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【ドキュメンタリー】障がい者×健常者1年半の結婚生活~健常者の夫が思ったこととは~

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ライター:わに

みなさんこんにちは!わにです。私は先日何度か記事でもご紹介している3年付き合った健常者の男性と結婚しました。障がいのある私と障がいのない彼との結婚生活は今後どうなっていくのか?喜びはありますが、不安の種はつきません。今回、障がいのある女性と結婚した健常者の男性Aさんに結婚生活のお話を聞きました。Aさん夫婦は離婚されているのですが、障がいのある元奥様との結婚生活は山あり谷ありだったそうです。当時の気持ちを障がいのないパートナーという立場から赤裸々にお話頂きました。健常者側の気持ちを聞く機会はなかなか少ないかもしれません。これから健常者の方と結婚を見据えている方、お付き合いをされている方、そうでない方もこの機会にAさんの思いや考えに耳を傾けてはいかがでしょうか?

「理解しようとする努力はした」相手に障がいがある事実を受け止めた

Aさんが彼女と出会ったのは友人に誘われてのイベントだった。「ちゃきちゃき動くし、気が利くし、スタイルもいいし、素敵な女性だなと思いました。」その時の印象を彼はそう語った。その後デートを重ね、付き合うことに。出会ってからしばらくして、Aさんは彼女の言動に疑問を持ち始めたのだった。すると、彼女の方から「私、うつなの。」とカミングアウトされたのだ。その時の心境は?と伺うと、「偏見がなかったわけじゃないけど、理解しようとする努力はしました。」そう語るAさん。

元奥様は仕事の過重労働と元々の家庭環境もあり、障がいを発症していた。本人は「うつ」と言っていたが、双極性障がいと摂食障がい、アルコール依存の兆候があったとのこと。自傷行為もあり、時々Aさんの前で手首を切るなどの行動を起こしたりもしていた。 

付き合ってしばらく経ったある日、彼女が突然結婚指輪を買ってきて、逆プロポーズ。あまりに唐突なことでAさんは驚いたが、賢く生活力があり、気も利く彼女の結婚の申し出を「断る理由がなかった」と語った。そして何より彼の心を動かしたのは「相手の結婚しようという勇気にぐっときた」ということだった。

結婚式

結婚の報告をする時、親御さんや親戚、友人などに彼女の障がいについて伝えましたか?という質問に対し、Aさんはこう答えた。
「仲の良い友達2人には時々落ち込むことがあるが、良い人だよ、という形で報告した。けど両親には言わなかった。言ったら反対されるのがわかってたから。」
Aさんの両親は非常に昔気質な方で、それが原因で何度か婚約破棄になったことがあったそうだ。その経験もあり、彼女の障がいについては伝えないという判断をしたのだった。
心配とは裏腹に「元妻は賢くて、厳格な親父や気難しい親戚への対応の仕方を教えると、それを忠実に実行できた。それでみんなに好かれて結婚の許しを得ることができた。」と、順調に結婚までの道のりを進んだのだった。

安定しない体調、障がいによってすれ違う想い

しかし、結婚生活は甘くはなかった。元奥様の病状が安定しなかった。
アルコール依存があったため、家には酒を置かないという工夫をしていたが、目を離した隙に飲酒をしてしまうことが多々あった。「彼女は障がいの自己受容ができていなかった」そう彼は言った。

また、体調が悪い時には「馬鹿」「こんなこともできないのか」など言葉の暴力も受けたという。更に辛かったのは、金銭面での問題だった。彼女も働いていたが、Aさんだけが給与を全額家庭に入れていた。しかし、「そんな安月給じゃ足りない、週末はアルバイトをしろ」と週末の労働も要求され、実際に週7日働いていた時期もあったという。
躁状態の時には計画なく急に「留学する!」と言い、その選択は見誤っている、というと「お前の人生ほどみあやまってない!」と罵倒されたこともあった。

体調悪化

その時の状況をどう受け止めていましたか?そう聞くと、
なんで僕は無力なんだろう。白か黒かでしか考えられない人だった。それをなんとか僕の力でやわらげたかった。でも諭そうとすると罵詈雑言がとんできて、話を聞いてくれたことはなかった。最初はこの状況や彼女の症状を受け止めていかなければと思ってたけど、結婚生活の中盤にはほどほどに流すようになって、詈雑言を言われ続けて職場でも追い詰められていた時に『帰る場所がない』と思い、最終的にはあきらめてしまった。自分の仕事がうまくいってればそんなことはなかったかもしれない。もし自分に余裕があったら…」そう少し悲しそうに語るのだった。

