制度外サービスと“戦力としての雇用” ――株式会社テクノツールと株式会社クラウドケアが描く、働き方の新しいカタチ
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ライター:飯塚まりな
前編(※)では脳性まひの本間一秀さんの半生を紹介しました。今回は本間さんが利用する保険外の支援サービス「株式会社クラウドケア」とプログラマーとして勤めているテクノツール株式会社」(東京都稲城市)について触れていきます。
「介護・障害の困りごと」を手助けする
※前編はこちら
介護を必要とする人にとって、ヘルパーの存在は欠かせません。ですが、介護保険サービスのみでは公的制度が厳しく、依頼する内容には細かいルールがあります。

▲生活の中で必要なのに、公的制度では依頼できない支援がある
例えば、通院の付き添いや外出の同行など、生活の中で必要だと分かっていてもヘルパーに頼ることができない現状です。
株式会社クラウドケアではこうした問題を埋める役割を担い、一都三県を中心に介護保険外の自費訪問ケアに特化したサービスを展開しています。
代表の小嶋潤一さんは介護福祉士・介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を持ち、介護現場の課題を見つめ、独自のクラウドシステムを立ち上げました。

▲インタビューに応じてくださった株式会社クラウドケア代表・小嶋さん
「依頼者とヘルパー双方の満足度が高いのが特徴」介護現場の課題を見つめ、独自システムを構築
内容は依頼者に必要なサービスと、それに対応できるヘルパーとのマッチングを行い、1時間からオーダーができます。
「最近は障害者の方のニーズが増えていて、特に大きなトラブルなどは起きたことがありません。互いの相性を丁寧に調整し、依頼者とヘルパー双方の満足度が高いのが特徴です」と小嶋さんは話していました。
内容は基本的な「介護」・「介助」・「家事支援」を始め、保険外だからこそ実現できる外出支援や余暇活動、旅行の付き添いに至るまで幅広いサービスがあります。
長時間の依頼が可能なので、サービスの組み合わせによっては、身体介護や家事支援をノンストップで行えるのです。
マッチング形式でサービス料金を抑える
気になるのはサービス料金。クラウドケアは「保険外サービスは高くて使えない」という悩みを解決するため、従来の保険外サービスが1時間5,000円から6,000円だったところを、半額近い1時間2,500円から3,000円で利用できるようにしています。
クラウドシステムでの管理により中間コストの削減や各地に事業所を構えない運営方法、ヘルパーを直接雇用しないため、コストを抑えることが可能なのです。
依頼者である本間さんは、月一回の出社日にサービスを利用しています。車いすで片道2時間半かけてヘルパーと通勤し、安心して電車の乗り降りができます。

▲重度障害の方でも利用しやすい移動支援。大きな価値を生み出すサービス
重度障害の方や外出支援が必要な人でも利用しやすく、大きな価値を生み出す一方、利用する側が「もっと依頼できたら」という気持ちが生まれるのも自然なことです。
メリットが大きく、サービスに不満はないですが、利用する本間さんの思いとしては「通勤以外は病院か散髪で1回ほど依頼しています。本当はもう少し利用回数を増やしたいけど費用を考えると難しいです」と話しました。
利用する人の中には、グループホームに入居している障害のある女性が、コンサートに出かけた際に、帰宅時間がホームの門限に間に合わないと事前にホテルを予約。その際に、見守りとしてクラウドケアからヘルパーを依頼したことがありました。
クラウドケアがこの価格帯で提供できていることで 「自費サービスにかけられるお金と相談しながら必要なときだけ頼めて助かります」
という声もあり、 依頼者によって使い方は多岐に渡ります。
今後は「関西など各地にも広げたい」と話す小嶋さん。必要な人に、必要なサービスが届くよう今後の福祉の未来に対する真剣さが伝わってきました。
制度ありきではない障害者雇用の形
一方、本間さんが勤めるテクノツール株式会社(東京都稲城市)の姿勢もユニークさを感じます。テクノツールはアシスティブ・テクノロジー(AT)の提供で、重度肢体不自由者向け入力支援デバイス、アームサポート、点字編集ソフトを中心とした開発・販売を行なっています。
現在は13人の社員の中で、重度身体障害者が3名。これまでの採用では車いすユーザー、視覚障害、聴覚障害のある方も含まれていたといいます。
ですが、テクノツールでは決して「障害者雇用」を掲げているわけではありません。
代表の島田真太郎さんは「一緒に働くことに障害の有無は関係ありません。会社にとって必要な能力を持ち、戦力になってくれる人物であれば雇用したいと考えています」と語りました。

