目黒区に「しいちゃんのカフェ -C’sCafe-」開業 障がいのある学生の「働く」を支える
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ライター:飯塚まりな

▲2026年2月6日にオープンした「しいちゃんのカフェ」。
東急大井線大岡山駅の北口商店街を歩いて8分。障がいのある人の「働く」を応援するカフェがオープンしました。
今回はNPO法人ディーセントワーク・ラボ(以下:DWL)主催のオープンイベントが開催。カフェのコンセプトや現役大学生の思いを紹介します。
しいちゃんのカフェとは、どんなカフェ?
DWLでは障がい特性のある学生が、将来の就職で直面するかもしれない困難を解決する手段の一つとして、社会人の先輩に「働くこと」について気軽に相談できるオンラインサロンをableto(エブルト)と名付けた事業の中で運営してきました。

▲「カフェの完成を待ち望んでいた」と話す代表の中尾さん
DWL代表の中尾文香さんには障がいのある姉弟がいます。だからこそ、障がいがあっても社会での役割を担い、収入を得ることの大切さを身近に感じていました。
しいちゃんのカフェはカフェを通して学生や社会人の先輩たちと自然に話ができる場所として誕生しました。
イベントのない日は一般客も利用でき、軽食やスイーツを楽しめます。
さらに、学生アルバイトを受け入れ、働く経験を積める場として提供し、働くことが初めての学生にとっては、新たな挑戦の場になりそうです。
ところで、しいちゃんとは誰なのか。聞けば中尾さんの想いに共感し、長年活動を応援する女性だとか。カフェ出店についても、応援をしてくださっています。

▲カフェメニューの一つ、具材たっぷりのパニーニ
第一部では、中尾さんがカフェのコンセプトを説明。カフェを始めたのは、ある特別支援学校の先生からのインスピレーションでした。
卒業した学生が社会に出て壁にぶつかった時、ふと恩師のいるカフェを訪れて、羽を休めていく——。そんな光景が、公共施設の一角にあるカフェで見られたのです。
中尾さんは「帰ってきやすい居場所」がカフェという形で、機能していることを実感したといいます。
「しいちゃんカフェでは、美味しいものを食べながら、はたらく・つながる・ひろがるの3つをキーワードに、その場で生まれる偶然性を大事にしたいです」と語りました。

▲焼きたてのアップルパイ
社会に出る前に社会とつながる
第二部は、DWLで障がいのある大学生の修学就労支援プロジェクト「ableto」(エブルト)について高橋亜矢子さんが解説。2024年に立ち上げられたプロジェクトは、企業と学生をつなぐプラットフォームの役割を行なっています。

▲学生の就活支援に力を入れる
現在の大学生は、コロナ禍で中学・高校時代を過ごした世代。対面での経験が少なく、人間関係に不安を抱える学生も少なくありません。学校だけでは支えきれない部分を、サポートしていく必要があるといいます。
2026年の障がい者の法定雇用率は 2.7%で、達成できている企業は半数程度。 一方、障がいのある学生の 3人に1人が就職に至っていません。
企業側と障がいのある学生が出会い、就労につながるまでの過程にはいくつかの課題があると高橋さんは指摘します。障がい者雇用が学生にとっても前向きなキャリア選択として、十分になりきれていないと伝えていました。
「学生と企業の対話イベントを設けています。参加した学生たちからは『人と話すことを怖がらなくていいと思えた』という声が上がりました」。
今後は、障がいのある学生の進路支援をより充実させるため、大学のキャリアサポート部門との連携が欠かせません。

▲センスの良さが光る商品ばかり
また、equalto(イクォルト)のプロジェクトについても紹介。ものづくり支援として就労継続支援B型事業所の利用者たちがデザイン性の高い商品を制作する機会を提供する社会貢献活動にも尽力しています。
アクセンチュア株式会社とアッシュコンセプトが協力し、10年ほど続けてきた取り組みは現在にまで継続され、毎年新作が登場。一目見て「かわいい」と手に取りたくなる商品が多いことや、事業所独自の強みを活かし、細やかな手仕事で「あったらいいな」を商品化しています。
大学生の本音「働けるのか不安」
その後、カフェメニューの紹介に続き、車いすで通学している立教大学の学生・正野寛一郎さんが登壇しました。エブルトプロジェクトに参加した経験談について語ります。
オープンイベントでは、学生による対面型サロンも行い、同じテーブルを囲みながら同世代で近い将来自分たちが働くことについての考えや思いを共有しました。
正野さんは「普段の僕は、周りの学生と比べてもアクティブに動いている方だと思います。ですが、疲れやすいという困りごとがあり、今でも授業を休んでしまうことがあります」と大学生活の実状を明かしました。

▲熱心に気持ちを伝える正野さん
今は就活のイメージが湧きにくいといいます。「正直なことを言うと、週5日フルタイムで働けるのか不安です。ですが、僕も社会人として、みなさんと同じように仕事に就きたいのです」と胸の内を語りました。
働きたい気持ちはある。しかし現実を考えると、迷いが生まれてしまいます。誰かに一歩背中を押されながら、安心して働ける場所を見つけたい。正野さんの表情から葛藤が伝わってきました。
一方で、しいちゃんのカフェという場があることで、今後は色々な立場にいる人たちとフラットに関われることに、正野さんは可能性を感じています。
「障がいは人それぞれです。互いに話すことで、自分ができることを見つけるためにも話すことが大事だと思います。このカフェで、みんなと一緒に働くことについて考えていきたいです」と正野さんは真剣に語りました。
誰かとつながっていれば、なんとかなる
最後に中尾さんはこんな話をしてくださいました。
「福祉の支援やサポートが必要な方々の深刻な状況を耳にする時、共通しているのは“誰ともつながっていない”ことです。友人、地域の人、支援者でもいい。誰か一人でもつながっていることが大切だと思います」。
人の孤立は目に見えにくいですが、誰でも一人では生きていけません。話すことが苦手だったとしても、大勢の人と過ごすことが難しくても、「助けて」と言える場所を持っておくことで、将来の選択肢は広がります。

▲対話型サロンの様子
「ここでは、個人では気付けない、あなたの良いところや強みを見つけてフィードバックできる場だと伝えたいです。決して無理に背中を押すことはしません。安心して来てほしいですね」。
しいちゃんのカフェでは、今後もオンラインサロンを継続し、企業や教育関係者、地域の方々が訪れ、学生たちと話せる機会を提供します。立場や年齢を超えて対話が生まれ、共に就労について考えます。
カフェで出会う大人たちは、きっと学生に寄り添う伴走者になってくれるでしょう。
この場所から、どんな広がりを見せていくのか、Media116ではこれからも見守っていきたいと思います。
編集後期
障がいのある人が運営するお店は全国にありますが、大学生をメインにした新感覚のカフェは聞いたことがありませんでした。
「自分たちの学生時代からあればよかったのに」と思えるカフェでした。
しいちゃんのカフェはやさしい大人がたくさんいます。将来に悩む学生さんはぜひ訪れてみてくださいね。
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ライター 飯塚まりな
フリーライター/イラストレーター 近所の人から芸能人まで幅広いインタビューを行う。取材実績は300人以上。 フリーペーパーから始まり、現在はwebメディア、書籍、某タレントアプリなどで執筆。 介護・障がい者施設での勤務経験あり。「穏やかに暮らす」がここ数年のテーマ。
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