「指示通りに仕事をしたつもりなのに成果を出せない・・・」~指示に対する配慮、きちんと伝えられてますか?~
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ライター:発達障がいの方向けサービス LinkBe(リンクビー)
皆さん、こんにちは。発達障がいの方専門の就労移行支援「LinkBe」スタッフの藤木です。発達障がいの方が働く上でよく聞くのが「指示された通りに仕事をしたつもりなのに、期待される仕事の成果を出せない。」という悩みです。実は、その「指示自体」に問題があるケースも少なくありません。では、この問題に対し一体どのように対応すれば良いのでしょうか?
発達障がいの方は「なぜ、指示通りに作業が出来ない」ことがあるのか?
ご存知の方も多いと思いますが、発達障がいには様々な特性があります。
「暗黙の了解が認識しずらい人」
「抽象的な表現が理解しずらい人」
「耳から聞いたことを頭の中で整理することが苦手な人」
「情報量が多いと思考が鈍くなる人」
「情報の一部が抜けてしまう人」
など人によって特性も様々です。では、こうした様々な特性をもつ人に対して全く同じ指示をされたとしたら、指示を受けた人は期待通りの作業が出来るでしょうか?
「職場における指示」を受けるときには、自分自身の障害特性をきちんと理解し、職場にきちんと説明することで、特性にあった指示をしてもらう事が大切です。具体的な事例で説明していきましょう。
事例 ~「思い込み」と「抽象的」な指示が発達障がいの方を困惑させる~
例えば、人事部で働く当事者のAさんに対し、同じ人事部の上長から以下のような指示があったとします。
「社内ネットワークの中に《企業説明会資料》という名称の資料があるので、それを多めに印刷しておいてください」
指示を出す人もAさんも同じ人事部で働いています。ですから指示を出す人は・・・
●ネットワークの中の人事部のフォルダに《企業説明会資料》があるのを分かっていると“思い込んで”います。
●印刷の部数は普段より多めなので、”1部や2部ではなく、5部程度“と思っています。
●印刷もいつもしていることなので、“印刷の方法も分かっていると思い込んで”います。
しかし、上記のような指示の場合、発達障がいの方は、具体的にどんな作業をすればいいのか?作業が出来ない可能性が考えられます。なぜならば、指示の中に含まれていない情報や、抽象的な表現があるからです。
対策 ~「暗黙の了解」と「抽象的な表現」を避けた指示をしてもらう~
では、「上記のような作業指示を出され、どうしていいか分からない」という状態になった場合、発達障がいの方はどうすれば良いのでしょうか?
まずは、事前に障害特性として自分の傾向を伝え、「職場の人々に理解してもらう」ということが重要です。例えば、今回の場合「暗黙の了解」と「抽象的な表現」を極力無くす形で指示をお願いすることがポイントとなります。
「暗黙の了解」とは「言わなくても伝わっている」と指示者が思い込み、結果「指示に含まれていない情報」です。こうした情報もきちんと指示に加えてもらいます。
「抽象的な表現」とは、数を「多めに」など具体的な数量がない表現です。こうした指示についても、「5部」等と具体的な値を伝えてもらうようにお願いします。
指示をいただく時には、明確で具体的な指示を出してもらうように、周りの人に配慮をお願いします。これだけで随分と作業の正確性があがります。
さらに「指示をもらっても分からないことは質問する」。これも大事なポイントです。質問をする上でに役に立つのが、「5W1H」の考え方です。
「5W1H」とは、When(いつ)・where(どこで)・what(何を)・who(誰と)・why(何故)・how(どうやって)の意味であり、これらの要素を一つずつ質問すると、不足していた情報を得ることができます。
もちろん常に5つ全てを質問する必要はありません。必要に応じて、で大丈夫です。
前述のAさんが受けた指示を当てはめてみると、
●Why(なぜ)
⇒これは何に使うのですか?⇒会社説明会用の資料です。
●When(いつ)
⇒いつまでに終えたらいいですか?⇒明日の午前中までに終えてください。
●Where(どこで)
⇒その資料はどこにありますか?⇒社内ネットワークの中に人事部のフォルダがあり、その中に新卒採用のフォルダがあります。そのフォルダの中にあります。
●what(何を)
⇒その資料は何ですか?⇒《企業説明会資料》というPowerPointの資料です。
●who(誰)
⇒終わったら、誰に提出すればいいですか?⇒終わったら、私に提出してください。
●how(どうやって)
⇒どのように印刷したらいいですか?⇒カラーで両面印刷でお願いします。
●howmany(何枚)
⇒何部印刷したいいですか?⇒5部お願いします。
この「5W1H」に基づいた質問によって、はじめは曖昧だった指示が下記のような具体的な指示に変わります。
「社内ネットワークの中に人事部のフォルダがあり、その中に新卒採用のフォルダがあります。
そのフォルダの中に、《企業説明会資料》というPowerPointの資料がありますので、
それをカラーで両面印刷で5部印刷をして、私に提出してください。」
ここまで指示してもらえれば、期待される作業が出来そうですね。
「確認」することで指示された作業をより確実なものに!
明確かつ具体的に指示を出していただいても、安心は出来ません。作業の途中に「確認」を入れることで、よりミスなく作業を進めることが出来ます。
例えば、
●ネットワークの中の《企業説明資料》を見つけたら、 「この資料で大丈夫ですか?」と確認します。
●まず、1部印刷してみて、「印刷の仕方はこれでいいですか?」と確認をします。
作業を進めながら確認をすることで、指示者が期待する成果と結果がズレることなく仕事をすることができます。
いかがでしたでしょうか?最後に発達障がいの方が仕事で指示を受ける際に押さえておくべきポイントを改めて整理すると、
■ポイント
●自分の特性を理解し、職場に伝え理解してもらう
●自分の特性にあった指示をお願いする
●分からないことは質問する
●進捗の報告と確認をする
今まで、「指示通りに仕事をしたつもりなのに成果を出せない」と悩んでいた方、是非一度試してみてください。
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ライター 発達障がいの方向けサービス LinkBe(リンクビー)
発達障がいの方向けの就職支援サービス。発達障がいがある方一人ひとりの強みや特性を活かした就労をサポートしてきた経験を活かし、発達障がいに関する情報を発信していきます。
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