「本気で向き合ってくれた」失語症の花嫁とフリーウェディングプランナーが本音でぶつかった結婚式【後編】
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ライター:飯塚まりな
「結婚式で、支えてくれた人たちに感謝の気持ちを伝えたい」
8年前にくも膜下出血で倒れ、車いす生活になったレースクイーンの西口友美さん(活動名:竹沢友美さん)。障がいを負っても家庭を築きたいと、婚活を始めて昨年9月に結婚。次の目標は結婚式を挙げることでした。
そんな友美さんが見つけたのは、フリーのウェディングプランナーで、株式会社Colorfraise 代表の岩田美生さん。どんな条件のカップルにも「NOと言わない」をモットーに、これまで3000件以上の結婚式を手掛けました。
後編では、友美さんの結婚式当日や準備期間の振り返りをお伝えします。
(前編はこちらから)
やりたいことを全部
1月下旬、都内丸の内で開かれた結婚式には総勢90名近くのゲストが参列。純白のウェディングドレスに身を包んだ友美さんに「素敵!」「おめでとう!」と一同が声を上げました。「私のために大勢の人たちが集まってくれた。すごいなぁ」と手を振る友美さん。近くで見守る岩田さんは満面の笑み。

▲プランナー岩田さん(左)夫と父の間で幸せを誓う友美さん(右)
「友美さんのやりたいことを、全部叶えましょう」
準備の期間中、ウェディングプランナー岩田さんは友美さんにそう伝え続けてきました。しかし、失語症そして車いすで行う結婚式は、実績のあるプランナーでも簡単ではありません。
バージンロード、指輪の交換、披露宴のお色直し、食事、オープニングムービー...。通常の結婚式で行うプログラムに加え、車いすでの移動、車いすの車輪にドレスが巻き込まれないよう移動時だけバンドで抑え、定位置に着いたら美しくドレスが見えるように毎回バンドを外すなど、いくつもの工夫が必要でした。
事前に自宅で挙式のリハーサルを行い、着脱がしやすいよう特注でドレスを用意。一つ一つハードルを乗り越えました。
元気になった姿を見てほしい
サプライズ余興は「ドレス姿でみんなの前を歩くこと」でした。
当日は装具なしで歩くため、夫の直廷さんも介助ができるよう、夫婦で練習を行いました。
いざ本番。お色直しの真っ赤なドレスが会場を華やかに彩ります。外のテラスで、車いすから立ち上がる姿は一輪の薔薇のよう。
夫が左側で支え、ゆっくり立つことができました。集中して、歩くタイミングを見計います。
「がんばれ!」ゲストたちから声援が背中を押します。
「行きます」
障がいを負ってから、リハビリ以外で歩くのは初めてのこと。左半身麻痺の感覚がない足で、地面を踏む緊張感。ドレスを裾上げし、足元を見つめ、そろそろと左足を動かしました。

▲装具なしで歩く友美さん。大勢のゲストが見守る中、3メートルの距離に挑戦
「私の足、がんばって!」
友美さんは30代で生死を彷徨い、一度は絶望を味わったものの、結婚して今はとてもしあわせ。この気持ちを自分の口から伝えたいのです。
1メートルほど歩いたところで、岩田さんが一度声をかけます。「無理なさらないように」と合図を送りました。
「大丈夫、まだ歩ける」
大勢のゲストに囲まれ、仲間たちと同じ目線で立てたことがただただ嬉しく、いつのまにか目標にしていた3メートルの距離を達成。そして立ったまま、手紙を読み上げます。

▲目標の3メートルを歩ききった友美さん。ゲストからあたたかい拍手が鳴り響く
みなさん、心配かけてごめんね。
ずっとそばにいてくれてありがとう。
みんながいなかったら、強くなれなかったよ。
私はいま、しあわせです。
ありがとうございます。
両親や大勢の友人たちから自然と笑顔と涙がこぼれ、あたたかい拍手が鳴り響きました。
岩田さんは夫の直廷さんの涙にもらい泣き。
「当日はご主人さまが何度も涙を流され、打ち合わせではいつも冷静でいらしたため、想像できなかった思いが伝わりました」

