障がい者起業家は語る「スタートラインに障がいの有無は関係ない」その意味とは?
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ライター:Media116編集部
みなさんこんにちは!Media116編集部です。今回は障がいがありながら起業され、出版社を立ち上げられた起業家に取材をさせて頂きました。障がいがありながら起業をするという選択肢を選んだ想いとは?そして、彼がみなさんに伝えたいこととは…
ある日届いた障がい者起業家からの一通のメール
「Media116に限らず、障がいのある起業家の紹介記事がとても少ないと思うんです。」そんな1通のメールがMedia116のお問い合わせに届きました。その送り主は視覚障がいがありながら出版社を立ち上げた福島憲太(ふくしまけんた)さん。
「障がい者は常に雇用される側に立つのではなく、起業をしたって良いのではないか。」ご自身の起業の体験談を語ることで障がいのある人が自由な選択肢を持つことができる後押しをしたいと語りました。
先天性の弱視で障害者手帳の4級を持つ福島さん。大学卒業後10年間、一般企業の障害者雇用にて人事労務関係の事務職などに就いていました。本とは無関係の仕事を長年続けられてきた福島さんが一体なぜ出版社を立ち上げたのでしょうか?
「書きたいテーマが決まったんです」そう語る福島さん。書きたいテーマというのは「風疹」についてでした。それは福島さんの障がいと関係していました。「先天性の風疹症候群」というものがあり、妊婦が風疹にかかると子供の身体的な発育に影響が出るというものです。それが福島さん自身だったのです。病院が無数にあり、予防接種を受ける機会はいつでもあるのになかなか完全に予防できていない。そんな現象がなぜこの先進国の日本で起こっているのかということに疑問を持ったそうです。
10年近く一般企業で勤めてきたキャリアを捨て、その後2年間フリーライターとして書いたものを新聞に投稿するなどしていました。その後自身の考えを「本にしてまとめたい」という気持ちが高まり、まずはそのための知識を得たいと思うようになったそうです。知人の誘いもあったことを機に出版社に障害者雇用で半年ほど勤務することとなりました。その中で出版業界独特のノウハウを吸収し、ご自身で出版社を立ち上げることになったのです。
「障がいが障害にはならない」困難を障がいのせいにしない姿勢
そして立ち上げたのが「読書日和(どくしょびより」)でした。本を書き、出版する。加えて今出している本をしっかりと売るための書店回りの営業活動。主に静岡県の浜松を拠点に、浜松・東京にて全て福島さん1人で活動されています。
出版社は収入がないと本の印刷代が捻出できなくなります。「健常者だと本を出すためにアルバイトを掛け持ちしたりすることができますが、自分は障がいがあるのでアルバイト見つけることは容易ではなかったのです。」そのため、自費出版をしているとのこと。そして出版社を支える柱として「クラウドファンディング」を利用しているそうです。
「仕事をしていく上で障がいが障害になったことはありません。」そう語る福島さん。そう仰る福島さんにも様々な困難があったのだと思います。右目がほとんど見えず、ルーペを使い左目だけで9カ月間風疹についての文献を読み漁ったことは容易なものではないと想像がつきます。しかしその困難を障がいのせいにしないという姿勢がとても前向きに感じました。
「スタートラインに障がいの有無は関係ない」
起業をするとなったらどんな仕事をするか、どういった会社を創っていこうかというビジネスプランを練る必要があります。福島さんの場合は商工会議所の講座に頻繁に足を運ぶなどしてノウハウを獲得していったと言います。
「スタートラインに障がいの有無は関係ないんです。」
福島さんはハッキリとそう語りました。「障がいがあるからこれができない、あれができない…」そう思い諦めてしまう方もいらっしゃるのかもしれません。しかし福島さんは何かを始めること、創っていくこと、夢を実現させることにおいては健常者も障がい者も同じスタートラインに立っていると言います。
続けて福島さんはこう語りました。
「障がいがあるがゆえに、自分が困っていることを解決する手段として起業する人もいれば、障がい特性を手掛かりに事業を始めていくことも良いと思うんです。自分が困っていることに気づいているのであれば、それは起業にとって非常に有利になることだと思います。」
現在、出版社を立ち上げて2年目に入ったところです。今後の抱負を伺うと、出版点数を増やしていくことに注力したいと仰っていました。それは障がいというジャンルにこだわらず、幅広く考えているそうです。
何かを始めることにタイミングも障がいも関係なく、そしてそのキッカケは実はとても身近にあるのかもしれません。
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