発達障がいの私が「自立とは依存先を増やすこと」の言葉通りに動いたら生きやすくなった話
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ライター:森あおい
みなさん、こんにちは。発達障がいのある森あおいです。突然ですが、脳性麻痺の障がいのある熊谷晋一郎さんの有名な言葉「自立とは依存先を増やすこと」を知っていますか?
全国大学生活協同組合連合会のインタビューで、熊谷さんはこの言葉が生まれた経緯を語っています。「大学の近くに下宿していたのですが、部屋に戻ると必ず友達が2〜3人いて、お帰りと迎えてくれました。いつの間にか合い鍵が8個も作られて、みんなが代わる代わるやってきては好き勝手にご飯を作って食べていく。その代わり、私をお風呂に入れてくれたり、失禁した時は介助してくれたりしました。それまで私が依存できる先は親だけでした。だから、親を失えば生きていけないのではという不安がぬぐえなかった。でも、一人暮らしをしたことで、友達や社会など依存できる先を増やしていけば、自分は生きていける、自立できるんだということがわかったのです。「自立」とは、依存しなくなることだと思われがちです。でも、そうではありません。「依存先を増やしていくこと」こそが、自立なのです。これは障がいの有無にかかわらず、すべての人に通じる普遍的なことだと、私は思います。」
この言葉を聞いた時、そういえば昔から私は依存先を増やして、自分の生きやすい環境を作ってきたことに気づきました。障がいの有無にかかわらず、どこか生き辛いという悩みを抱える人にとって何か参考になればと、私の3つのライフハックを紹介したいと思います。
⒈カウンセリングを一つの居場所とする
中学生時代、ふとしたことから学校に行けなくなりました。その時に出会ったのが、スクールカウンセラーでした。先生でも、親でも、友人でもない、圧倒的な第三者であるカウンセラーには「これを言ったら今後の関係が心配」などと気にする必要がなく、自分が何を考えているか、それが言葉や文章にならなくても聞いてくれる人がいる安心感に救われたのを覚えています。私はこれを機に高校生、大学生、社会人になっても気軽にカウンセリングを利用するようになりました。
美味しいものを食べたい時はレストランに行くように、髪の毛が伸びた時は美容院に行くように、気持ちが塞ぎ込んだ時はカウンセリングに行く。親だから、社会人だから、など今まで背負ってきたものを下ろして、自分に向き合うためにカウンセリングに行くことは、弱く恥ずかしいことではありません。むしろ自分の弱さを認めながら、自分で立とうとする強さを持っている人だと思います。心のプロであるカウンセラーを頼ってみる選択肢を持つのも一つの依存先を増やす方法です。
⒉複数の拠り所をつくる
「あなたがいないとダメ、なんで理解してくれないの」と泣きながら友人に言われたことがあります。彼女は自分のことを私だけに打ち明け、依存していました。特に、悲しい辛いなどの感情を押し付けられると、私まで気持ちが沈んでしまうことがあり、最終的に彼女との関係は壊れてしまいました。
私はこの経験を通して、一つの依存先の危うさを痛感し、複数のコミュニテイに属することを大切にするようになりました。複数の拠り所があることで、大切な人を失うような過度な依存をしなかったり、多角的な視点を身につけられます。また、多くの人と関わるのは面倒じゃない?と思う人もいるかもしれませんが、一つの集団に居続けることに固執せず自分らしく振る舞えることも複数の拠り所の大きなメリットだと思います。
⒊便利なツールを利用する
私はADHDの特性の中でも、気が散りやすく忘れっぽいことが特に悩みです。例えば、仕事中に行きたいレストランを思い出し、ついネットサーフィンにハマる、スマホや財布など大事なものに限って無くす、自分のせいで人に迷惑をかけてしまったことも多々あります。仕事効率が落ち、情けない気持ちが生まれ自尊心がすり減ったりと、悪いことだらけ。明確に障がいと診断されてなくても、こういうことに困っている方は多いかもしれません。
そこで私は、”気が散ることを止めるのではなく、散っている気をなるべく拾えるように”
ツールに頼ることにしました。例えば、待ち合わせの場所には即座にGoogleマップにマッピング、目の前の仕事を邪魔するほど湧き出てくるアイディアは起動の早いメモアプリに書き起こす、予定やタスクを視覚化し頭にインプットしやすくするため時間単位でGoogleカレンダーで管理、電車では降り過ごさないように降車時にアラームをかける、スマホと財布には紛失防止タグをつけるなど。自分の頭で出来ないことがあるなら、もっと賢く便利なものに依存し、その代わりに脳の空き容量は別のことに使うように心がけています。
もちろんどうしても先延ばし思考になる時や、体調がすぐれない時に、以上の3つを試しても全部がうまくいくわけではありません。もともと強がりで、人に頼る方法がわかりませんでした。今でも自分の苦手に向き合い、生き辛さを感じる時もあります。
でも自分が頼ることができる場所や人、モノが限られていたままだと、限られた依存先を失う怖さと常に向き合わなければいけなかったり、自分の感情の処理が苦手なままだったり、何かに挑戦するのをためらっていたかもしれません。少しでも生きやすく、そして自立するために、依存先を増やすことは大きな意味があると思います。
今回ご紹介した3つのライフハックを次回から1ずつ詳しく書いていきたいと思います。いま困難を感じている方の少しでもお役に立てれば幸いだと思っています。
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ライター 森あおい
社会人になる直前に発達障がいの診断を受け、障がいに興味を持つように。自らトラブルの波を起こし、その中で溺れそうになりながらなんとか生きてきた人。障がいだけでなく、5人に1人と言われているHSP、生理前の不調であるPMS/PMDDとも向き合う日々。「生き辛さを抱える人の居場所や選択肢をつくりたい」をテーマに執筆活動を行う。
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