【障がいがあってもステキな結婚式はできる!】 障がい者が結婚式の準備をするときの心配事を 専門のウエディングプランナーに聞いてみた
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ライター:Media116編集部
自分のことを理解してくれるパートナーと新しい人生を歩む結婚は、障がい者やその家族にとって、大きな転機です。新たな門出に、ささやかでもお祝いのパーティをしたいものです。でも実際には「どこに相談に行っていいかわからない」「ホテルや結婚式場でもできるのか」など不安や心配があるのも事実。そこで、障がい者の結婚式について、障がい者ウエディングのプロデュースをしている専門プランナーの木許郁子さんに、話を聞いてみました。
結婚式会場は、時間に制約のないバリアフリーの会場を探して
――ホテルや式場でも結婚式はできる?
多くの会場で、受け入れ可能と言われると思います。ただ、準備の段階になって不都合が出てくることもあります。結婚式を1日に何件も行う会場だと、時間の制限があるのが困りますね。障がいがある分、移動や準備に時間がかかるので、1日に1組しか結婚式を行わない会場やレストランで、バリアフリーのところを探すのが良いと思います。
――会場の候補はどうやって見つければ?
ネットで気になる条件を入力し検索するなどして、探してみてください。例えば「沖縄 京都 軽井沢」などの地域名と「バリアフリー 結婚式」といったキーワードを掛け合わせて検索する、気になる施設がある場合は「明治神宮 結婚式 バリアフリー」といった検索をするのもよいと思います。
どんな会場でも見学は必須。直接問い合わせるのが不安なら、結婚式場の専門カウンターや私たちのようなフリーランスのウエディングプランナーに相談してもらえれば、会場の紹介や見学の手配などもスムーズです。
――いつ見学に行けばいい?
結婚式場の展示や模擬挙式などがある大きなブライダルフェアの時はスタッフが忙しく、込み入った相談ができません。フェア以外の日程で時間をかけて見学できる日を選び、詳しく質問するのがいいと思います。
自分たちに必要な設備やサービスをプランナーに伝えよう
――結婚式の準備で特に配慮が必要な点は?
車いすの方の場合は、まず衣裳ですね。ドレスは頭からかぶって着るワンピースタイプならレンタルもできます。男性用のスーツは体に合わせて作っておくとその後も使えるので、オーダーがおススメ。挙式場の祭壇や高砂席には段差があるので、スロープを設置できるかどうかもポイントです。スロープが会場にない場合は、レンタルショップなどで借りられます。
視覚障がいの場合は、会場のテーブルを角のあるものにすると席の配置などを確認しやすく安心です。点字を入れたペーパーアイテムを作ってくれる会社もあります。
聴覚障がいの場合は、手話通訳者の手配をしましょう。手話学会などでお願いできると思います。盲導犬や介助犬を連れているゲストを招待する場合は、犬が休める場所を確保してあげてください。
多目的トイレの数や場所、オストメイト対応かなども確認を。
また、障がいの程度によりますが、必要に応じて看護師や理学療法士など医療関係者に待機してもらうことも考えましょう。お世話になっている施設の人に相談すれば、紹介してもらえると思います。
ゲストや自分たちの状況に応じて何が必要かをリストアップして、プランナーに伝えることがポイントです。具体的な準備はプランナーの仕事なので、まずは相談してみましょう。
高いお金を払わなくても、結婚式はできる!
――結婚式はお金がかかるのでは?
結婚式の費用は平均で300~400万円で、障がい者の平均収入と比べると高過ぎて結婚式はできないと思う人も多いと思います。
結婚式をリーズナブルに行う方法として、会費制という手があります。ゲストを招く際に会費を案内し、一人2万円~2万5000円の会費をもらって行うパーティです。ゲストを40名程度にすれば会費の中で、料理や会場使用料、装花、司会者などほぼ賄えるため、自己負担額は衣裳代と諸経費で20万円以下に抑えられます。会費制ウエディングを導入しているレストランも増えていて、会場を上手に選べば、高額な出費をしなくても結婚式はできます。
――ゲストが少ない場合は?
40人も呼ばないときは、教会や神社で挙式のみをするというのもお勧めです。横浜の本牧神社では車いすでの挙式も受け付けています。写真を撮るだけのフォトウエディングでも思い出になります。司式者が執り行うシビルウエディングなら、公民館などどんな場所でも結婚式ができます。いずれも10~20万円程度の費用で実現できます。
今からでも遅くない! 結婚式でお世話になった人に感謝を伝えよう
――結婚式をしないまま、年月が過ぎてしまいました…
障がいのある夫婦の中にはそのような方が多いんです。少し前までは、バリアフリーの普及率も低く、障がい者の結婚式をサポートする体制もほとんどありませんでしたから。結婚式は、新婚でなくてはできないものではありません。最近は「アニバーサリー婚」といって、結婚後5年や10年などの節目で改めて夫婦の絆を確かめるための結婚式も行われています。結婚記念日に、夫婦どちらかや友人たちが仕掛ける形で「サプライズ婚」という手もあります。記念写真を撮るだけのフォトウエディングのために会場に来てみたらゲストが待ち構えていて…というシチュエーションは、最高の記念になります。
障がいのある方たちの結婚式をプロデュースしていて実感するのは、親御さんが本当に心の底から喜ばれているということです。主役になるのが恥ずかしいからと結婚式をためらうのではなく、親御さんやお世話になっている人たちにふたりから感謝を伝えるために、ぜひ結婚式を挙げてもらいたいなと思います。
プロフィール
木許郁子さん
障がい者ウエディングレゼルクレール主宰
フリーランスウエディングプランナー
長年、音響・司会手配の会社を経営しつつ自ら音響PAやブライダルピアニストとして活躍。現在はフリーランスのウエディングプランナーとして活動。2014年から「障がい者ウエディング」をサポートするブランド『レゼルクレール』を主宰。自らサービス介助士の資格を取得し、障がい者の結婚式をプロデュースしている。ブライダルの専門学校で障がい者ウエディングのノウハウを教えるなど、障がい者ウエディングへの理解を広める活動も行っている。
レゼルクレールHP http://presea.jp/
構成・文/稲垣幸子
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ライター Media116編集部
障がいのある方のためのライフスタイルメディアMedia116の編集部。障がいのある方の日常に関わるさまざまなジャンルの情報を分かりやすく発信していきます。
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