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健常者の本音で変わる私。ワーク「視覚障害者からの問いかけ」

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ライター:榎戸篤(えのきど)

こんにちは!視覚障がいのライター榎戸(えのきど)です。

新型コロナの影響で、オンラインでのイベントが多くなっていますね。
そのような中、近頃「視覚障害者からの問いかけ」という新しいオンラインワークショップが始まったと聞き、ボクも12月2日に参加させてもらいました。
今回はそのレポートを書かせてもらいます。
普段、健常者に尋ねることがなかったようなこと、例えば「障がい者に告白されたら、どうする?」「魅力的な障がい者って?」といった質問をさせてもらいました。
『当事者が思う、自身の見られ方』と『健常者から見た、当事者の見え方』にズレがあることに気付けるワークショップだったと思うので、ぜひ記事をご覧ください!

【「視覚障害者からの問いかけ」とは?】

では、レポートの前にイベントの解説を。

「視覚障害者からの問いかけ」とは、一般社団法人PLAYERS(以下、PLAYERS)が主催する視覚障がい者と健常者によるオンラインでのワークショップです。
視覚障がい者が投げかける「視覚障がい者を怖いと思う?」「朝起きて目が見えなくなっていたらどうする?」といった問いに、健常者が返答する形で対話を行っていきます。

今回は、視覚障がい当事者4名、健常者8名が参加。
視覚障がい者1名に対し健常者が2~3名つくセッションを3回行う形式でした。

ではさっそく、やりとりの一部をご紹介。

【質問1 障がい者に告白されたら、どうする?】

●質問の前に・・・
「モテたい」、そんなギラギラした欲望を抱いていた10~20代。
ボクは、
「健常者の女性と話したいけど、見えないことを知られたくない・・・」
「反応が怖くて、健常者の女性に声をかけられない・・・」
そんな思いを抱いていました。

見えないことを隠そうと、デートコースを3回下見したコト。
女性にふられ、「視覚障がいがあるからな。」と友人に告げると、「それ、全く関係ないから!」とさわやかに言われたコト。
今となっては良い思い出です。

そんなコンプレックスを抱きながら青春時代を過ごしたボクは、最初にこの質問を投げかけました。

●男性Aさんとのやりとり
榎戸「障がい者に告白されたらどうしますか?」
男性A「難しいですね・・・
まず告白されたら素直にうれしいと思うんです。
でも、本当に2人で楽しめるのかなとか。どこにお出かけしたら楽しめるのかなとか。長時間一緒にいたことないので、考えちゃいますね」

榎戸「『障がい者だから断る』ことはないですか?」
男性A「それはないと思います。ただ正直、不安だと思います。
視覚障がいの方と付き合うという話になったことないですし、色々考えちゃいますね。
ただ、障がい者だから断ることはないです」

●女性Bさんの回答
榎戸「Bさんはいかがですか?」
女性B「私も伝えていただいたことはすごくうれしく感じると思います。
告白していただいたということは、関係性が出来上がって、お互いのことを知って、そのうえで伝えてくださったと思うんです。
そして、一緒に過ごす中で自分自身も『この人と一緒にいたいな』と感じていたら、お付き合いしますね」

榎戸「不安はないですか?」
女性B「不安はあまりないと思います。
ただ、どういうお手伝いしたら良いとか、どこにどういうものを置いておいたら良いとか、お互いのすごしやすい、良い気持でいられる方法を考えたり、教えてもらったりはすると思います」

このお二人以外も、「告白前に良い関係であれば付き合う」「その後のことは、付き合ってから考える」という方が大半でした。
それも、「きれいごと」や「言わされている感じ」ではなく、本心から言ってくださっているのが伝わってきました。

当初ボクが思い描いていたよりも、はるかに皆さん障がいに対し肯定的。
「『健常者は障がい者を否定的に見てる!』と勝手に決めつけていたのは、自分自身だった・・・」
そのような恥ずかしい気持ち。そしてまた、何か温かい気持ちも湧いてきたのでした。

