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「精神障害者雇用企業カンファレンス~企業事例から学ぶ、わが社の雇用の進め方~」・参加レポート

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ライター:aki

2022年8月23日火曜日、オンライン座談会「精神障害者雇用企業カンファレンス~企業事例から学ぶ、わが社の雇用の進め方~」が、ゼネラルパートナーズの主催で開催されました。
参加各企業のプレゼンテーションから共通する7つのポイントをまとめました。

【当日の登壇者】
<座長>
横浜市立大学 都市社会文化研究科 影山摩子弥 教授

<参加企業>  
アマゾンジャパン合同会社 オペレーション部門人事部 PWDリクルーター 近藤様
清水建設株式会社 人事部ダイバーシティ推進室 主査 田中様
全日本空輸株式会社 人事部 グループ障がい者雇用推進室 リーダー 井田様、古谷様
エム・シー・ヘルスケアホールディングス株式会社 人事部 人材開発ユニット ユニットマネージャー 髙杉様
LINEビジネスサポート株式会社 ビジネスサポート事業部 マネージャー 村田様

<コーディネーター>
株式会社ゼネラルパートナーズ コンサルタント 工藤賢治

Point.1「法定雇用率の確保」

本日の内容

すべての登壇者が話していたのが「法定雇用率の確保」の重要性です。
法定雇用率を達成するためには、精神障害の方の雇用を積極的におこなうことが重要なポイントになるとの話が多く、印象にのこりました。

「本社の各部門で1名の障害者採用ができれば、法定雇用率がぐっと改善します。精神障害の方を受けいれることがどれだけ大切なのか、法定雇用率の達成がどれだけ大事なのかという話は社内に対して続けています」(エム・シー・ヘルスケアホールディングス株式会社 高杉様)

「世の中の障害者雇用のマーケットでは、6割ぐらいが精神障害の方なんですというデータを提供しています。精神障害の方の雇用を避けて通るということは、法定雇用率が達成できない可能性があるということです、と話しています」(アマゾンジャパン合同会社 近藤様)

「重複障害がある方が突発的に退職をしても、法定雇用率に対してマイナスにならないようにというのを心がけております」(LINEビジネスサポート株式会社 村田様)

「障害者雇用は法律で決められています。コンプライアンス遵守というのは重要です。また当社は建設業なので、工事の入札の要件にも入ってます」(清水建設株式会社 田中様)

LINEビジネスサポート株式会社様資料より
LINEビジネスサポート株式会社様資料より

Point.2「現場の理解促進」

見えない障害ゆえの、現場における「理解」に向けての課題もうかがえました。

「現場での精神障害に対する理解が大きな課題です。現在当社は身体障害者メインで、精神・発達・知的障害の雇用が少ないというのは課題に感じております」(清水建設株式会社 田中様)

「今まで身体障害の方は受け入れてまいりました。ただ、精神障害の方を受け入れることがあまりなかった。現場が不安を感じることもあるのが課題でした」(エム・シー・ヘルスケアホールディングス株式会社 高杉様)

「現場での理解促進が難しいという課題はあります。アマゾンジャパンは実際に障害者雇用で在籍している人も多いですよと伝えると、そうなんですね、と耳を傾けてくれるようになりました」(アマゾンジャパン合同会社 近藤様)

「行動規範の策定、eラーニング、プロモーションビデオなどで啓発を図りながら、グループ社員一人一人にフェイストゥフェイスで浸透を図って参りました」(全日本空輸株式会社 古谷様)

Point.3「経営陣を巻き込みトップダウン」

経営陣の意思表示の場を持ち、現場との意識統一を図ることで、採用や定着を円滑に進めている事例が紹介されました。

「会長・社長から、障害のある従業員と直接話をするきっかけを作ってほしいというリクエストがありまして、そういう場を計画しました。偉い人と話してみたいとか、同じ障害の人たちと知り合いたいといった当事者の希望もあり、開催してみたら、なかなか盛り上がりました」(清水建設株式会社 田中様)

「定期的に情報共有を行いながら、全社的な課題として、トップダウンで現場レベルにまで共通理念が浸透するような体系化をしております」(全日本空輸株式会社 古谷様)

「精神障害の求職者は実は年齢が若い方が多くいらっしゃいます。パソコンスキルやITスキルの大変高い方が多く、市場を見ても圧倒的に多いのは精神障害の方です。ですから受け入ることが大事だという話を、会社の意志として経営陣からしてもらいました」(エム・シー・ヘルスケアホールディングス株式会社 高杉様)

エム・シー・ヘルスケアホールディングス株式会社様資料より
エム・シー・ヘルスケアホールディングス株式会社様資料より

Point.4「精神障害の方を雇うメリット」

精神障害の方にどんな業務を任せているか、具体的な事例が複数出ました。

「当社の本社部門では、パソコンスキルやITリテラシーがある程度高い方が好まれるポジションが多いのが現状です。
精神障害の方で、ITスキルが高い方も候補者としていらっしゃいます。そういう方は業務量を調整すれば就労できますなど、そういうことを現場のマネージャーに理解してもらうようにしています」(アマゾンジャパン合同会社 近藤様)

「面接の中で話をしていくと、元々ITスキルが高い方々がいらっしゃいます。パソコンのデータ入力はもちろん、データ分析までやってきましたという方が多くいらっしゃいます」(エム・シー・ヘルスケアホールディングス株式会社 高杉様)

