徹底したバリアフリーでみんなを笑顔に~こだわりの理容室「Meets Smile」~
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ライター:Media116編集部
「ユニバーサルデザイン」が世に広く謳われる時代になりましたが、段差にスロープ?フラットな床?本当のユニバーサルデザインってなんでしょう。東京都清瀬市の理容室、高齢者や障害者など「みんなが笑顔になれる床屋さん」がコンセプトの「Meets Smile」(以下、ミーツスマイル)さんにお邪魔しました。お店の常連である車椅子ユーザー大野さんとともに、このこだわりの理容室にちりばめられた、無数の想いをご紹介します。
帝国ホテルやFrancfranc(フランフラン)を手掛けたデザイナーが担当。この理容店、外観から既にバリアフリー。
ガラス張りのエントランスから店内をうかがうと、オールフラットで一番奥にトイレが。どうやら車椅子でも店内を自由自在に動けそう。「車椅子ユーザーは、自分がどこまで移動できそうか、トイレには行けそうかなど、まず導線を確認します。だから外から一見して分かるようにしています」と、語るのはミーツスマイルの代表でスタイリストの佐野政三さん。
店舗デザインは、椿山荘や帝国ホテル、おしゃれなインテリア雑貨等を取扱うFrancfranc(フランフラン)などを手掛けたデザイナーが、ミーツスマイルのコンセプトに共感して買って出てくれたのだとか。
お客様の1割ほどが車椅子ユーザーで、知的障害の方が2~3割、精神障害がある方も利用されているそうです。また、理容室といってもお客様の男女比率が1:1と、女性のご利用が多いのも特徴です。佐野さんはじめ、フロアスタッフの上村尚さんも、重度訪問介護従業者資格を持っているというから心強いですよね。
両側に大きく開く入口の扉は車椅子でも余裕の解放幅
店内を一貫する様々な配慮に佐野さんたちの想いを感じる
店内中央は「バリアフリースペース」と呼ばれる空間が広がっています。「バリアフリー」×「フリースペース」からくるミーツスマイルさんオリジナルの造語です。
このスペース、壁面には大きな鏡が設置されていて、自分の車椅子に乗ったまま、移乗せずに施術を受けられたり、長時間じっと座っていられない小さなお子さんが、立ったまま髪を切ってもらうことができます。
畳を敷けば即席キッズスペースの出来上がり。しかも、スタッフの上村さんが本気で遊んでくれるという特典付きで(笑)、子連れのお父さん、お母さんも安心して施術を受けられます。
そして嬉しいのが、基本的に『貸し切り』だということ。「狭いところが苦手!」、「ほかのお客さんの会話が気になる!」、「隣が近すぎる!」という、外に髪を切り行くのが難しかった方にも朗報ですよね。
カーテンで仕切れば、洗髪中やトランスファーの最中を店外から見られたくない方も安心
導入されているシャンプー台は、お客様の身体の可動範囲や、状況に合わせて電動で細かく調整できる優れモノ。前かがみでも、仰向けでも、色々な角度にも対応できます。
誰もが気兼ねなく、気持ちよく過ごせる 月に一度の散髪が、そんな時間であってほしい
「基本、お客様から助けを求められたときにお手伝いするようにしています。貸し切りですから、ほかのお客さんを気にすることなく、ゆっくり自分のペースで移動していただけます。自分でできることは自分でやりたいという方も、お客様一人ひとりが、気持ちよく気兼ねなく過ごせる空間にしたいんです」(佐野さん)。
有資格者の佐野さんはトランスファーもお手のもの
車椅子ユーザーや、高齢者のお客様の中には、普段ベッドの上で過ごしている方も少なくありません。ミーツスマイルにいる時間をなるべく楽しんでもらいたいと、空間配慮にこだわって、施術中に鏡越しに見える棚の上にも、一般的な理髪店の機能美(?)とは一線を画すおしゃれな演出が。でも、視界に入るものが気になってしまうお客様が利用する際には、そんなこだわりの品々も事前に片付けてしまうのだそうです。
徹底された配慮の中でも、大野さんイチオシなのがトイレ。天井から吊られた引き戸で軽く動かせる上、戸袋にすべて納まる構造になっていて、大きめの電動車椅子でもストレスなく出入りできます。また、ちょっと押すだけで施錠できる鍵も秀逸。この鍵なら、上肢障害がある大野さんも自分で操作できると、やって見せてくれました。
大野さん曰く、この鍵が採用されている所はほかに見たことがない
手を洗う洗面台は高さ75cmに設定されています。「通常のユニバーサルデザインの規格だと、洗面台の高さは80cmなんです。でも、実際に車椅子に乗って使うと80cmって結構高くて、手を洗うと水が伝って長袖の袖口を濡らしてしまうんです。これ、実は“車椅子あるある”です(笑)」(大野さん)。そうだったのか!今まで気がつかなくてスミマセン。。。
これなら、せっかくのよそ行きを濡らさずにすむ
お店に入ってすぐ左側に設置されているカウンターは、車椅子ユーザーの方が支払いをしたり、サーブされた飲み物を置きやすいように高さが二段階になっています。これはスタッフの上村さんのアイデア。以前の職場で、カウンターが高くて車椅子ユーザーの方が利用できず、スタッフがわざわざカウンターを回り込んで対応していたのを見て、これではお客様も気が引けてしまうかも、と感じていたんですって。
自然と笑顔が集まる理容室
「髪を切ることは、月一回程度の贅沢。せっかく足を運んで下さったのだから、居心地の良い時間を提供して、笑顔になって帰って頂きたい」(佐野さん)。徹底的に配慮されたた設備と、佐野さんたちのハートがそろったお店には、わざわざ遠方から訪れるファンも少なくありません。「ふらっと現れて、コーヒーだけ飲んで帰っていくご近所の常連さんもいますよ(笑)」。
今後について佐野さんに伺うと、店舗展開もしていきたいけれど、業界全体に同じようなお店がどんどん増えて欲しいという想いを語ってくれました。佐野さんはスタイリストのほか、近隣のデイケア施設や就労支援施設等で外部講師として講義をしています。また、重度訪問介護施設のスタッフが、外出実習として店舗を訪れることもあるのだそうです。
理容業界だけでなく、こんな笑顔が社会全体に広がっていけばいいのにと、東京の片隅で想いを馳せるのでした。
<写真:佐野さん、上村さん、大野さん>
MeetsSmile(ミーツスマイル)
住所:東京都清瀬市松山1−16−9−102
電話番号:042−497−8946
ホームページURL:http://www.meets-smile.com/
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