寝たきりでも働きたい!近い未来「OriHime(オリヒメ)」が実現する就労のカタチ
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ライター:Media116編集部
皆さんこんにちは!Media116編集部です。2019年10月7日(月)~10月23日(水)まで大手町3×3Lab futureにて開催されていた「分身ロボットカフェDAWN」へ行ってきました!身体が不自由で外出しての就労が困難な方が「パイロット」となりロボットを動かし、働くことができる!それって一体どんなカフェ?今回はその様子を取材してきました!
「OriHime(オリヒメ)」ってなに?
株式会社オリィ研究所が開発した「分身ロボット」です。オリィ研究所は「人類の孤独の解消」を目指すチームで、孤独の要因となる「移動」「対話」「役割」の障がいを取り除くテクノロジーを開発しています。そのプロダクトの中心として分身ロボット「OriHime(以下:オリヒメ)」「OriHime-D(以下:オリヒメディー)」があります。そのオリヒメ・オリヒメディーによってたとえベッドで寝たきりであっても、会いたい人に会い、行きたいところに行けて、社会に参加できる未来が実現できるかもしれないというのです!
こちらが分身ロボットOriHime(オリヒメ)です。
オリヒメにはカメラ・マイク・スピーカーが搭載されていて、インターネットを通じて操作が可能になっています。生活や仕事の環境、入院や身体障がいなどによる「移動の制約」を克服し「その場にいる」ようなコミュニケーションを実現します。例えば学校、会社、離れた場所など「移動の制約がなければ行きたい場所」にオリヒメを置くことで、周囲を見回したり、聞こえてくる会話にリアクションするなどまるで「その人がその場にいる」ようなコミュニケーションを可能にするという近未来的なロボットです。
そしてこちらがOriHime-D(オリヒメディー)です。
テレワークをしている人が遠隔で接客やものを運ぶなど、身体労働を伴う業務を可能にする全長約120cmのOriHimeの研究機です。前進後進・旋回ができ、上半身に14の関節用モータを内蔵しています。簡単なものを運ぶことができるほか、自由なモーションを作成してボタン操作で再生する機能、ライントレースや衝突防止機能も実装されています。これによりカフェや受付などの接客やビル内での案内、作業現場を見回りながら指示をだすなど、より身体性のあるテレワークが実現可能になります。
「OriHime」にかけるパイロットたちの想い
今回のカフェは10月7日(月)~10月23日(水)まで、11時~17時までの営業でした。11時、12時、13時、15時、16時の5回のターンがあり、各回50分の入れ替え制です。
この実験カフェでは全国に住むパイロットたちがオリヒメでオーダーをとり、オリヒメディーでドリンクを運び、お客さんとの会話もするといいます!
こちらが今回の30名のパイロットたち。
カフェの中はこんな感じです。各テーブルにオリヒメが設置されています。
当日は無料観覧も開催されていて、見学に来られている方も多く大賑わいでした。ドリンクメニューはホットコーヒー、アイスコーヒー、オレンジジュース、ヘルシア緑茶の4種類でまとめてオーダーする形だそうです。
「こんにちは!」
席に着くとオリヒメが話しかけてきました。私のテーブルの担当は玉田さんという脳脊髄液減少症のある男性でした。
「たまちゃんと呼んでください!」
たまちゃんはそう明るく言います。
オーダーをとった後、たまちゃんと会話することができました。
編:たまちゃんは今日どこからオリヒメを動かしているんですか?
「神奈川からです!」
多分実家から動かしているのでしょうか。
編:期間中はどれくらい働いているんですか?
「今週は毎日出勤しています。シフトは日によって変わります。」
編:オリヒメを動かすのは難しいですか?
「僕は小さい方のオリヒメ担当なので、3時間くらいトレーニングすれば大丈夫でした!」
小さくとも「動かしている感」があるとのこと。日常的には使用しておらず、このプロジェクトではじめて使うことになったそう。使ってみての感想を聞くと、
「単にマイクで話すより、見えたり動けたりするので楽しいです!」
と明るく答えるのでした。
床をよく見てみると黒いラインがあり、オリヒメディーはこの黒いライン上を動きます。各所にQRコードがあり、それを読みとって操作をしているようです。
お待ちかね、オリヒメディーがドリンクの提供へ動き出しました。
黒いラインに沿って各所へドリンクを提供しに行きます。「近未来的」そんな表現しか出てこなくなるくらい、この光景に圧倒されて語彙力が奪われました・・・。
どんどんドリンクが届けられていく中で、試験的に給仕パフォーマンスが始まりました。普通は届けられたドリンクは各自でとるのですが、今回はオリヒメディーの操作だけでドリンクをテーブルに乗せるというパフォーマンスです。
「大丈夫かな?こぼしちゃわないかな・・・」という心配をよそに、オリヒメディーはゆっくりと、慎重にドリンクをテーブルに乗せていました。上半身に14の関節用モータが内蔵されているというだけあって動きがスムーズです。
私のテーブルにもドリンクを持ったオリヒメディーがやってきました。担当してくださったのは山本さんという難治性の重症筋無力症のある女性です。彼女のプロフィールには病気のため仕事ができなくなったことが書かれていましたが、「まだ私にも出来ることは沢山あるはず!」と、とても前向きな意気込みも書かれていました。
「よりちゃんと呼んでください!」
編:よりちゃん、今日はどこから操作しているんですか?
「福岡からです。福岡は今日は雨です!」
天候の違いを聞くと、ああ、こんなに近いのに本当に遠くにいるんだなぁと感じました。
編:オリヒメディーを操作してみてどうですか?
「オリヒメディーは腕と頭以外は動きません。でもカメラから幅広い範囲がクリアに見えます。イメージでいうとガンダム的な感じですかね?(笑)乗りこなすまでは簡単でした。黒いラインに沿って行くのでオペレーションは非常に簡単で、誰もが使いやすく、見やすいんです。このままどこにでも行けちゃいそうな気がします!散歩に行ってしまいたいくらい。」
そうよりちゃんは笑っていました。
ガンダムと言われると、操作したことのない私達でもなんとなくイメージがつきそうですね。
編:「オリヒメを通じてどんな出会いや経験ができるのかわくわくしている」とプロフィールにありましたが、実際はどうですか?
「一番嬉しかったことは、オリヒメにのってチームで働くということです!仲間を得たということが心の弾むことでした。エネルギーになった、という感じですね。社会に参加している感じがします。」
「緊張しながらお客さんと話すことも家では経験できないことだったりします。元気になって働けているような感覚を何年かぶりに感じられています。接客ってエネルギーがいるからできるかな?と自信がなかったのですが、ひとつひとつ、できた!を積み重ねていくことで私もできるんだなと思いました。」
チームで働くこと、社会の一員として働くこと、「できた」という経験を積み重ねること。たまちゃんやよりちゃんのように、身体が自由に動かせない方の「普通」の願いをオリヒメが実現させたことには大きな意味があるのだと思いました50分間という短い時間ではありましたが、今後オリヒメが更に進化を遂げて、学校や会社に普通に溶け込んでいる未来…それを想像して心が躍るには十分な時間だったのでした。
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