▲微笑ましい新郎新婦に笑顔の岩田さん
終了後、東京駅でフォトウェディング
結婚式の終了後、岩田さんは夫婦をある場所に案内しました。赤レンガの歴史ある建築で、フォトウェディングの人気スポットです。
本来は前撮りをここで行いたいと希望していました。ですが、外での撮影が難しく断念。岩田さんは「実現させたい」と最後まで計画を温めていたのです。
しかし、ここで思わぬ最難関がありました。撮影後の着替えをする場所が見つからない。東京駅付近のレンタルスペースは高額で却下。式場は夜からレストラン運営に切り替わり、開店準備で着替えができません。
車いす利用の場合は、人によってヘルパーの同行や、トイレの場所探し、車いす専用タクシーの手配など、一般の結婚式ではかからない費用が発生することがあります。
最終的には、再度相談してレストランのビル内で1番広い多目的トイレを借りて着替えることに。
最後まで安全に過ごせる見通しが立ち、岩田さんは安堵しました。
「世の中に車いすで生活する方々は、ここまでご苦労されているのかと。プランナーの私にとっても、学びがありました」

▲東京駅前でのフォトウェディング。岩田さんが最後まで温めていた計画が実現

▲赤レンガをバックに。夢のような一日が暮れていく
撮影が終わると、空は暮れて寒い風が吹きました。ドレス姿の友美さんはコートとマフラーに包まれ、岩田さんに伝えます。
「岩田さんでなかったら、結婚式はできなかった。本当にありがとう」
「この言葉で今までの苦労なんて全て吹っ飛びました!」そう笑う岩田さん。
当日まで、毎日ラインでやり取りし、時には本音でぶつかったことも。双方が決して諦めず、結婚式のためにとことん歩み寄りました。
祝福を受け、あっという間に過ぎた一日。友美さんは、名残惜しそうにドレスを脱ぎながら「夢を叶えられた」とにっこり。夫婦として、新たなスタートが始まりました。
人として向き合ってくれた
夢のような結婚式から一ヶ月。友美さんは余韻に浸りながら、日常を過ごしています。
手には、大事にしているシール帳。式場にプリクラの機械を設置し、ゲストたちの写真やメッセージがシールに。ページをめくりながら、岩田さんと過ごした準備期間を語ります。
「岩田さんには、本当によく連絡をして。面倒なこともあっただろうけど、私のペースに合わせてくれて、人として向き合ってくれました」

▲準備に余念なく、ゲストたちの席をチェック
今の生活になってから会う人といえば、家族や医療従事者、ヘルパーと接するばかり。家にいる時間が多く、友達と会うことすら難しい。だからこそ、岩田さんとの時間は貴重でした。
「岩田さんは、ウェディングプランナーの仕事が大好きな人なんだなと。こんな素敵なプランナーに出会えた自分を“よくやった”と褒めてあげたいです(笑)」

▲友美さんを気遣う岩田さん
出会えたことは宝物
一方、岩田さんは現在もさまざまなカップルの門出を支えています。今後もハンデのある方々の結婚式も担当できればと語っていました。
「今回は一般の結婚式以上に想像力が求められました。友美さんに教わったことは数知れず、この経験と想い出は一生の宝物です。これからも新しい形の結婚式に目を向けていきます。」
結婚式を挙げるカップルが減少していると言われる現代。今後、ウェディングプランナーとして働き方が問われます。
病気や身体の障がいだけでなく、LGBTQや再婚者の結婚式などにも寄り添い、結婚式がしたいすべてのカップルの夢を叶えたいと明るく話す岩田さんでした。

▲結婚式を終えて。直廷さん(左)、友美さん(中央)、岩田さん(右)
編集後記
Media116では、結婚式の前後に取材を重ね、当日の様子は映像で拝見しました。
ご主人が涙ぐむ姿に私も涙が出ました。
毎回、豪速球で夢の球を投げる友美さん。全力で受け止める岩田さん。
プランナーと花嫁が二人三脚で、人生の夢の大舞台を作り上げる。とても尊いものでした。
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ライター 飯塚まりな
フリーライター/イラストレーター 近所の人から芸能人まで幅広いインタビューを行う。取材実績は300人以上。 フリーペーパーから始まり、現在はwebメディア、書籍、某タレントアプリなどで執筆。 介護・障がい者施設での勤務経験あり。「穏やかに暮らす」がここ数年のテーマ。
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