海外の障害者福祉 〜フィンランド編︎~
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ライター:keita0206
皆さんこんにちは。上肢障がいの啓太です。最近の私は、また海外で旅をしたいと思いつつ、英語の勉強に励んでおります。
というのも、また次に旅するときは、各国の福祉の実態を現地調査、インタビューしながら、そのことを発信する活動家として旅をしていきたいと目論んでいるからなんです。
今回はその予習として、フィンランドの福祉の状況を書籍やネットを通して調査してみました。
フィンランドの概要︎
フィンランドの障害者福祉の大きな特徴として、
①障害者における自己決定権
②オンブズマン制度について
③ 支援員、施設の労働環境
が挙げられます。
これから1つずつその特徴を上げていきたいと思います。
①障がい者における自己決定権︎
まず、フィンランドでは、社会福祉サービスを受ける人をサービスを受ける顧客として位置づけており、そのサービスを受ける際には情報を得る権利や自己決定権が保障されており、利用者には選択する権利があります。
自己決定権においては、安全ベルトの使用やベッドサイドレールの設置においても、本人の同意もしくは医師の許可をなくして、施設の管理者等が一方的に決めることはできません。
他に具体的な例を挙げると、知的障害のある人が一人暮らしを希望した場合、支援者は反対するのではなく、段階的にサポートをして本人の夢を実現させた事例もあります。また、車椅子を使う女性がアート関係の仕事をしたいと希望した場合、自治体と支援者が連携し、アートギャラリーでの就労体験を実現。後に作品の展示、販売にもつながったという例もあります。
これらの例は、日本の障害者福祉と比例してみると、日本の方では外出1つにおいても、なかなか施設から許可が降りない場合も多く、就労や食生活も制限されがちであり、安全や効率の方が重視される傾向にあります。
対してフィンランドでは、ランチのメニューを利用者同士で自発的に決めたり、支援員との相談を通して、住居や就労を選択、決定することができるようです。「本人の意思が最優先」という、自主性を尊重したサポート体制によって、フィンランドの福祉制度は成り立っています。
②オンブズマン制度について︎
聞き慣れない用語ですが、オンブズマン制度とは、行政の不正や人権侵害を監視し、勧告、是正する第三者機関です。
日本でも1990年に川崎市に初めて設置されており、今では全国ほとんどの県に設置されてはいますが、市ごとに細かく設置はされておらず、また市民オンブズマンがほとんどで、後述する専門のオンブズマンは、まだほとんど普及してないといった現状です。
対してフィンランドのオンブズマン制度は、1919年から議会で制定されており、これはスウェーデンに次いで世界で2番目と言う長い歴史を持っています。
また専門のオンブズマンも、子供、障害者、移民に至るところまで多数あり、権限においても、立法機関に属する独立した立場であるため、施設への立ち入り調査や資料提出を命令する事が可能で、非常に強力です。
日本では一般的に、オンブズマン制度よりも、役所の相談窓口などに集中しがちといった、認知が低い現状であり、その権限においても、地域住民がメディアを巻き込んで、施設の不正な行いを勧告できる力はありますが、まだ公的な強制力は弱いといった印象です。
調べながら理解を深めるうちに、日本でオンブズマン制度を例えるとすれば、労働基準監督署が最も近い存在だと感じました。
その権限の対象は、会社、企業に限定されるものの、不正な労働環境に対する調査、強制力や普及の割合、勧告できるなどの面は共通した性質を持っています(それでも独立性や強制力は、本場のオンブズマン制度の方が強い権限を持っていますが)。
つまり、日本の労基署が労働環境の番人だとすれば、フィンランドのオンブズマンは、全体の人権、行政の番人といったところでしょうか。
③支援員、施設の労働環境︎
フィンランドは、労働環境において厳格な意識を持っており、1日8時間労働を基本とし、残業は責任者等の立場でないとめったに行わないようです。
また長期休暇も充実しており、支援者は夏季休暇などを中心に1ヵ月位の長期休暇が保障されています。
そのような労働環境化なので、支援員もリフレッシュしやすく、前述したようにオンブズマンが充実しているので、虐待などの問題が発生しにくく、それらが放置されることも少ないようです。
賃金の制度も大きく違い、残業になると最初の2時間までは給料の+50%、2時間を超えた場合は給料の+100%になります。日本ではたくさん残業をしても一律25%なので、その差は歴然ですね。
施設環境においては、QOL(生活の質)向上を目的として、福祉施設だけでなく、学校や会社にもサウナが設置されていたり、施設利用者はトレーニングジムの利用もできたりします。
まとめ︎
今回の調査で、フィンランドという国1つだけでも、日本の福祉制度と根本から大きく違う印象を受けました。
特に利用者に対する自己決定権の尊重と、オンブズマン制度の普及が日本の福祉との間において大きな差が見受けられました。
調べていく中で、労働条件の違いや日常的文化の違いも知ることができたので、他の国の福祉、生活のあり方をまた調べてみたいと思います!
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ライター keita0206
1992年福岡県生まれ。先天性四指欠損という、左手の指が生まれつき4本無い状態で生まれる。大学4年生の就活の最中、ママチャリ日本一周を思い立つ。大学卒業後は就職せずアルバイトで資金を貯め、2015年5月〜2016年9月までの約1年4ヶ月で、ママチャリでの日本一周を達成。その後クラウドファンディングにて旅の記録を書籍化。旅後は大阪で一人暮らしをするも、旅したい欲求が溢れ2022年7月〜12月にバイクで2度目の日本一周を達成。現在は自転車インド一周の旅に向けて準備中。
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