【質問2 魅力的な障がい者って?】

●質問の前に・・・
「魅力ある人になってやる。」、ただただ、そんな野心から投げかけた質問です。

●女性Cさん・男性Dさんとのやりとり
榎戸「魅力的な/友達になりたい障がい者って、どんな人ですか?」
女性C「たとえば以前、視覚障がいのある方に『コンビニでどうやっておにぎりを選んでいるんですか?』って質問されている方がいらしたんです。その方は、『とりあえず適当にバッととる。占いみたいに、何が来るかお楽しみみたいな。ほしいものがとれてたら、今日は運がいいぞみたいにして』と答えられていたんです。そういう方はおもしろいなって」

榎戸「たしかにその方、話してみたくなりそうですね」
女性C「そうですね。だから、変な意味ではなく、障がいのことをおもしろく話してくれるとか。ユーモアがあるとか。
障がい当事者に限りませんけど、愚痴っぽくない人がいいですよね。色々大変なこともあると思うんですけど。それをずっと話していただいても、自分がしてあげられることは限られている気がするし。もちろん、たまになら良いんですけどね」

男性D「ネタじゃないですけど、そういうのは大事な気がします」

榎戸「障がいをユーモア交えて話してくれる人ですね」
男性D「そうですね。それと、気遣いをずっと頭に持ちながら、会話をしなくてはいけないのはしんどい。それは嫌な上司としゃべるのと一緒みたいな 笑
そういうことを考えないで話せる人とは、遊んでみたいなと思えますよね」。

榎戸「気遣いしながら話すと、しんどいですもんね」
女性C「障がいのある方と話していて、忘れちゃうことあるんですよね。見えてる/見えてないとか、聞こえてる/聞こえてないとか。そういう感じが逆に良いかなと思いますね」

たしかに、健常者の奥様が、全盲の旦那さんに向かって「それとって」と指さしている光景を見たことがあります。それは微笑ましく思え、一緒にいることが自然になっているんだなと思える。
障がいのことをうまく伝えつつも、そのように障がいがあることを忘れさせてくれる人、障がいを忘れるような関係が理想的なあり方の一つなのかもしれないとボクは思いました。

【質問3 視覚障がいを「うらやましい】と思うことは?】

●質問の前に・・・
電車の割引、税金の減免、遊園地の優先案内など、障がいがあると優遇されるケースが多々あります。
それを「ありがたい」と思う反面、「こんなに優遇されていいのか?」と疑問に思うボクもいます。
また、「障がい者だから恵まれていること・才能」とは何だろう?と考えることがあります。
そこで、この質問をしてみました。

●男性Eさんとのやりとり
榎戸「視覚障がい者が優遇されている/うらやましいと思うことはありますか?
男性E「正直あまりないですね。
公共交通機関が割引になったり、年金がもらえたりする人もいると思います。その部分だけ切り取るとうらやましいことはありますけど。
でも、その代償というか。視覚障がい者になったら、それに勝る大変さがあるだろうなと思うので」

榎戸「だから、優遇とは思わない?」
男性E「そうですね。あと、障がいがあるからこそ出ていくお金もあると思うので」

●男性Fさんの回答
榎戸「Fさんはいかがですか?」
男性F「視覚障がいの方で言うと、視覚以外の感覚が優れている気がしていて。それがうらやましいなと思うことがありますね」

榎戸「その感覚がうらやましい?」
男性F「はい。モノを触って、感動するという感覚が僕はすごくステキだと思っています。『この手触りが!』とか。それを聞いて、そういう観点で自分は日常生活を送っていないなと思って。
だから、僕の中ではそれが豊かな感覚で、豊かな世界観だなと感じて、うらやましいなと思いますね」

