「オストメイトも銭湯を楽しめる!?」インクルーシブ入浴イベント開催 アルケア株式会社
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ライター:飯塚まりな
墨田区で開催、貸し切り銭湯イベント
「たまには近所の銭湯でゆっくり湯に浸かりたい」
日本では入浴そのものが文化であり、癒しのアクティビティです。
ですが、突然の病気や事故などが原因で公衆浴場に行けず、足が遠のいてしまう人は少なくありません。お風呂好きな方にはとても残念なことです。

▲旅館のような外観が特徴の御谷湯
今回、医療機器・ケア用品を広く取り扱うアルケア株式会社(東京都墨田区)は、オストメイトを対象とした「インクルーシブ入浴」「開発者との直接対話」プログラムを6月11日(木)~13日(土)の3日間にて開催しました。
場所は、スカイツリーが見える同区の御谷湯。貸し切り湯での入浴体験には、2日間で20名、入浴体験に加え、開発者と語ろう会、工場見学すべてのイベントは3日間で延べ60名ほどの方がご参加されました。久しぶりの銭湯で心身をを癒し、笑顔がこぼれます。
オストメイトとはがんや事故、難病が原因でストーマ(人工肛門・人工膀胱)を造設する人のことで、日本では23万人いると言われています。お腹に排泄口を設けているため、自分の意志で排泄をコントロールできません。そのため、排泄物を受け止めるストーマ装具をつけて生活します。
一見、服を着ていれば周りの人にはわかりません。日ごろから適切なケアを大事にすることで、これまで同様に仕事や旅行、スポーツなど自由に楽しむことができます。
さらにストーマ装具を着けたままで入浴することは、医学的には問題がありません。ですが、イベントを企画したアルケア株式会社の神藤貴徳さんはオストメイトに対し「見える壁と見えない壁がある」と感じていました。
入浴中、ストーマの衛生面は本当に保てるのか

▲アルケア株式会社 神藤貴徳さん
―― 神藤さんが、オストメイト対象のイベントを開催したきっかけは何でしょうか。当事者が抱える「見える壁と見えない壁」とは具体的にどういうことでしょうか。
神藤さん:オストメイトの方々からストーマを造設してから、銭湯や温泉に行けなくなったという話をよくお聞きします。
「見える壁」とは、公衆浴場に行った際に「ストーマ装具が濡れて大丈夫なのか」「剥がれてしまわないか」と製品の耐水性や耐久性について、オストメイトご自身が不安になり心配されることです。
「見えない壁」は、周囲の視線や衛生面の誤解など、社会の理解不足からくる心理的なものだと感じています。公衆浴場では周りの人たちが理解しておらず「お腹に何かついている」「あれはなんだろう」という視線や声が心理的負担となると聞いております。
オストメイトに対する正しい理解が社会に不足していると感じ、このようなイベントを通して「オストメイトも銭湯や温泉で入浴できる」ことを発信したいと思い企画しました。

▲こっそり乗りたくなるレトロな体重計
―― 厚生労働省では、オストメイトが公衆浴場を利用することへの理解を求めているそうですね。
神藤さん:はい、厚生労働省のリーフレットにはルールを守って入浴するのであれば、衛生面の心配はないと記されています。ただ、オストメイトの入浴事情がまだ認知されていない入浴施設さまも多いかと存じます。
今回お世話になった御谷湯さまは、バリアフリー対策が充実した都内でも貴重な銭湯です。11年前からオストメイト対応のトイレも導入され、縁あってこうして同じ墨田区という地域で事業活動する我々から新しい発信ができないかとご相談させていただきました。
ストーマ装具は設計段階から入浴を想定して、開発しているので水に濡れても問題ありません。また、ストーマ装具が見えないよう、腹部に貼るバスラックシール(入浴シール)というものがあり、気になる方にはそちらを貼っていただくと安心感があるかと思います。日本人の皮膚の色に合わせたシールですので、目隠し機能や防水機能を兼ね備えています。
―― 今回のイベントで参加者を通してどんなことを感じられましたか。
神藤さん:初めは都内在住のオストメイトを中心に参加されるのではないかと想定していましたが、最終的には青森、長野、三重など遥々遠方からお越しいただくことになりました。私自身も問い合わせの電話を受けた際には、非常に驚きましたが同時に「本当に全国には公衆浴場に行けず、はがゆいお気持ちの方がいるんだ」という実感も湧きました。
オストメイトは平均60代~70代の方が多く体調面や足腰の心配もありながら、みなさん電車やタクシーを乗り継いでご参加くださいました。感謝の気持ちとイベントのニーズの重要性を感じられた3日間でした。
近い将来、銭湯を訪れたオストメイトたちがストーマ装具を気にしないで湯船に入れる環境になってほしいと願っています。これからも我々は変わらず発信していきます。
「インクルーシブ入浴」を体験して 参加者の声

