災害弱者にならないために、私たちが備えておくべきことは?

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ライター:Media116編集部

こんにちは!Media116編集部です。東日本大震災から約7年半。2016年には熊本県で大きな震災が起き、今年は西日本での豪雨、北海道での地震と日本全国で災害が続いています。災害時、障がいのある方はその場の状況を把握するのに時間がかかったり、逃げ遅れたりと、災害弱者になる可能性が高いのです。今回は、障がいのある方が有事に備えておくべきこと、もしもの時どう動けばいいか?をまとめ、お伝えします。

災害時の避難、緊急時の情報収集に不安

2011年に震度7の地震の被害に見舞われた宮城県では、2017年に県や仙台市が発行する「障害者手帳(※)」を持つ人およびその家族およそ4000人に『平成28年度「宮城県障害者施策推進基礎調査」』というアンケート調査を実施し、およそ2000人から回答を得て、調査結果をとりまとめています。この中では、障がいのある人の災害時の避難や困りごとについても調査しています。

(※①身体障害者手帳、②療育手帳、③精神障害者保健福祉手帳)

それによると、「災害時に避難ができない」と考えている人は全体(※)の39.5%。なかでも身体障害者手帳1、2級を保有する方は69.9%、療育手帳Aを保有する方は90.9%、精神障害者保健福祉手帳1級を保有する方は55.7%と、障がいの程度が重い人が特に避難に対して不安を抱えていることがわかりました。

(※「全体」は母集団の構成比に応じたウェイトづけ集計の割合。他は実数ベースの割合)

避難ができない理由の上位としては、以下のことが挙げられました。
・自分で判断して行動することが難しい 58.0%
・介助者がいないと移動できない 49.4%
・避難指示や避難勧告などの情報が把握できない 36.4%
・避難所などでの集団生活が難しい 33.8%

その他、「避難場所がわからない」「パニックを起こしてしまう」などが挙げられており、有事への不安要素はさまざまです。
机の下に隠れる

障がいごとに異なる備えと行動 今すぐしておくべきこと

東京都心身障害者福祉センターでは、障がいのある人が災害に備え適切な行動をとることで、自身の命を守り、必要な支援を受けられるよう「防災マニュアル(障害当事者の方へ)」を作成し、同センターのWEBサイト上で公開しています。

このマニュアルは、目が不自由な人、耳が不自由な人、知的障がいがある人、高次脳機能障がいがある人向けの4つに分かれています。どんな障がいがあるかで、備えるものやするべき行動は異なりますので、ぜひ参考にしてみてください。今回は、マニュアルから一部を抜粋・編集しています。

また、発達障がいの人、精神障がいの人に向けた災害時の備えについては、公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会が公表している「障害者と災害─障害者が提言する、地域における協働防災のすすめ」より一部を抜粋・編集しています。

<目が不自由な人>
●懸念されること
・周囲の情報が入らず、適切な判断につながりにくい。
・被害状況がわからないため、避難場所に一人で移動することが困難。
・建物に閉じ込められた時に捜索者の存在に気づかず、救出につながりにくい。
・体育館のように、広くて大勢の人がいる避難所では、一人で動けない。
・白杖、音声時計、視力を補うための特殊レンズなどの入手が困難になる。
・断水になると、手を洗うことや特殊コンタクトレンズを清潔に保てない。
・弱視の場合、障害(見え方)の状況がうまく説明できないために誤解され、避難所で孤立してしまうことがある。

●日ごろからの備え
地域の人たちに自分の障害について知ってもらうことが大切です。
・視覚障害者だと理解してもらうには、白杖を持つことが一番。
・「災害時要援護者名簿登録制度」について、住まいのある区市町村に確認する。
・地域の防災訓練に積極的に参加する。担当者と援護方法などを話し合う。
・避難方法や連絡手段を家族などと話し合う(災害用伝言サービスの利用など)。
・災害時に役立つグッズ(携帯電話とアダプター・携帯ラジオ・ホイッスル)を使い慣れておく。
・自宅での事故やけがを防ぐために、窓ガラスなどに飛散防止フィルムを貼る。家具や家電製品に転倒防止器具を付ける。

視覚障害者の誘導

●用意しておきたい避難セット
・白杖のスペア
・特殊レンズや特殊コンタクトレンズのスペア
・身体障害者手帳、健康保険証、「お薬手帳」のコピー       
・常時服用している薬の予備(5日分程度)
・「ヘルプカード(防災カード)」・「見え方説明カード」
・飲料水、非常食
・携帯ラジオ(手回し充電式、電灯、非常サイレンなどの機能付きのもの)
・音声時計、生理用品、タオル、下着、ティッシュペーパー、ウエットティッシュ
・軍手、乾電池、簡易カイロ、雨具、上履きなどの靴、現金(小銭を多めに)
・盲導犬用のドッグフード 
など

