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趣味も美容も仕事も「やりたいことを犠牲にしない」。当事者に聞いたセルフ透析のメリットとは

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ライター:aki

腎臓疾患の治療で行う人工透析。その方法のひとつ「セルフ透析」という治療方法をご存知ですか?一般的な「施設透析」と最近増えてきた「在宅透析」の中間にあたる、まだ日本では新しい人工透析の方法です。

実際に「セルフ透析」をされている当事者の方に、透析中にお話を聞かせてもらいました。

カフェのような落ち着くスペースで透析

「今日は前から受けてみたかったパーソナルカラー診断に行ってきたんです」

落ち着いたトーンの間接照明の個室で、黒い革張りのリクライニングソファーに座りながら、うれしそうに話してくれた水野由樹子さん。
表情は明るく、カジュアルなファッションがよく似合っています。
取材にうかがったのは夜の7時台。その日、昼間は仕事を休んで原宿駅の近くまで外出をしたといいます。趣味はゴルフで、多い時には月に5回ほどコースに出ることもあります。

「外見からは健康的に見えるねって言われます」

セルフ透析を実施している水野さん。
セルフ透析を実施している水野さん。

うかがったのは、日本ではまだ新しい「セルフ透析」を実施している、医療社団法人 Oasis Medical・田端駅前クリニック(東京都北区田端)のSDC(Self-care Dialysis Center、セルフ透析センター)。
日本ではまだ数が少ない「セルフ透析」ができる透析センターです。

ゆったりとした革張りのソファの横には130㎝ほどの高さの人工透析の機械があり、直径2㎝ほどのチューブが水野さんの左腕のシャント(※)につながっています。血液透析をしているので、チューブの中には血液が見えますが、人工透析の機械がなければ個室のコワーキングスペースかカフェのような空間です。

※シャント:静脈と動脈をつないで人工透析に必要な血液量を確保するためのもの。シャントに流れている血液から老廃物と水分を取り除くのが人工透析です。

各ブースに設置された間接照明。リラックスできる雰囲気です。
各ブースに設置された間接照明。リラックスできる雰囲気です。

半個室のセルフ透析のブース。普段は水野さんもこちらのブースを利用しています。
半個室のセルフ透析のブース。普段は水野さんもこちらのブースを利用しています。

セルフ透析では、患者自身が機械の操作を行います。センターには、専門のスタッフが常駐しています。機械がエラーを起こしたり、自分自身で対応できないことがあればサポートをしてくれます。

水野さんは、「スタッフの専門性もとても高くて、安心して透析ができます」と話してくれました。

以前の透析では毎回「もう行きたくない」と思っていた

水野さんは、37歳の時に腎不全の診断を受けました。症状がかなり進行している状態と言われ、そのまま入院。まもなく透析治療がはじまりました。

「治療や病気の知識もないし情報収集をする暇もなくて、入院からそのまま透析治療が始まった感じでした」

その後、一般的ないわゆる「施設透析」を1年半ほど続けます。

「15年以上前の話なので、機械や設備も今とは違うせいもあったかもしれませんが、透析に行くと、その日は一日ぐったりしてしまって、すごくだるくなっていました。当時はつらかったです」

この日は個室で取材に応じてくださいました。(個室利用は別料金)
この日は個室で取材に応じてくださいました。(個室利用は別料金)

それを1日4時間、週3回、ずっと続けなければなりませんでした。
また、病気の影響なのか透析が足りていなかったのか、髪はパサパサになり、肌も黒くなってしまうのがつらかったといいます。

「調子はよくないし、時間もかかるし、終わってからもその日一日はぐったりして動けませんでした。それが週三回。人生の楽しみや美容や仕事、すべて捨てなくてはいけないと感じていました」

その後、年齢が比較的若かったこともあり、医師の勧めで腎臓移植を決断します。母親の腎臓を移植し、透析治療をせずに過ごした期間が16年間ありました。
しかし、移植を受けると免疫抑制剤を服用しなくてはならず、その影響でがんのリスクがあがります。水野さんも移植後にがんの手術を3回受けています。

「私の移植した腎臓は長くもったほうなのですが、それでも、ずっと問題が出ないわけではないんです。とうとう限界がきて約1年前にまた透析をはじめることになりました」

情報収集でたどり着いた「セルフ透析」

水野さんは前回の透析で苦しんだ経験から、次の透析までに自分に合った治療法を探そうと決めました。一度人工透析をして16年が経過したところ、透析に再突入かと考えたとき、またあの希望のない日々が始まるくらいなら死んだ方がマシと感じたためです。
今度は暗く重い気持ちにならないように、自分で透析を管理できる方法がないか調べてみると、セルフ透析という選択肢に気づきました。
移植は2回まで受けられますが、水野さんは、ドナー候補となる家族に身体的な負担をかけたくありませんでした。移植をしない場合、残る選択肢は透析治療です。水野さんは、最初は「在宅透析」を検討しました。

