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今井絵理子議員にインタビュー!【後編】 当事者のみなさんから集めた声、直接ぶつけました!~障がい者の差別偏見について~

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ライター:Media116編集部

参議院議員として活躍中の今井絵理子議員と、(株)ゼネラルパートナーズ代表取締役社長 進藤均による対談の【後編】をお届けします。当事者の方たちの声をもとに、障がい者への差別や偏見、インクルーシブ教育、バリアフリー問題など、海外の事例も交えながら語っていただきました。

進藤:続いて、「障がい者の差別偏見」について、当事者の方たちの声がこちらです。差別や偏見というのは、今もあらゆるところに残っています。

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「家族に障がいがあることで心無い言葉をかけられ、悔しい思いをたくさんしてきた。法律や制度が変われば差別偏見はなくなるのか?」(20代女性)

「両側の聴神経腫瘍が原因で、失聴しました。何も聞こえない中で、小学生の娘を育てていて、多くの偏見や誤解を受け、とても苦労しています。」(年齢性別非公開・聴覚障がい)

「精神障がい者に対する理解・啓発活動が足りないと感じる。」(20代男性・双極性障がい)

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今井議員:私は、人を理解することってすごく難しいことだと思っているんですよ。夫婦や恋人でもお互いを理解し合うのは難しいものですよね。だから私は理解というよりも、認め合うことが大事だと思っています。「あなたはこうなんですね。私はこうなんです」と認め合う社会が、まずは必要なんじゃないかなと。そのためにも、やはり教育が重要ですよね。小さな時からたくさんの人と交流して、お互いの違いを認め合う環境に身を置く時間が必要だと考えます



今となっては、私の中で障がいという概念は存在しなくなっています。障がいを障がいだと捉えていないんですね。その人の個性であり特性だと。だから障がいがある方たちと触れ合っていても、フランクに何の迷いもなく「あなた何の障がい?」と聞くことができます。ですが、障がいに差別や偏見の意識がある方はそうはいかない。「障がいについて聞いてはいけないのでは?」と思ってしまうんですね。さらに、お互い努力が必要で、障がいのある当事者の方もきちんと自分の特性というものをアピールすべきだと思っています


進藤:無理にわかろうとせずに、存在を認め合う。それこそが共生ですね。


今井議員:だからいつかは、障害者差別解消法という法律そのものが必要なくなるべきなんです。そのような法律を作るということは、まだ差別という現状があるから。インクルーシブという言葉も、ノーマライゼーションという言葉もそうです。そういった言葉をあえて使う必要すらなくなるように、10年後、20年後、30年後でしょうか。これから生まれてくる子ども達へ、きちんと教育を果たしていけたらいいなと思っています


進藤:そうですね。障害者差別解消法という法律によって障がいのある方たちの雇用が生まれ、一緒に働く機会が増えることは、法の力を借りてでもお互いを認め合う期間や経験を経ることになります。一方で、インクルーシブ教育が浸透し、いずれはそういった法や言葉すら必要なくなる社会というのは理想的です。


今井議員:浸透するまでに時間がかかることではありますが、焦らず、諦めずに長い目で取り組んでいけたらと思っています。そして、私たち親も法律について知るべきだと思います。障がいがある子どもを抱えるお母さんたちって、行政に対して強く言えなかったりするものですが、障がいというものは社会が作り出しているものだと思っていますので、障がいがあることが悪いなんて考えるのは間違いです。きちんと知識を得ることができれば、行政や学校側に対して、合理的配慮を求めることもできると思いますよ



進藤:一方で、当事者の身内が自身の子どもに対して気を遣いすぎてしまうのも考えものですよね。過保護になってしまうことも問題だと、啓蒙していかなければならないと感じています。


今井議員:障がいがあるから可哀想で叱れない…というケースも確かにあると思います。でも、教育現場でも「この子は障がいがあるから仕方ない」という目線ではなくて、過保護すぎず普通に接することは大切ですね。この普通が一番難しいのですが。私自身も母として、できれば誰かと比べることなく、対等な関係で息子と接することができるようにしたいと考えています


進藤:そうですね。障がいのあるお子さんをお持ちの親御さんは「この子は将来大丈夫なのだろうか、仕事に就けるだろうか、いじめられずに社会を全うできるだろうか」ということを案じると思います。でもすごく重要だと思うのは、「未来はこうなるんだ」という希望があること。障がいが社会の多様性の中でどんどん薄まって、差別や偏見がどんどんなくなっていくことや、障がいのある方たちが各方面で活躍する姿だとか、そういうのも全てが希望になり得ると思っています。


