4万人が学んだ「児童発達支援士」 発達の多様性を理解し、子どもの可能性を引き出す
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ライター:飯塚まりな
「うちの子、他の子どもとちょっと違うかも」。そんな不安を抱きながら、日々の子育てに奔走する親が全国に多くいます。
子どもたちの落ち着きのなさ、集団が苦手、コミュニケーションが取れない--。一人ひとりはいい子なのに、日々生活の中で見せる行動に悩みが尽きません。
一般社団法人「人間力認定協会」は、そんな現場の声に耳を傾け、独自のプログラムを開発。2020年12月に児童発達支援士の資格を認定され、受講生は4万人超え。子どもの発達を支え、将来に役立つ人としての生き方を学ぶことができます。
人間力認定協会とは

▲キャプション案:インタビューに応じてくださった人間力認定協会の理事望月宏彰さん
 
「私たちもここまで受講生が増えるとは思わなかったです」と人間力認定協会の理事望月宏彰さんは語ります。
代表理事の井上智之さんは、協会発足前の1996年にパソコン教室や児童の習いごとを運営する会社を立ち上げ、運営していました。その中で、教室に通う子供たちを見ているうちに特性の強い子たちに出会います。話を聞くと学校生活に馴染めない、勉強に付いていけないなど困難に置かれていました。
そんな我が子を見つめる保護者と教育者も、どう接するのか分からない状況でした。
代表の井上智之さんは「社会で生きるには人間関係を築いていかねばならない。ならば、コミュニケーション能力を伸ばすカリキュラムを作ろう」とこれまでの経験を活かし、子どもたちの発育を促すプログラムを開発しました。
開発したプログラムは、シカゴ大学で博士号を持つ脳科学者にも「脳科学的に見て、このプログラムは非認知能力を高める効果が実証できますよ」とお墨付きをもらうほどに。
さらに「非認知能力」について独自研究を重ね、協調性、勤勉性、コミュニケーション能力、自尊心など学業で身に着ける知識とは違う力を養うことを重点に置きました。
「AIが進化しても非認知能力は人間に求められる力です。“非認知能力=人間力”とし、協会を人間力認定協会として設立しました。誰もが胸を張って生きられる世の中を作っていきたいです」と望月さんが笑顔で語ります。
全国どこにいても学べる
受講者の年代は30代、40代で、発達障がいの子どもを持つ母親や、教育関係の仕事をする女性が多く受講しています。近年は男性の受講者も増え、プログラム終了後には自身の活動に取り入れ活躍されているとのこと。
さらに資格取得だけでなく、意見交換会、講演会、絵画コンクール、発達障がいに関する調査・研究なども行い、単なる資格スクールでない活動が受講者たちの信用を得ています。

▲キャプション案:全国どこにいても学べます
意見交換会で、特に関心のあるテーマは「ケーススタディ」「二次障害」「支援教育や療育施設の利用について」です。
ケーススタディは、子どもが起こす行動の場面について、どう対応すればいいのかという具体的な理解を求めるもの。ですが、同じ特性を持っていてもA君には効果的だが、Bさんには逆効果とケースはそれぞれです。
そのため受講者にアンケート調査を行い、「成功パターン」を集積し、調査報告書という形で公式サイトにて閲覧できるよう無償で公開しています。
児童発達支援士の学びは、保護者のケアにもなる
資格取得を通じ、子育て中の保護者の心にゆとりが生まれることも大きな特徴です。障がいを持つ子どもの保護者たちは自責の念が強い人も多く、人間力を学ぶことで子どもだけでなく、保護者を孤独から救うきっかけになればという願いがありました。
「保護者のメンタルケアができれば、子どもへの声かけも変わり、生活に良い変化が生まれます。私も妻にすすめて児童発達支援士を学んでもらいました」。
望月さん自身、次男が3歳児検診で発達の遅れを指摘された経験がありますが、プログラムを理解していたことで冷静に対応できました。この経験から、保護者の気持ちに寄り添った支援の重要性を痛感したといいます。
さらに、子どもたちが成長し大人になる過程で二次障害を防ぐ目的もあります。見えにくい発達障がいによって、いじめや不登校、引きこもり、自傷行為などの困難に直面し、立ち上がれなくなってしまう人もいるからです。
「将来を担う子どもたちに過度な苦しい思いをしてほしくない。発達障がいへの周囲の理解が深まれば、差別や偏見をなくしていけると信じています」と望月さんは語ります。
「今、療育施設でも児童指導員や児発管(児童発達支援管理責任者)を募集する大変さや、人員配置の虚偽報告をしたという話も耳にもします。適切な支援を施すためにも、同協会が「成功体験」のアンケートを集積し、報告書として公式サイトで無償公開しています」と話していました。
▲発達障害支援に関する研究・調査へのリンク
Media116の読者(発達障がいのお子さん持つ保護者)に向けてメッセージ
今後も協会は、教育機関との共同研究や調査を進め、実績とエビデンスを積み上げながら、子どもと大人の「生きる力」を育む活動を続けていきます。
実際に、高校で特別支援教育に携わるコーディネーターから「早期に適切な療育を受けた子は、高校生活での困りごとが少ない」との声があるとのこと。日々の療育や支援は、こうした子どもたちの未来に確実につながっているのです。
「私たちは何より大切なのは、協会スタッフ自身が支援への思いを強く持つこと。自らが行動することで多くの人々を惹きつけ、支援の輪が広がっていくと思っています」と締めくくりました。
編集後記
取材前は「人間力認定協会」という名称に若干身構えていましたが、理事の望月さんの人柄と、子どもたちの未来を真剣に考える姿勢に深く感銘を受けました。
発達障がいのある子どもとその保護者に寄り添い、実践的な支援を届け続ける協会の活動は、多くの家族にとって心強い存在となっているのだと実感しました。
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            ライター 飯塚まりな
フリーライター/イラストレーター 近所の人から芸能人まで幅広いインタビューを行う。取材実績は300人以上。 フリーペーパーから始まり、現在はwebメディア、書籍、某タレントアプリなどで執筆。 介護・障がい者施設での勤務経験あり。「穏やかに暮らす」がここ数年のテーマ。
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