ビジネスの場における多様性の実現 ~DTO Tokyo 未来発見セミナーレポート 前編~
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ライター:aki
2021年9月5日、パラリンピック東京大会が閉会しました。
東京開催ということもあり、これまで以上にテレビ等でも取り上げられ注目していた方も多かったのではないかと思います。
そのパラリンピック大会の開会直前、8月22日から24日まで“Dear To Overcome Tokyo”(デア・トゥ・オーバーカム・トーキョー、以下DTO Tokyo)という国際フォーラムが開催されました。
このフォーラムの国内プログラム「未来発見セミナー」に参加し、DTO Tokyo 事務局の品川謙一さんにお話をうかがいました。
記事は2回に分けてお送りします。今回はDTOの説明と未来発見セミナーの概要についてです。
Dear To Overcome(DTO)|平和と多文化共生をめざすビジネスフォーラム
DTOは、パラリンピック運動の理念「大会を通じた共生社会の実現」に触発されて、2016年のリオデジャネイロ大会のときにスタートしました。“Dear To Overcome”とは翻訳すると「限界を乗り越える挑戦」という意味で、平和と多文化共生を目指す国際ビジネスフォーラムです。
2016年にブラジルのリオデジャネイロ大会で第1回、2018年には韓国の平昌大会で第2回が開催されました。
2018年、韓国でのDTOの様子|パン・ギムン前国連事務総長の基調講演
事務局の品川さんはDTOの原点について、次のように説明してくれました。
「日本以外の地域、特に欧米や中東においては、宗教や人種の対立や差別が大きな課題です。そうした様々な障がい・バリアに対して、“違うバックグラウンドであってもビジネスを通して壁を乗り越えてコミュニケーションができる。社会貢献できる。”ということを目指しているのがDTOです。そういう広い意味での多文化共生の中に”障がい者支援”“LGBT支援”も含まれているというイメージです。」
2021年のDTO Tokyo|国内の当事者に向けて
2021年のDTOは、パラリンピック東京大会に合わせて東京で開催されました。
新型コロナウィルス感染拡大の影響もあり、国際DTOと国内DTOのプログラムがそれぞれ完全オンラインでの実施となりました。
国際DTOでは、各プログラムに中東・北米・欧州・アジアといった幅広い地域から300を超えるアクセスがあったといいます。
「実際に渡航しなくても参加できる、オンラインならではの参加人数だったのではないかと思います。実際にはひとつの登録に対して複数人で視聴している場合もあり、おそらく400人近い人々が参加してくれたと思います。」と事務局の品川さんが話していました。
国内プログラムでは日本におけるビジネス平和アワードなどの授賞式のほかに、「未来発見セミナー」と題し、国内の様々なビジネスの場における障がい者支援の実例についての講演が、すべて手話通訳付きでおこなわれました。
これまでの2回の大会では、国際的な表彰式が主体で開催地の障がい者コミュニティとの交流がほとんどなかったといいます。品川さんは、「東京でやるのであれば、ぜひ国内の当事者の方にも関心を持ってもらいたい。」と、未来発見セミナーを企画しました。
その一環で、国際的な事例を紹介し「日本の当事者コミュニティになにか還元できれば」という思いがあったといいます。
国際DTOプログラムの様子(Google社内の諸宗教ERG活動について話すバーバラ・フィリップスさん)
未来発見セミナーの内容
セミナー 1
「選択を創る自由」
柳匡裕(Social Café Sign with Me 運営・一般社団法人ありがとうの種代表理事)
セミナー 2
「一人ひとりがユニークな存在として活躍できる社会を目指して 〜米国企業ERGの紹介〜」
ジャスティン・グリーン(米国アクセンチュア・マネージャー/全米障がい者 ERG(Employee Resource Group)リーダー)
セミナー 3
「バリアバリュー ~障害を価値に変える~」
垣内俊哉(株式会社ミライロ 代表取締役)
セミナー 4
「スポーツがもたらす心のバリアフリー・カルチャーへの期待」
倉田秀道(あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 経営企画部次長兼スポーツチーム統括・上智大学客員教授)
セミナー1「選択を創る自由」 柳匡裕さんの講演
当初はセミナーだけではなく、障がい者コミュニティと一緒にアートワークショップをおこなうなど、リアルでのイベントも企画していました。しかし、今回はそれらの企画は断念せざるを得ませんでした。
大野恭二さんの作曲による、オリジナルアンセムのパフォーマンスも披露されました。
「日本のコミュニティへの還元という意味では、実施できなかった企画があったことは残念でした。それでも未来発見セミナーで130前後のアクセスがありましたので、多くの方に参加いただけたと思います。」
未来発見セミナーのメインテーマはERG
ERGとは、Employee Resource Group(エンプロイー・リソース・グループ)の略で、従業員リソースグループとも呼ばれます。
日本では耳慣れない言葉ですが、GoogleやIntelといったアメリカの主要企業500社の90%で導入されており、実際に利益につながっています。
企業には様々な属性の従業員がいます。例えば女性・障がい者・LGBTといった属性です。ERGは企業内の共通の属性の従業員グループで、メンバー共通の課題や困難などの情報を共有しています。
ERGが、労働組合や単なるサークルと異なるのは、企業の経営層がそれを把握し応援・推奨していること、またコミュニティー作りを主体とした活動であることです。
導入している企業では、自社のサービスや製品がその属性の人々にとって使いやすいものになっているかの検証や、商品開発にも活用されており、企業の強みに貢献し競合他社との差別化につながることもあります。
DTOはアメリカが主体ということもあり、ERGの効果を実感している国際DTOのメンバーが多くいたといいます。ERGの動きはビジネスの場における多文化共生実現において、非常にメリットがあると考えていました。
実際にアメリカではこの数年で急速に広まって効果をあげていることもあり「ぜひ日本にも紹介したい、もっと広まってほしいという声がありました。」
そこで、未来発見セミナーではアメリカ国内の障がい者ERGリーダーであるジャスティン・グリーンさんがERGについての講演をおこないました。
ジャスティンさんは当初は来日しての講演を計画していましたが、オンライン講演を事前に実施し、録画して流すことになりました。
「国際DTOでは来日講演の期待感が高かったので残念でした。状況次第ですが、近いうちにジャスティンさんが来日して、何かしらの講演や交流ができるように企画しています。」
次の記事では、実際のジャスティン・グリーンさんのERGの講演内容についてレポートします。
ビジネスの場における多様性の実現 ~DTO Tokyo 未来発見セミナーレポート 後編~ を読む
DTO Tokyo 公式サイト(今後の情報も随時更新予定):https://dtojp.org/
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ライター aki
ASDの長男と、たぶん定型発達の夫と暮らしています。私自身は診断をうけていませんが、おもちゃを一直線に並べて遊ぶ子どもではあったらしいです。 Twitter: https://twitter.com/akiko_m_psy10
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