人工透析治療は、収入・年齢によっても異なりますが、国の医療費助成制度を使えば自己負担額は最大でも月に2万円までです。さらに、自治体によっては自己負担分を助成する制度があります。ただ、制度上、透析の回数や時間が制限されてしまうこともあるようです。いろいろと調べてみると、人工透析治療で肌や髪に影響が出るのは、透析が足りずに老廃物が十分に排出されていないことが原因の場合もあるということを知りました。

「前回の透析時の不調は、回数や時間が足りていなかったんじゃないかと思いました。それで、いつでも透析ができる在宅透析を考えました」

在宅透析であれば、回数や時間の制限は特にないと知り、具体的に検討をはじめます。しかし、在宅透析にはいくつかの条件がありました。

まず、同居家族などが治療についてのトレーニングを受ける必要があります。さらに、何かあったときに対処ができるように、患者が透析時には必ずその家族が在宅しなくてはなりません。また、透析の機械を自宅に設置します。透析に使用する水道や電源など、自宅の工事が必要な場合もあります。機械を設置したり、医療物品を保管するスペースも必要です。

水野さんは高齢の母親と二人暮らしでしたが、隣に住む兄夫婦が自宅の改築も含めて協力を申し出てくれました。

「在宅透析の方向で具体的に考えはじめていました。そのとき、同じく透析をしている友人が、セルフ透析を教えてくれました」

SDCの受付わきのカウンセリングルーム。ここで個別の相談などもできる。
SDCの受付わきのカウンセリングルーム。ここで個別の相談などもできる。

透析をしながら、仕事もごはんもOK

実際に説明会に参加し施設見学をした水野さんは、「これしかない」と思いました。

「不安はなかったですね。早く開始したくて、参考動画を見て機械の操作の自主トレをしていたくらいです(笑)。私が覚えるのが早かったので、スタッフに驚かれました」

田端駅前クリニックのSDCでは、Wi-Fi環境も整っており、セルフ透析中にオンラインで仕事をしたり、通話も可能です。水野さんの会社も以前からテレワークを導入していたため、会社に許可を取って、日中に透析をする日はこのセンターで仕事をしています。

透析中は周囲が気にならないような半個室の透析スペース。
透析中は周囲が気にならないような半個室の透析スペース。

「食事を持ち込んで食べることもできますし、今日のように夜間に透析をする日なら、サブスクで映画やドラマを見たりして過ごしています。透析中の時間を自分の時間として使えることは、心理的にも本当に大きいです」

また、セルフ透析で透析回数を週に5回にすることで、以前は気になっていた肌や髪の調子が悪くなることもなく、美容やファッションも楽しめているといいます。
では、セルフ透析にデメリットはないのでしょうか?

「機械の操作を覚えて自分で準備と片づけをしなくてはいけないので、それが不安な方には向かないかもしれないです。
あとは、透析中の血圧測定も自分でします。体重管理もある程度自分で意識をする必要があるので、そうした管理が苦手な人は難しいかもしれません。
でも、一番はまだ施設の数が少ないことですね。通える範囲にセルフ透析の施設がなければ、選択肢にはなりませんから。このセンターの場合は送迎もないので、移動に困難がある方も難しいかもしれません」

70代になってもゴルフを楽しみたい。

セルフ透析をできる施設が増えて、透析治療の選択肢としてあたりまえになってほしいと語る水野さん。

今は人生を楽しんでいて、これから先の夢もあります。

「先日は三泊四日で家族と北海道旅行に行きました。旅行中に1回は透析が必要だったので、自分で旅行先のクリニックを予約し、データの共有だけこちらのセンターにお願いしました。
同じような方法で海外旅行に行かれている方もいるので、私もいずれ行ってみたいと思っています。

それと、70代になっても、今の仕事を続けて、ゴルフも続けていたいですね。
あとはできれば、ずっと趣味を一緒に楽しめるようなパートナーを見つけたいかな」

明るく取材に応じてくださる水野さん
明るく取材に応じてくださる水野さん

セルフ透析を実施している、田端駅前クリニックのセルフ透析センターのサイトは以下のリンクから。
SDC(セルフ透析センター)


参考サイト)
知っておきたい「シャント」のこと|ドクターに学ぶ透析(バイエルベターライフナビ)
透析治療にかかる費用 | 医療費について(一般社団法人 全国腎臓病協議会)
利用できる社会保障・福祉制度 | 腎臓病について(一般社団法人 全国腎臓病協議会)

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ライター aki

ASDの長男と、たぶん定型発達の夫と暮らしています。私自身は診断をうけていませんが、おもちゃを一直線に並べて遊ぶ子どもではあったらしいです。                Twitter: https://twitter.com/akiko_m_psy10

ブログ
https://note.com/aki_m_psy10
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