「この11年間でグループ全体の障害者雇用の人数は4倍以上に増えておりますが、その中でも精神障害者の方が7.8倍と、とりわけ多く増えています」(全日本空輸株式会社 古谷様)

Point.5「採用後の定着支援」

定着支援の取り組み事例についても多く紹介されました。
企業規模や重視するポイントによって、支援担当を外部委託したり直接雇用したり、企業ごとに工夫がありました。

「福祉の経験のある方を、障害者支援担当として直接雇用しています。障害者と支援者の割合を4対1としています。経営陣にも話しまして、承認をもらいました」(LINEビジネスサポート株式会社 村田様)

「障害者の定着支援をしています。初期のところでくじけないように、サポートをしています。この支援は担当するマネージャーも受けられます。半年間、毎月定期的に支援担当者と障害のあるメンバーが面談をし、そのフィードバックをマネージャーや人事部が受け、必要な手配や見直しを実施しています」(アマゾンジャパン合同会社 近藤様)

「グループ各社の人事担当者にそれぞれ障がい者雇用推進者を複数配置しています」(全日本空輸株式会社 古谷様)

「精神障害雇用に特化した専門のスタッフを置きました。現場管理者だけでは不十分だと思うので、専任の相談員を置いて相談できるような仕組みを作っています」(エム・シー・ヘルスケアホールディングス株式会社 高杉様)

全日本空輸株式会社様資料より
全日本空輸株式会社様資料より

Point.6「働き方の多様性確保」

採用後も無理なく長く働いてもらうために、働き方についての多様性確保も大事なポイントとして共有されました。

「通勤にストレスを感じる方や、体調不良時のサポートを求める方にとっては、在宅勤務・リモートワークの併用というのは、とても意味のあることだと思います」(エム・シー・ヘルスケアホールディングス株式会社 高杉様)

「休息時間をお昼休みの1時間以外でも設けているのが特徴かと思います」(LINEビジネスサポート株式会社 村田様)

「ANAグループ社の一例ですが、既存の業務すべてを140に細分化し、障がいのある社員が毎日ローテーションをしながら業務を担っています。これらの業務にはすべて手順書があり、当事者の方たちが作成しています」(全日本空輸株式会社 古谷様)

Point.7「とにかく実際に会ってみること」

思い込みや不安を払拭するために、実際に会ってみることが大事というお話がありました。

「なるべく直接会う機会を増やすのは大事だと思います。そもそも障害者の方たちとあまり会ったことのない社員が多いので、直接会ってみるとだいぶ印象が変わるんじゃないかなと思っています」(清水建設株式会社 田中様)

「会ってみることって大事だと思うんです。そうすることで現場の方々は、こんな人いるんだねとか、こんな仕事を任せられるよねっていう視点がもっと広がっていきます」(エム・シー・ヘルスケアホールディングス株式会社 高杉様)

清水建設株式会社様資料より
清水建設株式会社様資料より

座談会より

各社のプレゼンテーションのあとに、参加者の質問を受けての座談会がひらかれました。
ファシリテーターには、著書『なぜ障がい者を雇用する中小企業は業績を上げ続けるのか?』を執筆されている影山摩子弥先生をお招きしました。一部をご紹介します。

横浜市立大学 都市社会文化研究科教授 影山摩子弥先生
横浜市立大学 都市社会文化研究科教授 影山摩子弥先生

Q.評価軸についてどうしていますか?
月に一度、チャレンジする項目をコミュニケーションを取りながら決定し、チャレンジをしてもらっています。それを評価結果として、昇給につなげられるようにしています。(LINEビジネスサポート株式会社 村田様)

Q.とくに配慮している事は、なにかありますか?
発達障害の方も含め精神障害の方の場合、積極的に障害を開示したいという人もいれば、できるだけクローズにして働きたいという人もいます。本人とよくコミュニケーションをとって意向を尊重するようにしています(清水建設株式会社 田中様)

競わせることがないように配慮しています。当事者同士で比較してしまって業務に支障が出る場合もあるので、得意分野でそれぞれに頑張ってもらう環境を作っています。(エム・シー・ヘルスケアホールディングス株式会社 高杉様)

Q.雇用の質の確保について、どのように考えていますか?
グループ社の一事例ですが、業務細分化をし、それぞれの工程において、マニュアルを作っています。それが結果的に障がいのない社員も含めて「効率的に仕事ができる」「誰でもどこでもできる」という仕組みを作ることにもつながっています。共に働く経験を持つということが、質の向上に繋がると思っております。(全日本空輸株式会社 井田様)

座談会スライド
座談会スライド

最後に

まとめとして、影山先生から次のような言葉がありました。

「障害のある方が孤立しないようにする、仕事をしやすいようにする、という合理的配慮は必要です。しかし企業だけでこれを行うのは難しい面があります。
ゼネラルパートナーズさんにサポートに入っていただいたり、支援員の方に来ていただいたりして、社内に支援者を配置して対応しているという企業さんも少なくないのです。
専門的な支援を入れることで、精神障害者の雇用を推進するという企業もたくさんありますので、そういうことも考えていただくといいと思いました」

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ライター aki

ASDの長男と、たぶん定型発達の夫と暮らしています。私自身は診断をうけていませんが、おもちゃを一直線に並べて遊ぶ子どもではあったらしいです。                Twitter: https://twitter.com/akiko_m_psy10

ブログ
https://note.com/aki_m_psy10
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