▲カテーテルから摂取する高カロリーの栄養液を見せてくださった安西さん
参加者 安西和子さん(埼玉県 50代後半)
クローン病により永久ストマ・在宅中心静脈栄養管理下
―― 久しぶりの公衆浴場だとお聞きしました。湯加減はいかがでしたか。
安西さん:とても気持ちよくて、14年ぶりに銭湯に入れて嬉しかったです。私は20代の時にクローン病になり、ストーマを造設することになりました。いまは、24時間ヒックマンカテーテルを繋いでいますが入浴中は一時的に外しています。
今回は貸し切り湯のおかげで気持ちの面でも参加がしやすく、いい気分転換になりました。
―― たまには自宅近くの銭湯などには行きたいと思うことはありますか。
安西さん:御谷湯のようにオストメイトに理解がある銭湯ならまた行きたいと思いますが、私の住んでいる地域には都内とはちがい銭湯自体が少ないのです。
わざわざ自分から銭湯に問い合わせることはしないのが正直なところ…。たとえば初めて行った銭湯で、施設側がどういう対応していいかわからないと困られたらと思うと遠慮してしまいます。
―― ストーマの造設にあたり、何か感じられたことはありますか。
安西さん:これまで他のメーカーや海外から輸入されたストーマ装具を使用するなど、色々試してアルケア製品に落ち着きました。
というのも物によっては、貼った後に皮膚がかぶれて真っ赤になりかゆくて困ってしまうことがありました。
ストーマ装具は一枚の値段が決して安価ではないので、一度貼ったら簡単には剝がせない気持ちになります。通常は一枚で3、4日は持てばいいのですが交換頻度が多いと「○○円するからな~…」と考えてしまうのは、オストメイトあるあるではないでしょうか。

▲入浴後は別会場へ。開発者に質問や相談事を話す様子
―― 今回のイベントへの参加で期待していることはありましたか。
安西さん:入浴ができることはもちろんよかったのですが、ストーマ装具開発者のみなさんと直接お話ができることも参加の決め手でした。ストーマ装具を使うことで感じる疑問点や、普段抱えた気持ちを話せる機会はそうないので「頑張って外に出よう」と思って来ました。
普段、ストーマ装具を使用する際に「なんでここにフィルタが付いているの?」「どういう人が開発しているのかな」と気になることがたくさんあり、とても楽しみにしていました。
バリアフリー銭湯「先代の思いを引き継いで」
今回、イベント会場になった御谷湯は2015年に大々的にリフォームし、高・中・低天然温泉、日替わり薬湯、マッサージ風呂など8つのお風呂を楽しむことができます。
中でも注目は「福祉型家族風呂」。介助が必要な方も安心して入れる個浴風呂を導入するバリアフリー銭湯は都内でも珍しく、ひとつのスペースに脱衣所やトイレがあり車いすのまま入ることができます。

▲御谷湯の歴史を引き継ぐ片岡さん
番頭を務める2代目片岡さん、先代は妻の父でした。
「今後の地域に暮らす高齢者や障がいのある方も含めて、誰もが広く使いやすい場所にしたいとバリアフリー対応の銭湯にしました」
自身も前職は福祉業界で働いていたこともあり、今回のイベントには協力したいと歓迎されていました。
「以前には、パリから来られたご家族が車いすで利用したいと予約されたこともありました。いまや地域の方に親しまれる一方、観光の目的に立ち寄る方も多い銭湯になりつつあります」
「御谷湯」さんについては以前Media116でも取材しています、その時の記事はコチラ(リンク先記事は2016年当時の内容です)
オストメイトとの入浴文化
湯上がりの参加者たちの表情は、どの方もさっぱりとした表情を浮かべ、一緒に同行したご家族の方もリフレッシュできたのではと感じました。
オストメイトという言葉は知っているようで、あまり聞き馴染みのない言葉でもあります。筆者は今回初めてストーマ装具のサンプルを手にし、「排泄物によっては、このサイズで足りない場合もあるのではないだろうか」とその場で当事者の気持ちを想像しました。
ストーマのある生活を送るまでに、さまざまな痛みや試練を経験したオストメイトの方々。今回の入浴プログラムに参加したことで、見えない壁を少し低くする一歩になったのかもしれません。
私たちが理解を深めていくことで、新しい銭湯の過ごし方として浸透していけたらと思います。
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ライター 飯塚まりな
フリーライター/イラストレーター 近所の人から芸能人まで幅広いインタビューを行う。取材実績は300人以上。 フリーペーパーから始まり、現在はwebメディア、書籍、某タレントアプリなどで執筆。 介護・障がい者施設での勤務経験あり。「穏やかに暮らす」がここ数年のテーマ。
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