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ベビーカーと酷似で誤解されがち・・・「子ども用車いす」認知度アップの取り組みと現状
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ライター:Media116編集部
認知度の低さから、周囲の心ない態度に傷つく利用者が多いという「子ども用車いす」。最近は、報道番組、新聞、ネットニュースなどでも取り上げられるようになってきましたが、まだまだごく一部の人にしか知られていないのが現状です。
そこで今回は、障がいのある子どもとその親の豊かな生活を目指し活動している「一般社団法人mina family」の代表理事・本田香織さんにお話をうかがいました。本田さん自身も障がいのあるお子さんがいて、日々、子ども用車いすを利用しており、利用者の立場からリアルなお話を聞かせていただきました。
子ども用車いすとは、どんなもの?
子ども用車いすは、背もたれがあり介助者が操作するタイプの車いす「介助型車いす」の中の一つ。「福祉バギー」とも呼ばれ、一般に出回ってきたのはここ15年ほどのことだそうです。
介助型車いすの特徴は、以下の2点。
<1> 介助型車いすの利用者は?
通常の車いす(自走式車いす)と違って、自分で車いすを操作しない方(または場合によってそのような状態になる方。例:てんかん発作後の昏睡など)が主に利用しています。操作をするのは介助者です。
乳幼児から高齢者まで、肢体不自由(四肢や体幹に障害がある方)をはじめ、てんかん発作や多動・パニック障害などがある方が利用しているため、子ども用でもベビーカーより大きいものが一般的。フレームも大きく丈夫にできています。
▲子ども用車いすとベビーカーの比較(左がベビーカー、右が子ども用車いす)
<2> 介助型車いすの機能は?
背面は頭より上まであり、多くの場合「シーチング」といって、身体の状態に合わせてサポート機能がカスタマイズされています。首据わりのない方に首サポート、側弯(身体の変形)のある方の矯正サポートなどです。またリクライニングやティルト機能などがあるため、以前はストレッチャーで移動していたような座位の取れない方や、眠っている方なども利用することができます。
▲子供用車いすの全体像
成人や高齢者も利用していますが、その場合は見た目で車いすだとわかるので、「車いす利用者として取り扱われない」ことは稀です。そのため、「一般社団法人mina family」では誤解を受けやすい乳幼児の利用に範囲を限って、介助型車いすを「子ども用車いす」の愛称で呼び、啓発を行っています。
子ども用車いすの販売価格は、10万円~40万円程度と高価。身体障碍者手帳などを持っている場合は公費補助を受けて購入しますが、公費補助が受けられないお子さんでも車いすを必要とする場合があり、子ども用車いすではなく安価な市販のベビーカーで代用しているケースも多々あるとのこと。
心ない中傷や批判は日常茶飯事
子ども用車いすは、パッと見がベビーカーに似ていることから、車いすであることを認識されず、さまざまな場面で誤解され、心ない中傷や批判を受け、人知れず傷つき、辛い思いをしている利用者がたくさんいるといいます。
本田さんご自身の体験をうかがうと、
「特に多いのは中高年の方からの善意による子育て指導です。
『大きいんだからもう歩けるでしょ、足が弱くなるわよ』
『自分で歩きたいだろうに可哀そう。虐待よ』
というような批判の言葉は、数えきれないほど耳にしてきました。また、わざわざ車いすを追い越してシェードの中まで覗き込み、
『赤ちゃんかと思ったら大きな子が乗っててビックリしたわ』
と言われたこともあります」。
また、施設内などで利用させてもらえないことも多いそう。
「特に困るのは、病院での『院内ベビーカー持ち込み禁止』に引っかかってその都度注意されること。他にも、合同の乳幼児健診などで『ベビーカー置き場』が設置されている場合でも車いすを持ち込むと、注意されたりジロジロ見られたりしました」。
公共の交通機関での不便もあります。
「駅や施設などで車いすリフトの利用を断られたり、障害者用駐車スペースで利用をとがめられたりと、自走式車いすであれば普通に使えるサポートがとても利用しにくいのが現状です」。
