うつ病の私が健常者の彼氏と別れて分かったこと
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ライター:Cyndi
少し前、うつ病患者歴1年半(当時)の私には健常者の彼氏がいました。
彼は私がうつ病を患った経緯や症状を全て把握し、それでも結婚したいと言ってくれていました。
そんな彼が、たった数ヶ月で「僕はうつ病を理解できなかった」と言い、全てを諦めました。
それまでで1番幸せだった人生の話を、少しだけさせてください。
彼は「いい彼氏」であろうとした
彼はとっても「いい彼氏」でした。
遠距離恋愛だったので、なかなか会えないかわりに毎日おはようからおやすみまで連絡をくれました。
言葉でも態度でも、たくさん愛情表現をしてくれました。
たまに会えた時にはすごく嬉しそうに、ずっと手をつないで、笑顔でいてくれました。
「◯◯(私)が完璧じゃないから、僕も力を抜いていられるんだよ」
「◯◯(私)ができないところは僕がやればいいんだから、できることをすればいい」
何度彼の言葉に救われて泣いたか分かりません。
でも、私はそれが彼自身ではなく、彼の「理想の彼氏像」から発せられていることに気が付きませんでした。
彼は無理をしていました。
私は当時週に2回のアルバイトを始めたばかりで、決められた時間に決められた場所へ出勤するということに大きな負担を感じていました。僕になんでも言って、という言葉に甘えて、彼に泣き言を言ってしまうこともありました。
しかし、週に5日・1日8時間以上、いわゆるブラック企業で頑張って働いている彼にとっては、私の発言はどうしても甘えにしか思えなかったでしょう。
それでも彼は私を好きでいてくれて、私の「いい彼氏」であろうと、自分の気持ちを無視して私を励まし続けました。
「うつ病を理解できないことが負担だから、別れよう」
そして、私は結婚を前提にお付き合いをしていた彼に、たった交際数ヶ月で別れを告げられることになります。
甘えてほしいという彼の言葉に従っていたら、それが彼の負担になりすぎていたのです。まったく気が付きませんでした。彼は甘えてくれるのが嬉しいと何度も言っていたからです。
そして、それは本心のようでした。甘えてくれるのが嬉しい。なのにそれを負担に感じている彼自身にも、彼は嫌悪感を覚えているように見えました。
「◯◯(私)は悪くない、溜め込んだ僕が全部悪いんだ」
「僕はうつ病を理解できなかった」
「回復を一緒に見守ることができない」
「ごめんなさい。もう限界だ」
私がうつ病でいる限り、もう彼の隣にはいられない。
どうしよう。どうしよう。
彼と一緒にいるには、うつ病を今すぐ寛解させるしかないと思いました。
私は、最後の力を振り絞って頑張ることにしました。
分かったこと:人は急には変われない
彼は連絡が多いのが負担だと言いました。私は彼への連絡を絶ち、アルバイトやライターとしての仕事に勤しみました。
彼は結婚相手として私では不安だと言いました。なので休養の時間は減らし、家事を今まで以上に頑張りました。
甘えているようにしか見えない。そう言われたので、甘えていた、だらけていた要素を徹底的に排除しました。
うつ病を理解できない。それなら追い出そうとしました。無理をしてでも彼と一緒にいたかったのです。
しかし、とある日、胃に雷が落ちたような痛みが走りました。救急搬送先での診断名は神経性胃炎。心よりも先に、体が先に悲鳴をあげました。
誰にも負けないと思っていた彼への愛は、うつ病に勝てませんでした。
私のうつ病は、自覚しているよりもずっと重いようでした。
うつ病患者の私が健常者の彼氏と別れて分かったことは、
人は急には変われないということでした。
私は別れを承諾し、最後に一度だけ会いたいと言いましたが、会ってもらえませんでした。
誰も悪くないから、つらい。うつ病患者ができることは何か
今回のケースで、悪いのは一体誰でしょうか?
甘えていいよといいながらもう無理だといきなり告げた彼でしょうか?
彼の言葉を信じて甘え続けた私でしょうか?
きっと、どちらでもありません。誰も悪くありません。
しかし、うつ病患者側として、反省していることはいくつもあります。
●彼が普段こなしていることを尊敬しているということを示すべきだったのではないか。
●頼っていいよと言われても、依存にならないようにコントロールするべきではなかったか。
●彼が実は人知れず苦しんでいることに少しでも早く気付いてやれなかったか。
●彼が「別れたい」と言った時点で解放してあげるべきではなかったか。
頼る・甘え・怠惰・依存、このあたりは本当に紙一重で、扱いが難しいものだと思います。精神障害を抱えた人がそうでない人と対等なお付き合いをする上では、特に慎重にならなければならない永遠のテーマですよね。
もちろん人それぞれ性格は違います。恋人のような深い人間関係を構築するときのクセや、自分の持っている障害が人付き合いをする上でどんなハードルになるか、パートナーのいない時期から考えておきたいですね。
人は、急には変われませんから。
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ライター Cyndi
うつ病&ADHD当事者のフリーライター。精神障害者保健福祉手帳3級(うつ病)所持。新卒入社したベンチャー企業を5ヶ月で休職→退職し、仕方なく翌年よりフリーライターとして独立。うつの人が集まる「うつバー」不定期主催。
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