●災害が起きたら
地震の場合…
・あわてた行動は絶対にしないこと。安全な移動手段が確保できるまでは、その場に待機する。
・揺れが落ち着いたら、家族や近所の人に自宅内や外の状況を可能な限り確認してもらう。
・すぐ持ち出せるよう、避難セットを手元に置く。
・水道が使えるようなら、断水に備えて、容器や風呂に水を貯めておく。
・職場や外出先にいる時は、「自分の見え方(障害状況)」を説明して、周囲の人に積極的に支援を求める。

火災や津波の場合…
・大声で助けを求め、支援者に安全な場所への誘導を依頼する。
・一人で、消火活動を行わない。
・より高い、安全なところに逃げられるように、日ごろから「津波避難ビル」などを確認しておく。

<耳が不自由な人>
●懸念されること
・周囲の情報が入らず、避難方法や避難場所がわからない。
・地震の被害状況や避難場所についての情報がなかなか得られない。
・家具の下敷きになって身動きがとれない時、発声が困難なため助けを呼べない。また、捜索者の存在に気づかず、救出につながりにくい。
・避難場所に着いても、放送が分からず、食事の配給などの援助がなかなか受けられない。
・離れた場所にいる家族などと連絡を取り合うのが難しくなる。
・周囲とのコミュニケーションがうまく取れず、孤立してしまうことがある。
・停電時や暗い場所で、視覚からの情報が入らずコミュニケーションが取りにくく、不安になる。
・補聴器や人工内耳などの電池の入手が困難になる。

●日ごろの備え
・住まいのある自治体で「災害時要援護者名簿登録制度」の確認をしておく。
・緊急地震速報の受信がわかるように常に携帯電話などを身に付けておく。
・耳の不自由な方向けに東京消防庁が開設している「緊急メール通報」に登録しておく。
・地域の支援ネットワークに積極的に参加する。
・地域防災訓練等に参加する。
・補聴器や携帯電話等は、寝る時に枕元に置くなどして、とっさの時にすぐに持ち出せるようにしておく。
・補聴器用電池の予備を準備しておく。
・職場や学校等の災害訓練に参加し、発生時の対応を事前に話し合っておく。

●災害が起きたら
・家屋などに閉じ込められて身動きできない時は、物を叩く、笛を鳴らすなどして周囲に知らせる。
・携帯電話(PHSを含む)、スマートフォンから的確な情報を得られるようにする。
・緊急地震速報の受信がわかるように常に携帯電話などを身に付けておく。
・職場では職場の方の指示に従う。
・外出先ではまず安全を確保のうえ、周囲の人や携帯電話(インターネット)などから情報を得て行動を決める。
・身体障害者手帳を常に携帯する。

笛を吹く

<高次脳機能障がいがある人>
●懸念されること
・外見からはわかりにくいので、避難する時や避難所生活で、周囲の人の理解や支援を得にくいことがある。
・ふだんとは異なる状況の中で、必要な情報をまとめて正しく判断し、行動に移すことが難しくなる。
・混雑しているところでは、人や物にぶつかったり、避難所への目印なども見落としてしまうことがある。
・自分の知りたいことやして欲しいことを周囲の人に適切に伝えられない。
・避難所での放送内容が十分に聞き取れない、聞き取れても記憶できないために食事の配給などの援助が得られないことがある。
・避難所では、大勢の人がいるので、雑音や周囲の様子が気になり、落ち着かないことがある。
・いつもよりも、さらに疲れやすくなる。

●日ごろの備え
・非常持ち出し品を用意する

a日頃から携帯しておくもの
・障害者手帳・健康保険証
・お薬手帳または現在の処方箋・薬の予備(3日分程度)
・健康保険証や処方箋のコピーを障害者手帳等に入れておく
・メモリーノートやICレコーダー等の記憶の補助ツール
・家族の写真(家族とはぐれた時の確認用で、裏に家族の名前と携帯やメールの連絡先を書いておく)
・ヘルプカード等(周囲の人に支援を求めるツール)
・携帯電話・緊急用のホイッスル