ご自身だけでなく「病院で、リハビリ施設で、ひっそりと泣いているお母さんを何人も見てきました」と本田さんは話します。
「ベビーカーじゃない!子ども用車椅子の存在を知って!」
「知らないこと」による誤解や批判を取り除きたいと、「一般社団法人mina family」では独自に「こども車いすマーク」や啓発ポスターを制作。啓発ポスターは既に5000枚以上配布しており、各役所や公共施設(市役所、JR東京駅など)、商業施設など(大阪「海遊館」など)、病院などに掲示されています。
▲子供用車いすマーク
▲子供用車いす関連の啓発ポスター
また、クラウドファンディングで広くサポートを募ったり、永田町での陳述など行政への働きかけも行っています。
最近では、子ども用車いすにヘルプマーク(援助や配慮を必要としている方々が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることで、援助を得やすくなるよう作成したマーク)を付けている人が増えていますが、より子ども用車いすであることをわかりやすく示すという意味でも、「こども車いすマーク」は有効です。また、マークは付けているだけで子ども用車いすの啓発にもつながります。
「一般社団法人mina family」以外にも、全国のさまざまな団体や企業が啓発活動を行っており、例えば、ウサギのキャラクター・ミッフィーちゃんで有名なディック・ブルーナ氏と子供服ブランドのブーフーウーがコラボレーションし、車椅子に乗った女の子「ろってちゃん」を用いたステッカーやパスケースなどを制作、販売しています。
本田さんのお子さんの車椅子には、自身が手がけた「こども車いすマーク」キーホルダーが、キーホルダーの裏面には、ろってちゃんのシールが付いています。
▲子供用車いすマークのキーホルダー
見た目やマークは関係ない 誰にでも手を差し伸べられる社会に
今後は、「電車やバスでの介助をお願いしやすくするよう、ポスターの掲示や職員向けのセミナーを開催したり、ショッピングモールや病院へ子ども用車椅子マークを掲示してもらってそれをマッピングし、気兼ねなく子ども用車椅子の利用者が出かけることができる環境を整えていくことが目標です。特別扱いや優先を求めている訳ではなく、ただ「車いす」の一種として取り扱っていただければ」と本田さん。
とは言え、公共交通機関へ啓発のためのセミナー実施をお願いしても「検討します」という回答がほとんどとのこと。また、ショッピングモールや病院などにマーク掲示をお願いしても「ユニバーサルマークでなければ掲示できない」と断られるなど、その道はなかなか険しいようです。
そこには、「子ども用車いすの利用者数が具体的になっておらず、身近なことと感じられていない」という課題が。全国の利用者の実数調査などを行い、データを用いて必要性を訴える施策にも取り組んでいく必要があります。現在mina familyによる試算では、現在国内で8~10万台ほどの子ども用車いすが街で使用されているのではないかということで、決して遠い世界の話ではありません。
子ども用車椅子を使っている子どもだけでなく、外見では判断できない障がいや病気のある人はたくさんいます。だからこそ
「見た目やマークだけで判断するのではなく、常にお互いあたたかい気持ちを持って譲り合えるような社会になることを祈ってやみません。障がいや病気があっても希望を持って暮らせるような、あたたかく懐の深い社会を作れるよう、私自身も社会の一員として努めていきたいと思います」。
そんな想いで、本田さんはこれからも活動を続けていきます。
※「こども車いすマーク」や啓発ポスターは、「一般社団法人mina family」のWEBサイトよりダウンロード可能。また、「こども車いすマーク」のキーホルダーも同サイトトップページのショッピングサイトのリンクバナーから購入可能です。
一般社団法人mina family WEBサイト
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障がいのある方のためのライフスタイルメディアMedia116の編集部。障がいのある方の日常に関わるさまざまなジャンルの情報を分かりやすく発信していきます。
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