たしかに、感触に敏感な視覚障がい者は多い。
それが「豊か」なことだったとは。
障がいがあることで受ける恩恵。こんなところにもあったんですね。

【やっぱり、質問して良かった。】

ワークショップを終え、ボクは長年のつきものが落ちたような気になりました。
特に、「障がい者に告白されたら?」という質問。

ワークショップの前、身近な健常者に、この質問をしようと思っていることを告げると、「なんでそんな質問するの?」「困るからやめな。」と、怒りをあらわにされる方々もいました。
たしかに、この質問は当事者の存在を否定しかねない。そして、様々な意味で答えにくい質問です。
ボク自身も、「尋ねたところで意味ないかな」とも感じていました。

しかし、当事者の友人たちにヒアリングすると、この質問に人気が集中。「聞きたいけど普段は絶対聞けない。だから、聞いてきて」という声を受け、尋ねてみることにしました。

結論、ボクは質問して良かったと思っています。
前述のように、「自分が思うより、人は優しい」ということに気づき、壁をつくっていたのは自分自身だったことに気付かせてもらったためです。

そして今思うと、多くの批判にも関わらず自分がそれでも質問したのは、「質問してみたい」という純粋な思いを長年抱いていたことが一番大きかったのだなと思います。
ずっとその質問ができず、頭の中で間違った回答を予想し、その回答を膨らませていった。
しかし、ワークショップに参加し、質問させてもらうことで、それが間違っていると教えてもらうことができました。

なので、ボクのように「自分ってどう思われているのかな?」という方、不安な方、自信がない方、ぜひワークショップに参加して、直接その疑問をぶつけてみてはいかがでしょうか?

【大事なのは、Yes/Noの答えではない。】

とはいえ、もし「障がい者とは付き合えない」など、ネガティブな答えが返ってきたら・・・?

自身も視覚障がい者でワークショップ発案者のPLAYERS中川テルヒロさんによると、そのようなケースもあると言います。「でも、自分の質問の返答であれば、それは一つの意見として受け止められる方が多いようです。自分に対する誹謗中傷ではなく、一人一人の意見として」

たしかに、「障がい者とは付き合えない」という文面だけ見た場合、自分たちが否定されている気持ちだけが残り、「健常者は皆こうなのでは?」と想像が膨らむ。しかし、自分の問いに答えてくれたものであれば、ショックもあるけれど、「この方はそうなんだ」と思い、一般化はしないように思います。

中川さんは続けます。「それがSNS上での書き込みなどとは違うところだと思います。言葉に温度があるから」
これは、憎悪が巨大化していくネット社会に対し、対話の重要性が叫ばれることと同じなのかもしれません。

Yes/No、その答えが大切なのではない。直接質問すること、質問できる場、それが大切なんだ―――
ボクはそう思い、今回のワークショップを終えたのでした。

▼視覚障害者からの問いかけのページ

https://toikake-blind.jp/



▼同じ日に参加したゼネラルパートナーズ前山さん(健常者)の体験レポート

https://note.com/gp__info/n/ne8211170ff05

■今後の予定

日にち:
2021年1月26日(火)
2021年2月5日(金)
2021年2月16日(火)
時間:18:30〜21:00
会場:Zoom
参加者:健常者 6名 / 視覚障がい者 3名
参加費:無料
申し込みや詳細は下記より

https://toikake-blind.jp/

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ライター 榎戸篤(えのきど)

テレビ番組の制作会社で働きながら、ライターとして活動する視覚障がい当事者。3歳の時、保育園で転んで怪我をし、弱視に。視力は左0.06、右0。 障がい当事者ら向けの旅行サイト「COTRAVEL」などで執筆中。 https://www.cotravel.jp/mypage/5e9438bd76fc4/ 記事のご感想などありましたら、こちらにいただけると有難いです。 uj092021@yahoo.co.jp 記事は、ひとつひとつを丁寧に、懸命に、心をこめて・・・書かせていただきます!

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公式HP
https://www.cotravel.jp/mypage/5e9438bd76fc4/

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