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マイナンバー制度における点字対応のその後~前編~

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マイナンバー制度における点字対応のその後~前編~

ライター:Media116編集部

いよいよマイナンバー制度がスタートしました。みなさんの手元にも「通知カード」が届いていることでしょう。しかし、いざ配布されてみると「通知カードに個人番号を示す点字がない」という視覚障がい者を困惑させる事態が発覚。ニュースなどで話題となり、マイナンバー制度の障がい者への配慮不足や準備不足などが指摘されました。
今回は、2回にわたり「マイナンバー制度における点字対応のその後」を追いつつ、視覚障がい者にとってマイナンバーがどのような場面で必要になるのかをお伝えします。


音声コードはついているけど使えない・・・どうすれば??

まずは話題となったニュースをおさらいします。
2015年の秋、各家庭にマイナンバーの通知入りの封筒が郵送されてきました。この封筒の裏面右下には点字で「マイナンバー ツーチ」と入っていました。視覚障がい者が大切な通知を見逃さないように、と配慮の行き届いた印象です。

封筒


ところが、肝心の「通知カード」には点字が一切なし

個人番号も氏名もわからないので、家族分、複数届いていると、どれが自分の通知なのかもわかりません。通知カードの下には「視覚障がい者用音声コード」がついており、専用アプリを入れたスマートフォンや専用機器をかざすと音声で「個人番号」が聞けるようになっています (氏名は読んでくれません)。

通知カード


ですが、、、音声コードの位置が見えない人もいますし、コードの位置がわかっても誰もがこうした機器を扱えるわけではありません。そうなると、自分のマイナンバーを知るには、信頼のおける人に読み上げてもらうしかないのです。みだりに他人に知らせないようにしなければならないマイナンバー。重要な個人情報につながる番号だけに、そもそもの通知カードに個人番号の点字を入れてあったら……という声が多く上がりました

また任意で申請する「個人番号カード」。マイナンバーが必要な手続きで、本人確認の際の身分証明書として一枚で済むなどのメリットがあるカードですが、こちらは希望すれば「氏名」の点字表記はできるのに「個人番号」の点字表記はできません。氏名ができてなぜ番号はできないの?という大変残念なことになっています。

個人番号カード


視覚障がい者にも自分のマイナンバーがわかるようにしてほしい、という声に、総務省住民制度課は「各自治体できめ細かくサポートしてほしい」と市区町村に要請しました。

これについてインターネット上では「国から市区町村への丸投げだ」などの批判の声があがりました。対応が全国一律とならないことに不安を残したまま、今に至ります。


点字シールを作って貼ってくれる自治体も!

この「マイナンバーの点字対応」問題、現在、各自治体ではどこまで対応をしてもらえるのでしょうか。

地方公共団体情報システム機構(※1:J-LIS)が管轄する個人番号カードコールセンターに問い合わせたところ、市区町村には、通知カードや個人番号カードについての質疑応答集が配布されており、そのなかで「希望者に対し、通知カードや個人番号カードに貼付するための点字シールを貼るなどの対応が考えられるところであり、こうした視覚障がい者に対する配慮に積極的に努められたい」と記されているそうです。

すべての役所の窓口に点字シールを作成できる設備がそろっているわけではないこともあり、残念ながら一律対応とはいかないのだそう。視覚障がい者にとっては、この「積極的に努められたい」という部分のニュアンスを最大限よみとってほしい、と願うしかありません。

現在のところ、各自治体の対応はさまざま。まだ一人も点字希望者が来ていないために対応が決まっていない、という自治体も少なくないようです。一方、希望者がいた自治体では、通知カードや個人番号カードのカバーに点字シールを貼る、といった対応が主になされているようです。各自治体の取り組みのニュースをピックアップしてみましょう。

大分県では4市で希望者に点字シールを作って配布したそうです(大分合同新聞 2016年1月23日)。
※1 都道府県・市区町村が共同して運営する組織で、住民基本台帳ネットワークシステムの運営をはじめ、マイナンバーの個人番号カードの作成を担う地方共同法人。

長野県伊那市では、市民課と社会福祉課が連携し、通知カードや個人番号カードのカバーに点字シールを貼るサービスを開始しています(長野日報2016年2月7日)。その後について伊那市に問い合わせたところ、ニュース掲載後、利用された方がいたそうです。

新しい試みとして大注目なのが大阪府堺市。3月1日から個人番号の音声を録音したCDを提供するサービスをスタート。CDのケース、通知カードや個人番号カードのカバーにも点字シールを貼る (毎日新聞 2016年2月29日)、とのことでかなり充実した内容です。

一方、ネット上では「個人番号カードには点字をつけるが通知カードにつけることは断られた」という声も見られました。やはり自治体ごとに対応に温度差はあることは覚悟せざるをえません。堺市の取り組みが広く知られて、多くの自治体の対応見本になっていくことを期待したいところです。

(後編へ続く)

今回は市区町村の取り組みについてお伝えしました。次回は、国の最新の取り組みと、視覚障がい者にとって、マイナンバーがどんな場面で必要になるのか、その重要性について、お伝えします。

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ライター Media116編集部

障がいのある方のためのライフスタイルメディアMedia116の編集部。障がいのある方の日常に関わるさまざまなジャンルの情報を分かりやすく発信していきます。

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