彼女との結婚生活に耐えられなくなったAさんは元奥様が留学中に断りなく引っ越しをしたのだった。そして、離婚。1年と半年ほどの結婚生活だった。

結婚生活で感じた「歩み寄りの大切さ」と「自責の念」

障がいがなければ離婚していませんでしたか?という質問に対し、Aさんは言った。
障がいはその人を構成する要素の一つだと思う。僕は逆に弱いところが強みになっていると思う。例えば躁状態の時の衝動性、行動力、決断力が普通の人より早かったり障がいに加えてその人の良いところだと認識していた。障がいがある=マイナスとは捉えていなかった。離婚に関係してないといえば嘘になるけど、それが大きな要素を占めていたとは思わない。一番の原因はこうあるべきという理想のずれだったと思う。価値観への歩み寄りがないことが問題で、障がいがなくても離婚していたと思う。」

価値観を受け入れながら生活していくことが必要だったが、障がいが起因してその「歩み寄り」が辛くなったこともあったのかもしれない。 もし障がいをうまく緩和できていたらお互いを理解する、歩み寄ることができていたのではないか、障がいの改善が価値観のずれの解消への一歩だったのかもしれないと話を聞いていて私は思ったのだった。
障がいを受け止めたうえでどう対処していたら離婚という結果にならなかったと思いますか?という質問には「しっかり通院させる、必要に応じて入院させる、自己受容を促進させる、そこに対して僕の忍耐力が強ければ変わっていたかもしれない。」そう彼は言った。

雨

「相手に障がいがあるから自責になってしまうことがある。相手にないものがあるから自分の努力で埋める必要がある。絶対埋められるものではないけど自分が努力すれば近づける。せめてその努力は認めてわかってほしい。」という彼。

次に結婚する人には障がいのないことを求めますか?と伺うと「別にあってもいい。じゃあ(これからの結婚生活を)どうすればいいか、ということを相手と話し合いたい。僕にもできないことはいっぱいあるから。」

手をつなぐ

障がい当事者との結婚生活を経験した彼がMedia116の読者の方へ伝えたい想い

「僕の持論では、障がいというのはできないことや苦手なことが国によって認められて明らかになって、病院に行くことで第三者からの診断を受けて判明しているだけなんだと思う。健常者でも苦手なことはいっぱいある。障がいがあるから嫌われたって思うのは簡単だけど、障がいを欠点としてとらえるならばカバーする努力をすべきだし、とらえていないならばそれを強みとしてもいいと思う。

苦手なことは相手に理解を求めたらいい。障がいがあるというのは自分の苦手を他の人から指摘されていてそれを人に伝えられるメリットがあるということだと思う。健常者はあくまで自己申告でしかないし自己認識が合っているかどうかも実はあやふやだから。

例えば精神疾患があるなら傷ついた経験があるから優しくなれるかもしれない。人が気づけないことを気づけるかもしれない。擦り減らすんじゃなくて相手に分け与えることができる人だと思うからそこは後ろめたく思わないでほしい。障がいをかわいそうだと思う人については何も知らない人だなと思って、どうしたら知ってもらえるかその人の状況や性格に合わせて考えてあげると距離は縮まると思う。」

手を伸ばす

Aさんの取材の中で思ったこと

障がい当事者としてAさんを取材して一番グサリと刺さったことがあった。それは健常者の彼が障がいのある相手に対し「自責の念」を大きく感じていたということ。私自身の結婚生活も含め、障がい当事者が思う以上に健常者側は「自分が悪い」「もっとこうしなければ」という自責の念やプレッシャーを無意識に感じているのかもしれないと胸が苦しくなる思いだった。

健常者の相手に必要以上に気負わせないために、自責の念を少しでも軽減するために、健常者側が「障がいを越えて歩み寄ってくれる努力」を理解し、感謝することは障がい当事者にとっては非常に大切なことなのではないか、そして歩み寄ってもらうだけではなくこちらからも同時に歩み寄っていくことが必要なのだと感じた。

私は「障がい=強み」とは思わないのだが、障がいを事実として受け止めて自分を客観視することは、安定して「他人」との生活を送るためにとても大事なことなのだろうと気づかされた。そしてその中で自分の強みや弱みを知ることができれば、それが彼の言う「強み」に近づくのではないか、とも。

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ライター わに

17歳の時に側頭葉てんかんを発症、精神障害者手帳2級の障がい者。 酸いも甘いも経験してきた熟れ時アラサー女子。 「全力で働き全力で遊ぶ」がモットー。 誰彼構わず噛みつき周囲をヒヤつかせるため「わに」。 過激な記事を投稿しようとし編集長に止められるのが日課。

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