが難しい
・GPS機能が届かない場所のナビが難しい
などがあげられるかと思います。
※どの課題も解決に向け開発を進めており、アプリのアップデートで進化していく予定とのことです。

また、全盲の方の意見も聞いてみたいところですね。

ただストレス軽減や移動時間の短縮になるのはもちろん、周囲を観察する余裕が生まれ、歩くのが楽しくなりそうなため、発売したらボクは購入したいなと思いました。

インタビュー~Ashirase 千野歩代表取締役CEO~

最後に、Ashiraseの千野歩代表取締役CEOにインタビューをさせてもらいました。

―――あしらせの開発のきっかけを教えてください―――
「以前、高齢で目の悪くなった親族が歩行中に川へ転落し、死亡する事故がありました。

事故を受け、本田でエンジニアをしていた私は、車の分野では安全性がよく叫ばれるけれど、歩行を安全にするためのテクノロジーがあまりないのではないか?と感じました。

テクノロジーがもっと歩くことに入っていけば、視覚障がいの方がより安全に、より豊かな歩行が実現できるのではないかと。それが開発を始めたきっかけですね」

―――あしらせは、どのようにして靴に装着する現在の形になったのでしょうか?―――
「開発の過程で、150人ほどの当事者にインタビューや実験をさせてもらいました。

耳で聞く形、手を引っ張る形、いろいろ試しましたね。
ただ、とくに視覚障がいの方は歩行中に聴覚をよく使っていることがわかったり、当事者の方に「白杖は自分たちの目です」と言ってもらいました。
そこで安全確認として使っている部分は徹底的に避けようと思いました。

その結果いきついたのが足でした。
足は、顔や手の次ぐらいに神経が発達していると言われていますしね」

―――そうして「あしらせ」になったんですね。このあしらせにどんな願いがありますか?――
「ユーザーの行動範囲が広がって、肉体的・精神的に良い影響があればなと思っています。

肉体的に、人は数カ月寝たきりになると、リハビリしないと歩けなくなるぐらい筋肉が衰えるんですね。私も膝の手術で約2週間入院したことがあって、左右の足の太さが違くて驚いたことがありました。
そのため、動いて肉体的に維持・向上してもらえればなと。

そして心理的にも、新しい発見や驚きがあると脳から分泌液が出て、ポジティブな気持ちになれるらしいんですよね。
外に出てもらって、いろいろな発見や驚きに出会ったら、ポジティブになれるのかなと」

―――あしらせで行動範囲が広がることで、視覚障害がい当事者の肉体的にも精神的にも良い影響があればとお考えなんですね。あしらせが普及することで、社会的にも良い影響がありそうですね?―――
「先日、駅前でしばらく人の数を数えていたことがあったんです。大勢人が行き交う中で、白杖を持った人は1人もいませんでした。人口の割合からいって、もっといなくてはいけないはずなんですけどね。

当事者の方がこのような場所にも混ざり合う社会になってほしい。当事者の方が望まれるなら、このような場所に行くことを応援したい。私たちはそう思っています」

あしらせは、人の体と気持ちに向き合ったエンジニアさんが作り出した製品でした。

▼製品などの詳細はこちら↓
あしらせの紹介動画 Youtube


あしらせの製品ページTop

あしらせの特徴ページ

あしらせの使い方(説明動画)
※使用方法ごとに動画が分けられていて、検索・視聴が簡単です。(個人的に、いろいろな製品の説明書がこの形になれば、ちゃんと説明書を見るのになと感じました・・・)

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ライター 榎戸篤(えのきど)

テレビ番組の制作会社で働きながら、ライターとして活動する視覚障がい当事者。3歳の時、保育園で転んで怪我をし、弱視に。視力は左0.06、右0。 障がい当事者ら向けの旅行サイト「COTRAVEL」などで執筆中。 https://www.cotravel.jp/mypage/5e9438bd76fc4/ 記事のご感想などありましたら、こちらにいただけると有難いです。 uj092021@yahoo.co.jp 記事は、ひとつひとつを丁寧に、懸命に、心をこめて・・・書かせていただきます!

ブログ
公式HP
https://www.cotravel.jp/mypage/5e9438bd76fc4/

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