TENGA社主宰のB型事業所、オープニングイベントに密着
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ライター:大河内光明
独自のセルフプレジャー製品の開発を手掛けることで有名なTENGA社。4月29日、障がいのある人の就労と自立を支援する就労継続支援B型事業所「able! FATCTORY」のオープニングイベントを埼玉県川越市で開催しました。
会場には地域の子どもたちやペットの犬の姿も多くあり、シルクスクリーン印刷の作業体験やカフェメニューの試食を楽しむ姿で大いに賑わいました。障がいのある方が働くためだけではなく、地域の人たちの憩いの場所としても設計され、オープンな空気感のある「able! FACTORY」。
オープンは5月10日とのことですが、どのような施設になるのでしょうか。見どころ満載となったイベントの様子をお届けします。
国産の食材にこだわったable! CAFE
▲犬用メニューもあり、ペットも大喜び
全面ガラス張りで、扉を締め切らずに開放的な空間を目指したというable! FACTORYのエントランス。地域の人たちが、散歩の途中に気軽に立ち寄れるようにと、ドッグパーク、ドッグカフェが併設されています。
イベント当日はペットの犬を連れたお客さんで大賑わい。
メニューは季節野菜のキッシュやスパイシーなタンドリーチキンのサンドイッチなど軽食類から、バスクチーズケーキやプリンなどのデザート類も豊富に用意。オリジナルメニュー「able! 焼き」は人用と犬用が用意してあり、ペット連れのお客さんも大喜びでした。
今後は高地産地消、食品ロス対策なども取り組んでいくといいます。
オープン後は、障がいのある人がスタッフとして簡単な調理と接客を行う予定とのことです。
多彩な作業内容を用意 川越市で「障がいがあっても生き生きと働ける共生社会」を実現へ
▲シルクスクリーン印刷の作業体験をする川合義明川越市長
当日は川越市長の川合義明さん、市議会議員の海沼ひでゆきさんら、市政に携わる方の姿もありました。それまで川越市には民間主導のB型作業所がなく、「able! FACTORY」のような新しい取り組みに積極的な作業所は、地域にとっても嬉しい存在だといいます。
川合市長「川越市は今年で市政100周年の節目。コロナ禍という難しい局面ですが、様々な事業を通じて、誰もが自分らしく生き生きした共生社会を実現したいと思っています。その中で、働くことを通じて自立を目指せる『able! FACTORY』のような施設ができるのは、行政にとってもありがたいですね」
“able”は「できる」という意味。
障がいがあっても一人ひとりが自分らしく、「できる」を通じて喜びと対価を得て、自立を目指せる施設でありたいとの想いが込められています。
そんな想いもあって、利用する人が習得できるスキルは多彩。メーカーとしてのTENGA社がこれまでに培ってきたカップやアパレル製品の制作、ECサイトの運営に加えて、PCの修理・販売、カフェでの調理・接客などのノウハウを学ぶことができます。
イベント当日は地域の人たちも参加できるシルクスクリーン印刷(メッシュ版にインクを塗布してプリントする方法)や、解体したPCのハードディスクでオリジナルメダルを作る作業体験コーナーもあり、大盛況でした。
高い工賃、充実の支援内容 able! FACTORYから新しい作業所のあり方を発信
▲ウォールペイント式直後の松本光一社長(上)と木村利信施設長(下)
施設のシンボルとなるロゴのペイント式後、TENGA社の松本光一社長、able! FACTORYの木村利信施設長にお話をうかがいました。
松本社長「障がいのある人のための就労支援施設も、カフェの経営も初めてのことで手探りでやってきましたが、地域の方にも温かく受け入れてもらい、川越市からも事業に関する申請で多大な助言や支援をしてもらい、本当に感謝しています」
施設の中と外の垣根をなくしたいという想いが強い松本社長。エントランス部分の設計を自ら担当したとのことで、「オープンでフレンドリーな雰囲気づくり」にはこだわりました。
松本社長「私は、この施設を使う障がい者の方を『利用者さん』とは呼びたくありません。仕事を通して働く喜びを感じ、プロとして自立することを目指してもらいたいので『スタッフさん』と呼ぶことにしています。一方で閉鎖的な空気で息が詰まってほしくないので、ドッグパークも併設したのですが、いいかんじにゆるく、楽しい場所になりましたね」
一方の木村利信施設長はIT、福祉と異なる業界に身を置いていた経歴から、able! FACTORYの事業内容の多角化に貢献。こだわったのは、全国平均より高い工賃の実現でした。
木村施設長「実現したかったのはさまざまな障がいがある当事者の方が通うB型で、高い工賃を支払うこと。現在、B型の工賃の全国平均は1万5千円ほどですが、able! FACTORYでは1日5時間、20日間作業した場合5万円ほど還元することができます」
川越市には元々B型の施設が少なく、able! FACTORYがモデルケースとなっていくことで、他の作業所にも後に続いてほしいとのこと。
木村施設長「今日は福祉関係者にたくさんお越しいただきました。今後は大きな気持ちで受け入れをしていただいた川越市を拠点に、他の作業所と支えあって工賃の向上に取り組んでいきたいですね。まずはable! FACTORYが頑張って、川越市の平均工賃を上げていきたいと思います」
また、able! FACTORYでは、日々の作業だけでなく、生活支援や心のケアも行っていくといいます。
元々NPO法人と協力して「障がい者の性の悩み」解決に取り組んできたTENGA社。木村施設長を中心にオンラインでの性に関する相談を受付け、希望者には作業療法士と共同開発したTENGA用カフ(自助具)を提供していく予定とのことです。
タブー視されていた「障がい者の性」。
able! FACTORYではTENGA社が培ってきたノウハウを活かし、障がいがある人の働く喜びを含めたQOL(クオリティ・オブ・ライフ)全般を向上させていける場所となりそうです。
able! FACTORYについてもっと知りたい方はable! projectのwebサイトもぜひごらんください!
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ライター 大河内光明
1994年生まれ。早稲田大学政治経済学部国際政治経済学科を卒業後、web出版社、裁判所事務官を経て副業でライターに。発達障害(ADD,ASD)の当事者であり、民間企業の障害者雇用で働く。
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