今井議員:パラリンピックの選手の皆さんも希望ですし、貴社のような企業の存在も、私たちのような、障がいのある子を持つ親としては希望です。


進藤:我々もそこはすごく意識しておりまして。「障がいがある人もこれだけ働けるんだ、普通に仕事ができるんだ」という希望をどれだけ作れるか。そうすると、障がいのあるお子さんが生まれても、ものすごく失望するようなことがなくなっていくのではないでしょうか。障がいがあっても普通に暮らせている、むしろ活躍している姿が見えてくることは、我々の役割でもあり、政治の役割だと思っています。そういった意味でも、今井議員にはすごく期待を持っていますし、我々も使命感を持って常に希望を生み出せるようにしていこうと話しています。


今井議員:以前何かの情報で見たのですが、日本の障がいがある方たちに幸せかどうかを尋ねると、90%の方たちが「幸せではない」と答えているのに対し、ドイツでは、90%の障がいがある方が「幸せである」と答えているそうです。その違いって何だろうと考えたことがあります。私はドイツへ行ったことがないので、行かれたことのある先生たちに話を聞いたところ、実はドイツという国は障がいがある方のためのハード面が日本ほど整っていないそうです。バリアフリーなトイレもなければ、スロープもないと。でも、その代わりに人と人なんですね。助けてあげることが当たり前。お互い支えられているという認識のもと生活しているので、何か困ったことがあれば手を差し伸べる。それが自然と出来る文化のある国ということですね。

日本はもしかしたら、そういった人と人との距離というものが、ハード面が進んだ結果薄れてしまっているのではないかなと。どうやってケアすべきかを考えなくても、ハード面が整っていれば解決できてしまう。ハードの充実とみんなの心の持ち方、そのどちらも大切なんだと考えさせられますね



進藤:かつては「お互い様」という考え方が、田舎を中心に日本にも存在していたと思います。ところが、どこも都会化が進み「人に迷惑をかけなければ何をやってもいい」じゃないですけれど、自助努力で生きて行くことに重きをおくような、いつの間にかそんな社会になってきているように思います。インフラを整えてもらう一方、インクルーシブ教育が正しく機能すれば、将来的には人と人とのつながりや多様性を受け入れる部分というのはカバーできるような気もしますね。


今井議員:当事者の方からのご意見で、気になったものがあります。


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「自分は中学の頃に階段の昇り降りが出来なくなった。どうにかしたいと考え、生徒会長と連名で署名活動を行い、市に申請した結果、卒業後にエレベーターの設置が実現した。また学校にエレベーターがないという理由で、友人達と別の学校に通わざる得ない人もいた。義務教育でこうした制限を受けるのはおかしいと感じる。学校におけるバリアフリーの充実は、ぜひ進めていただきたい。」
(大学4年生・男性/車椅子ユーザー)


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今井議員:バリアフリー設備の充実というハード面の改善も、確かに重要ですよね。ただし、それには時間がかかるという現実もあります。同じバリアフリーの問題を別のアプローチで解決した事例をご紹介させてください。車椅子ユーザーの男子生徒が入学したある高校では、本来は学年ごとにフロアが変わるところ、2年生になる前に生徒たちで話し合った結果、卒業までの3年間、ずっと同じ教室で授業を受けると決めたそうです。みんなで考えてバリアフリーな環境を作ることも可能だと教えられたエピソードです。このように、ハード面に頼らずとも、みんなで考えることが子ども達にとっての第一歩につながることもあると思います。だから、ハード面のバリアフリーももちろん大切だと思いますが、ドイツのように心(ハート)のバリアフリーを進めることで解決できることもたくさんある。今後は、ハードとハートの両方重要であると感じています


進藤:素晴らしい取り組みですね。みんなで選んだことを学校側も受け入れたのが素晴らしいと思います。


今井議員:財政もどんどん厳しくなっていく中で、地域ごとに限られた予算の中で学校の取り組みやインクルーシブ学級を作るということになると、ハード面におけるバリアフリーの充実が追いつかない可能性もあります。人と人とがお互い支えあうような取り組みが、心の豊かさを育てることにつながって欲しいと思います


