「障がい者と出産」…当事者の想いとリアルな声
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ライター:わに
皆さんこんにちは、ゼネラルパートナーズでライターをしているわにです。私はてんかんとそれに不随する器質性気分障がいがあります。今回は自身の体験談とゼネラルパートナーズ障がい者総合研究所の調査結果を交えて「障がい者と出産」について語っていきたいと思います。
「5%」それが持つ意味
私は健常者の夫と結婚して2年目になります。そろそろこどもが欲しいな、と考えている頃です。「こどもが欲しいといっても、遺伝や薬の影響が心配…」そんなことを思い、ある日担当医にこどもが欲しい事、そして遺伝や薬の影響を心配していることを伝えました。しかし、その答えは私の気持ちを軽くするものではなかったのです。
(※ここからはあくまで私の担当医の話をそのまま書いているので、その他の医師や文献では違う可能性があることをご理解ください。)
「まず、てんかんは遺伝しません。」そう担当医は言いました。
「精神障がいが遺伝するかに関しては一言では言えない部分があります。」それはどうしてかと私は担当医に尋ねました。
「精神障がいは遺伝しません。しかし、こどもは精神障がいのある親の性格を受け継ぐことにより精神障がいを発症する確率は上がります。環境にもよりますが、外的要因に弱かったりすることで発症する可能性は健常者の子よりも高いでしょう。」
続けて担当医は薬の副作用についてこう言いました。
「通常、健常者がこどもを産んでそのこどもに障がいがある確率は3%。あなたの場合、薬を飲んでいることで5%程度に確率はあがるでしょう。」
「5%」
たった2%の差じゃないか、そう思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし私にはそのたった2%が怖くて怖くてたまらなかったのでした。
「私のせい」
担当医の話を聞いている時、私の脳内はこの一言に占拠されていました。
私が障がい者だから、健常者の夫との間のこどもが障がいを保有する確率が高くなる。障がいがあるから悪いわけではないと頭で理解はしつつも、こどもには自分のように辛い想いをしてほしくない、障がいがあるかないかで言ったらない方が良い。私はそう思うのです。
障がいがあるからこそ得ることができたこと、考えが深まったこと、見える世界が変わったことなど、健常者が経験できないような経験を沢山してきました。しかし、障がいがなかったらこんな思いはしなかった、障がいがあるからこれができない、障がいがあるから選べない選択肢がある。それも事実なのです。
30歳になったことで一層こどもを持つか否かの選択を迫られる、プレッシャーを感じるのです。家族や友人、夫、誰かが圧をかけているわけではありません。自分自身が、自分を責め立てているのです。出産のことを考える時には、いつもいつも、自責の念で涙が溢れます。
アンケートからみる当事者のリアルな声
ゼネラルパートナーズが運営する「障がい者総合研究所」では「障害当事者に聞いた出産・子育てに関する意識調査」を行いました。その結果を交えながら、実際に当事者はどう感じているのか?皆さんと一緒に見ていきたいと思います。
結論からお伝えすると、調査結果のサマリーは以下の3点です。
〇子どもがいない人は約7割。そのうち約半数が「子供を授かりたい」と考えている。
〇出産・子育てにおいて、約7割が「障がいはハードルになる」と回答。
〇障がいによるハードルへの印象は、出産・子育て前後で変わらない人が最も多い。また、約3割は「想像していたよりもハードルは低い」と感じている。
Q現在、子どもはいますか?
Q将来、子どもを授かりたいと思いますか?
(子どもがいない人のみ回答)
Q子どもを育てるうえで、障がいはハードルになると思いますか?
