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激変する障がい者の転職状況…これからどうなる?法定雇用率引き上げのメリット・デメリット

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ライター:ヒラノオツボネ

みなさんこんにちは!ヒラノオツボネです。私はこれまで健常者枠・障がい者枠にて、キャリアアドバイザーと法人営業の両方を経験し、通算約200名以上の方の採用決定に貢献してきました。今回は法定雇用率の引き上げについて、人材紹介業に7年間従事してきたという経験を元に今回の雇用率引き上げがみなさんにもたらすであろうメリット・デメリットをお伝えしたいと思います。(まだ施行されていませんので、あくまで予想の部分が大きいことはあしからず。)参考程度までにご覧くださいね。

追い風を乗りこなせ!求人数・募集人数増加と精神障がい者のチャンス

メリット①採用意欲の高まり
法定雇用率が引き上げになれば、2.2%に達していない企業は「なんとかしなければ!」と募集をかけますよね。そうなると求人数が増える・また募集人数も増えることになります。
大手企業の場合、法定雇用率引き上げが予想されていた段階から採用活動を積極的に進めており、今から急ピッチで募集をかけなくてもいい、という企業も少なくありません。

一方、中小企業の中には採用予算の関係などからなかなか障がい者採用に手をつけられていない企業もあります。こうした企業は更に採用に力を入れなければなりません。
そうすると、必然的に中小企業の求人も増加することとなります。

メリット②精神障がい者にとって100%追い風
2013年に2.0%に引き上げになった際には精神障がい者採用拡大に取り組む企業がかなり増加したというハローワークのデータがあります。その経験から、今回もほぼ確実に増えるであろうと予測されます。

法定雇用率は今まで、2013年4月から2.0%とされていましたが、この時の算定式では、身体障がい者と知的障がい者のみが対象とされていました。そして2018年4月から算定式に精神障がい者も含めることになりました。

法定雇用率の算定式はこちらです。

法定雇用率の図

「でも、精神がカウントに入っただけで採用はマストではないんでしょ?」と仰る方もいらっしゃるかもしれません。それは事実です。しかし、現在の日本の就労人口を見てみましょう。

日本の障がい別就労人口
(※就労人口:身体/知的障がい者18~64歳、精神障がい者20~64歳)
(平成28年障がい者白書 出展:内閣府)

就労人口にある障がい者の約6割は精神障がい者なのです。
「障がいが目に見てわかりやすいほうが配慮しやすくていい」という理由で身体障がい者の方を採用したいと仰る企業様は沢山いらっしゃいます。しかし、はじめから身体障がい者のみをターゲットとすると、採用母体を3割に絞っている状態なので取り合いになってしまいなかなか採用が難しいのが現実です。
そこで就労人口にある障がい者の約6割を占める精神障がい者の採用に目を向け始めることは必然なのです。

むやみやたらは危険!どの追い風に乗るか見極めて

/波に乗る

デメリット①採用基準の緩和は予想されない
求人数が増えます。募集人数も増えます。そう申し上げました。「じゃあ、以前よりも簡単に内定がもらえちゃうんじゃないの!?」と思われた方、残念ですが採用基準の緩和は予想されないと踏んでいます。また、契約社員求人ばかりだったものが急に正社員求人が大幅に増える・・・ということも予想しづらいですね。

次のことを法定雇用率の引き上げが必要な企業の立場に立って想像してみてください。
例えばあなたが恋愛経験のない方だったとします。

「あんたももういい歳なんだから、パートナーくらい見つけなさいよ(法定雇用率の引き上げ)。見つけられなかったら、ごはん抜き(罰金)よ!」と母(国)が急かすのです。
そしてお見合いパーティー(転職サイトへの求人開示)に参加し、何人かの方からラブコール(応募)がありました。
しかしあなたはお付き合いをする際にパートナーに対して妥協できないポイント(経験、人柄、年齢…等々)を持っています。