ヘルプマーク

b 避難生活で役立つもの
・懐中電灯(ヘッドライトタイプだと片麻痺がある方でも移動や片手作業がしやすい)
・耳栓やイヤーマフなど音を遮断するもの(周囲の音が気になって落ち着かなくなったり、ゆっくり休めない時に使う)
・アイマスク(混雑した状況の中で、周囲の動きや光が気になり落ち着かない時や休めない時に使う)
・筆記用具とノート等
・携帯ラジオ、乾電池
・非常食と飲料水(最低でも3日分)
・ウエットティッシュ(体の清潔を保つのに便利)
・携帯トイレ、失禁パッド、パンツ(頻尿の方やトイレ設備が使用しにくい際はあると便利)
・余暇時間を過ごすグッズ(パズルの本など、通所等ができなくなり余暇時間を過ごすのが難しい場合にあると役立つ)

c その他、一般的な防災用品等の例
・衣類や下着、救急用具
・防災頭巾やヘルメット、軍手
・雨具、タオル、トイレットペーパー
・ビニール袋、ラップ、マスク、生理用品、小銭
・その他(ビニールシート、カイロ、ナイフ等)

d 家で過ごす場合の準備
自宅でも生活ができるように3日分以上の非常食、飲料水、簡易携帯トイレ、生活便利品などの準備をしておく。

周囲の人に支援を求めるヘルプカード等を持つ。
(区市町村が作成したヘルプカードや防災カード等があれば活用する)
記憶障害があり、持ち忘れる場合は、障害者手帳等と一緒に持ち歩くなどの工夫をする。
実際にヘルプカード等を使って周囲の人に支援を求める練習をしておく。

●災害が起きたら
・大きな家具や家電製品、ガラスから離れて、テーブルや机の下にもぐり、揺れがおさまるまで待つ(身体の麻痺などにより、もぐるのが難しい場合はヘルメットや防災頭巾(なければクッションや雑誌など)で頭を保護する)。
・揺れがおさまったら、落ち着いて火を消す。
・スリッパや靴を履いて足を保護し、戸や窓を開けて出口を確保する。
・家族の安全を確認し、非常持ち出し品を手元に置く。あわてて外に出ず、周囲の状況を確認して落ち着いて行動する。
・非常持ち出し品の持ち出しが難しい場合は、無理をして持ち出さない。
・身動きができない時には、緊急用ホイッスルやブザーを鳴らす、物を叩くなど音を出して周囲に知らせる。
・避難場所・避難所に移動する時は、周囲の人に支援を求める。
・周囲で火災が発生した際は、タオルで口と鼻をおおって、煙を吸い込まないように姿勢を低くしながら、近くの避難場所に逃げる。
・通所先や職場では、通所先の職員や職場の方の指示に従う。
・街の中では、頭をかばん等で保護しながら、自動販売機、建物の壁ぎわや塀ぎわから離れる。
・ヘルプカード等を活用して、周囲の人に声をかけ安全な場所へ誘導してもらう。
・電車やバスが運休しても、あわてて徒歩で帰宅せず「一時滞在施設」等の安全な場所に誘導をしてもらい、ご家族や支援者に連絡を取る(「一時滞在施設」は、災害発生時に行き場のない帰宅困難者を一時的に受け入れる施設)。

<発達障がいの人>
●懸念されること
・災害時のような突発的な状況変化の把握が困難であり、臨機応変に対応することが困難。
・同時並列的な情報処理や行動調節のための優先順位決定が苦手なため、適切な行動が取りにくい。
・災害情報や避難情報などを自分の置かれた状況に照らし、適切に取捨選択し取り入れることが困難。
・外見上は健常者と区別がつかないため、視覚・聴覚的な情報が当然得られているだろうと見られがちなので、逆に適切な情報提供を受けられないことがある。
・特に発達障害児に見られる傾向として、災害後の混乱した状況に不適応を起こし情緒不安定になったり、行動面で退行的な現象が見られたりする。

●日ごろの備え
・普段から災害関係のニュースに接する習慣を身につけたり、災害関係の用語の意味を理解しておく。
・一人暮らしをしている場合には近隣者からの支援が必要になることも多いので、近所付き合いのノウハウを身につけておくと良い。
・事前に避難場所の下見をしておく(発達障害者の中にはしばしば固執傾向が見られるので、災害の種類・内容により避難場所が異なる場合や、避難場所への経路も状況によって変更せざるを得ないことが通例であることなどを良く理解しておくこと)。
・災害発生時に適切な非難行動ができるように、家庭、学校、職場などで支援をしてもらえる人と事前に良く話し合い、意思の疎通ができるようにしておく。
・普段から人に物事をたずねたり、質問できるようなスキルを身につけておく(カードなどに質問事項をまとめて書いておき、いつも携帯しておくと良い。携帯電話やメールなどを利用できる人は、災害時を想定して予行演習しておく)。