出産・子育てにおいて、「障がいはハードルになる」と回答した約7割の方の意見の中にはこのようなものがありました。(一部抜粋)
・子どもにも障がいが出るおそれ。親や子ども自身に障がいがあることでいじめや差別を受ける恐れがある(女性/うつ)
・我が子が何らかの障がいや病気を罹患していれば自分の障がいのせいだと自分を責められずにはいられない。ましてや、自分の障がいが外見に及んでいるものであれば、なおさら自分を責めると思う(男性/体幹機能障がい)
・遺伝の可能性がある場合、障がいを受け継いだ子へのケアは十全に行わなければいけないので通常より経済的な余裕を持つ必要があるし、自身が子への配慮を行えるかどうかを考える必要もあるため(男性/発達障がい)
・若い時から腎不全で治療しているので、子どもに遺伝しないか心配。また妊娠中に透析をどれだけするのか、それにより仕事にどれだけ影響が出るのか分からないので不安(女性/腎臓機能障がい)
コメントで一番多かったのは「障がいの遺伝」。また、女性の場合妊娠中の服薬の変化に体調がついていくかということもハードルになりうるという結果でした。こどもを産むということはもちろんリスクも伴います。その上で自分自身が妊娠・出産に耐えうるのか不安に感じるようです。
Q障害によるハードルへの印象は実際に子どもを授かった前後で変わりましたか?
(子どもがいる人のみ回答)
■ 想像していた通りだった
・義理の父母が協力してくれた。子どもにとっても親以上に存在感があるようで、良い環境で子育てができたと思う(女性/視覚障がい)
・出産直後は、パニック障がいで発作が出ることはそれほど頻繁ではなかったので、基本的に障がいゆえに大変だったことは無い。子どもと接している時間はむしろ癒された(男性/神経症・不安障がい)
・現在は良い医者を見つけ、以前より体調は安定しているので、育児に費やす時間はそれほど負担には思わない(30代/男性/神経症・不安障がい)
■ 想像していたよりもハードルは低いと感じた
・相手の理解と協力次第だと思います(男性/下肢機能障がい)
・両親のサポートや保育園の優先預かりなどのサポートがあり無理なく育児ができた。ただ、周りの理解やサポートがなければ無理だったと思う(女性/腎臓機能障がい)
・子どもが健聴だったので、他の健常者との会話では通訳になるなどいろいろ助けてくれる(女性/聴覚障がい)
■ 想像していた以上にハードルは高いと感じた
・子どもとパートナーの行動についていくのが大変。遊びに行ける場所が限られてしまう(男性/体幹機能障がい)
・視覚障がいなので子どものとっさの行動に精神をとがらせていなければならず精神的にも負担(女性/視覚障がい)
・障がいのある子どもに対する支援は増えているが、障害のある親に対する支援はほとんどないのが現状。保育園や学校の行事に参加できないなど、ハード面のバリアが多すぎます(女性/上下肢機能障がい)
・親としての威厳が見せられない。幼少時の子どもに病気のことを理解するのは難しいと思う。しつけができない。見本となれない(男性/うつ)
「想像していた通りだった」「想像していたよりもハードルは低いと感じた」と回答した方の共通点は「周囲の協力があった」ということでした。裏を返すと、周囲の協力なしでは難しいということもわかります。「想像していた以上にハードルは高いと感じた」と回答した方はハード面のバリアや周囲の支援が得られないことが課題となってるようです。
あなたはどう考えますか?「障がい者と出産」
妊娠・出産においては私を含め多くの方が不安を感じていることがわかりました。遺伝に関することだけではなく、妊娠・出産時の薬の調整などからくる母体への影響なども。
「愛する人とのこどもが欲しい」
障がいの有無に関係なく、多くの方はそう思うでしょう。しかし自分の障がいが心の課題となって、踏み切ることができない方もいるということも現実です。この数字とリアルな当事者の声をみて「障がい者と出産」についてあなたはどう考えますか?
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ライター わに
17歳の時に側頭葉てんかんを発症、精神障害者手帳2級の障がい者。 酸いも甘いも経験してきた熟れ時アラサー女子。 「全力で働き全力で遊ぶ」がモットー。 誰彼構わず噛みつき周囲をヒヤつかせるため「わに」。 過激な記事を投稿しようとし編集長に止められるのが日課。
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