切羽詰まった状態で何人の方からラブコールを頂いても、譲れないポイントをクリアしてくれる方でなければ幸せなお付き合いはできませんよね。
転職活動も同じです。企業側が急いでいるからチャンス!と思っていくらラブコールを送っても、企業が譲れないポイント(採用基準)はあるはずなのですから。

デメリット②受け入れ体制
中小企業の採用が特に活発化すると上記で述べました。もし中小企業に入社をすることが決まった際に念頭に置いておいて頂きたいことがあります。それは「任せられる仕事の裁量が大きい(多い)」ということ。中小企業は少数精鋭で業務を回しているため、1人当たりの仕事の幅が広い(大きい)のです。1人あたりに幅広い仕事を任せているため、例えば「データ入力のみ可能」といった業務に制限のある方や「配慮が比較的多め」の方は選考を通過しづらく、もし入社された際には通常モードで働くより、もう少しの頑張りが必要かもしれません。

どの組織に属する際にも必要なこと

上記では中小企業に入社する際の不安要素を述べましたが、どの企業、どの組織に属する際にも必要なことは同じです。
1.自身の障がい特性の理解
2.障がいの受容
3.障がいに関することの自己開示
の3つです。
まず、応募前にご自身の障がい特性を振り返ってみましょう。「自分の得意なことは?」「苦手とすることは何だろう」「配慮が必要なことは?」等々。
そしてそれらを理解した上で受け止めるのです。
面接時には自分が「できること」「できないこと」「配慮が必要なこと」これらをきちんと企業に伝え、コンセンサスをとった上で入社をすることが企業と相思相愛で働ける第一歩です。

いますべきこと、これからの時代に必要なこと

精神障がいの方の雇用が進まない原因は、企業側が障がいについての知識が浅く、「知らない」ということが原因です。どんなに素晴らしい経験の方がいらっしゃっても、「精神障がいについて知らないので怖い」というところから偏見が生まれ、採用が困難になっていくケースを何度も見てきました。非常に残念で、強烈に悔しくもどかしい思いをしていたことをよく覚えています。

立ちはだかる壁

社会はそう簡単に変わりません。まずは自分が周囲を変えていくしかないのです。
上記で述べたように、「できること」「できないこと」「配慮が必要なこと」をきちんと伝えられれば企業のあなたへの理解も、精神障がい者への理解も進んでいきます。

体調が悪くなる頻度・内容は人それぞれですよね。なので、その個別性を事前に伝えてあげることが大切です。
そして何より体調が悪くなりそうであれば早めに相談すること。また、主治医ともリレーションを構築して随時仕事についての相談をしたり、アドバイスを頂くこと。
1日3食しっかり食べて、よく眠り、早寝早起きで生活リズムを一定にすること。
その一つ一つの努力の積み重ねが体調の安定に繋がり、業務で継続的に成果を出せる元となり、「イチ障がい者」ではなく、「あなたという人」が認められていくのです。

色々とお伝えしましたが、雇用率が引き上げられたところで就業環境が変わらなければ就労が難しい方も多くいらっしゃいます。通勤面の配慮、もしくは在宅での仕事など、症状や体調に合わせた柔軟な働き方が求められる時代に足を踏み入れていると常々感じます。企業としても「採用がゴール」ではなく、長く活躍してもらうためのフォローやケアが必要となってくるでしょう。
障がいの有無に関係なく、誰もが働きやすく、自己肯定感を得て、社会に貢献できる社会になることを切に願うばかりです。

万歳

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ライター ヒラノオツボネ

これまで一貫して人材紹介会社にて健常者・障がい者の転職サポートに携わってきた人材一筋のオツボネ。ゼネラルパートナーズではキャリアアドバイザーとして身体障がいのある方のサポートを経験した後、精神障がいのある方のサポートに従事。現在はMedia116のライターとして仕事系記事を執筆中。

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公式HP
https://www.atgp.jp/

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