非常用バッグ

●災害が起きたら
・災害発生時、本人の特性をある程度理解している人が周囲にいる場合には、その人の指示に従って避難行動を取る。
・外出先などで被災した場合で周囲に適切な支援者がいない場合は、自ら意思表示をすることで適切な支援を受けられるようにする(発達障害者の場合、外見上ではいわゆる健常者と区別がつきにくいのでこのような意思表示が大切)。

<精神障がいの人>
●懸念されること
・発生した状況がどれほど危険で、避難したり身の安全を確保しなければならないかの判断が難しく、適切な行動がとれない。または、分かっていても、行動できないことがある。
・普段から隣近所との付き合いが薄い傾向があり、挨拶や声かけがないので、災害時にも近隣からの情報が得られない場合がある。
・自分から口頭で援助を求めることが難しい。かかりつけの病院や行政の担当者、障害に関する知識がある支援者に連絡を取らなかったり、または遠慮してしまう。逆に、支援する側からは、当事者からの発信が少なく、安否確認も含め、出向いて確認するしかない場合がある。
・グループホームに住んでいる住民同士でも、協力し合えず、非常事態が発生したことを同室の人に伝えられないなどの例もある。
・避難所での秩序のない生活になじめず、安定や安心を得ることが困難な場合がある。本人からみた安心を確保するための行動(使用禁止の場所で過ごすなど)が「規則違反」と見なされてしまい、このため病状が悪化したり、避難所にいることができなくなったりする。
・避難所に入る前に、自分が受け入れてもらえるかどうかとためらってしまうこともある。
・普段服用している薬が飲めなくなったり、かかりつけの病院で受診することができないなど、医療に関する不安が起こる。入院が必要と思われる状況でありながら、災害時には、入院できる病院がなかったり、病院の雰囲気が落ち着かなかったりする。
・避難所などでは、住民の一部から「施設で面倒をみればいい」など偏見を受けることもある。

●日ごろの備え
・普段から、一緒に住む家族や同室者、施設職員、または近隣の住民や「見守り隊」、民生委員や保健師などとよく話し合い、交流を深めておく。
・できれば自分の障害のことを伝え、普段から相談や支援を求めることも練習しておく。
・非常時に連絡を取り合える仲間や知人、施設職員など必要な連絡先を準備し、控えておく。
・地域活動支援センターへの登録をする。安否確認をしてもらえる等の可能性が高まり、次への支援も受けやすくなる。
・「防災カード(緊急時対応カード)」(仮称)を作り、携帯する。氏名、住所、血液型、自らの病気や障害について、緊急時連絡先、かかりつけの病院名と主治医、服用している薬の名前などを記載する。
・平時より2〜3日分の薬や、処方箋の写しを携帯しておく。
・市町村によっては災害時要援護者台帳等を作成し災害時の対応に備えている。グループホーム等の「利用者名簿」の開示を求められる場合があるので、自らの個人情報の開示についてどうするか、よく検討しておく。
・当事者の組織で、災害時マニュアルを作成しておく。

薬

●災害が起きたら
・声を出して危険の発生について同居者や隣人、隣室の人に伝え合う。いざという時は、遠くの支援者より身近な仲間が頼りになる。
・正確な情報を得ることに努める。ラジオや携帯電話は、災害時、情報を得るのに役立つ。外出時には、近くにいる人に安全な場所や避難場所などについての情報を聞くこと。また、どうしてよいかわからない時に相談できる人を決め、お願いしておくとよい。
・施設利用者は、原則的には職員の指示に従うこと。
・大きな地震の時は、慌てて屋外に飛び出さず、頭を保護したり机やテーブルの下に隠れる等の行動をとる。
・日ごろから準備しておいた「防災カード」、常備薬、その他の非常用品を持ち出す。

##まとめ
マニュアルの全文は、こちらで見ることができます。避難所での過ごし方や、健常者に対する障がい者への支援の仕方についても明記されています。いつ何が起こるかわからない今日この頃、自分の命は自分で守るということを意識して、早いうちから備えを始めておきましょう。

東京都心身障害者福祉センター「防災マニュアル(障害当事者の方へ)」

公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会、障害者放送協議会 災害時情報保障委員会「障害者と災害─障害者が提言する、地域における協働防災のすすめ」

取材協力:宮城県保健福祉部障害福祉課、東京都心身障害者福祉センター、公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会

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