進藤:聴覚障がいがある方から、このようなご意見もいただいています。自治体の装用具助成制度についてのご意見です。

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「近年の補聴器は昔のアナログ式と違って、さまざまなデジタル処理機能を搭載するようになっています。購入時の費用が跳ね上がっているのに対し、自治体の装用具助成制度における助成額は昔のまま。各メーカーは福祉対応の補聴器もラインアップしておりますが、音質はハイエンド機種に比べ遥かに劣ります。
私は昨年、ハイエンド機種を購入しましたが助成金では全く足りず、差額を自己負担しました。現状の制度では、補聴器購入額の高騰に助成額が追いついていないと感じます。」
(男性・年齢非公開・聴覚障がい)


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今井議員:オーストラリアでは、耳の障がいに関することは26歳まで全部無料なんですよね。人工内耳の手術も全部無料だと。


進藤:日本では聴覚障がいだと認められるのは70デシベルからですが、WHOの国際基準では40デシベルからと定められています。そのため、日本において40〜70デシベル未満の人は、排除されてしまっているのが現状です。そのような方に対し、制度面でも考慮していく必要があると感じます。


今井議員:障がいの種類によって、それぞれ必要とされる支援や仕組みの研究をしなければいけないと思いますし、このような障がいと認められるか否かのグレーゾーンは、発達障がいなどにも多いと思います。そのような方たちも支援の対象となるような制度が作れるように働きかけていけたらと思います



進藤:重要なことだと思います。一方で、社会保障制度だけで解決しようとすると現実的に厳しいです。国の財政を考え、長期的な視点で見ると、同一賃金、同一労働で働けるような環境を整えていくことが重要であるように感じます。インクルーシブな教育を受け、インクルーシブに雇用されていけばきっと問題ないはずです。障がいも今は多様化している状況なので、個別で制度をなんとかするのではなく、「いろんな人がいるんだ」が当たり前に受け入れられる社会にしていくことが先決かと。


今井議員:マレーシアの事例ですが、マレーシアのとあるスターバックスでは、聴覚障がいがあるスタッフだけで運営されている店舗があるそうです。いつか聞こえる人と聞こえない人が関係なく、同じ立場で働けるような仕事が当たり前になればと思いますね。


進藤:そんな社会になっていれば、障がいのある子どもたちのお母さんも安心ですね。


今井議員:実は2017年1月くらいから、自民党内で勉強会を立ち上げようと思っているところです。まずは聴覚障がいにおける社会参画という大枠の中で、「教育」「雇用」「手話という言語によるコミュニケーション方法」の3つを柱に、さらに細分化しながら研究を重ね、議員立法を作っていけたらと思っています。頑張って動きますので、ぜひとも応援よろしくお願いいたします。


まとめ)
今井議員はこの日、(株)ゼネラルパートナーズが運営する聴覚障がいの方向けの就労移行支援事業所「いそひと 大手町」を見学。手話を使って通所者の皆さんへ語りかける姿は親しみやすく、『私の中に障がいという言葉は存在しない』の言葉通り、誰に対してもナチュラルに接する姿が印象的でした。障がいのある一児の母の目線を大切にしながら、長い時間をかけてでも、「障がい」という言葉をなくしていこうとする今井議員の想いが、この記事を通して少しでも当事者の皆さんとそのご家族に伝われば幸いです。

※今回の記事では紹介しきれなかった意見もありますが、お寄せいただいた意見はすべて、資料にまとめて今井議員へ直接お渡ししています。ご協力いただいたみなさんに、この場を借りて感謝申し上げます。

プロフィール

今井絵理子(いまい・えりこ) 1983年9月22日沖縄県生まれ。1996年 SPEEDのメンバーとしてデビュー。2000年 SPEED 解散後、ソロとしての活動開始。2004年長男を出産。2008年にテレビ番組内で息子の聴覚障がいを公表する。「障がいは個性、不便だけど不幸ではない」と手話で伝えた。NHK「みんなの手話」の司会を歴任し、2016年7月に参議院議員に当選。現在は政治家として活動している。
https://www.imai-eriko.jp

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ライター Media116編集部

障がいのある方のためのライフスタイルメディアMedia116の編集部。障がいのある方の日常に関わるさまざまなジャンルの情報を分かりやすく発信していきます。

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