▲インタビューに応じてくださったテクノツール株式会社代表の島田さん「障害の有無は関係ない。戦力になる人物を雇用したい」
本間さんは障害者の就労支援サービスが始まる以前から、障害者における就労のパイオニアとして活躍しています。当時の創業者は島田さんの父親で、本間さん以外にも障害がある社員を数人採用していたといいます。
「創業者の父は福祉の出身ではないですが、障害者に関わる問題を健常者だけで解決しようとするのは意味がないという考えで、障害のある社員の雇用は必要だと確信を持っていたんです」と述べました。
親から子へ受け継がれ2代目になった今でも、変わらず本間さんは社員の一員として活躍してくれています。
「弊社でプログラマーとして勤めているのは彼しかいません。今ではテクノツールの『象徴』と言っても過言ではないです」と本間さんを信頼し、とても頼りにしていることが伝わりました。
本間さんの出社に必要な移動介助費用は会社が負担し、島田さんは「本間さんが月に一回出社する必要があると感じています」と話しました。
短期的なコストよりも、中長期的に共に働く上で相互にメリットがあると判断し、今後も継続していきます。
中小企業だからこそできる柔軟な雇用
島田さんは自社に対して「小さな会社であるからこそ力のある障害のある方を採用でき、システマチックになりすぎず、うまくいっている気がします」と述べました。
さらに、大手の大企業より法定雇用率を気にしない中小企業の方が、障害者雇用に向いていると考え「労働力不足の日本ではこれからますます、公的制度に囚われず戦力として活躍できる人材を採用すべきです」と強調していました。
島田さんはいまの福祉制度に限界を感じ、「このままでは10年ももたないのでは」と感じています。
制度に依存した事業モデルはいつまでも続かない。今後は「当たり前」としてきた従来の仕組みを前提せず、制度の“外側”で価値を意味出す必要があると語ります。
「自分たちから『こういった取り組みはどうだろか』をアクションを起こし、世間に働きかけること。テクノツールで、これまで外に公表してこなかった制度外の取り組み(障害者の一般雇用やテレワーク)について、社会に発信していきたいです」と明らかにしました。
その時、オンラインの画面上でほほえむ本間さんの表情を見て、パソコンの前だけではとどまらない可能性を感じました。
制度を飛び越えた新しい働き方を示すことができれば、世の中をもっと変えるかもしれません。島田さんの話から明るい未来像が浮かんできました。
編集後記
今回の取材後、偶然ある一本の動画を目にしました。
大学を卒業し、市の職員として採用された車いすの女性。何十社も受けてようやく内定をもらいました。
しかし、介助がなければトイレに行けず、自費でヘルパーを呼ぶと高額になってしまう問題が。「やっと就職できたのに..」と涙を流して語り、とても切なくなりました。
今でもそのような悩みを抱える障害者の人がいる一方、本間さんは彼女が生まれる前から自宅で仕事をしています。同じ社会に生きているのに、この落差は一体何だろうと思いました。
戦力を失わないよう、社会の一員として働くために私たちは何ができるのか。
改めてこの取材で問われていると感じました。
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ライター 飯塚まりな
フリーライター/イラストレーター 近所の人から芸能人まで幅広いインタビューを行う。取材実績は300人以上。 フリーペーパーから始まり、現在はwebメディア、書籍、某タレントアプリなどで執筆。 介護・障がい者施設での勤務経験あり。「穏やかに暮らす」がここ数年のテーマ。
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