あすのためにそうぞう
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ライター:池田都
「想像する事は実現できる」というCMをふと思い出した。
今回の創造に至るまで、想像の中にあるもの、それは「コミュニケーションを取りたい」という心から生まれた。
あるクラウドファンディング(※リンクは下記参照※)について、紹介したい。
商品の名は「ノートラブル」
ターゲットは広く「接客業」
アルバイト先のカフェで、耳の不自由な客とのやりとりが思うように行かなかった経験が開発のきっかけだという。
聞こえる側もジレンマを抱いている。もっと何か出来るはずだ、何らかの形で解消できないかと考えた大学生たち「ライクアス」による新しい形の筆談具である。
ライクアスFacebook
※ノートラブルのクラウドファンディングはこちらへ!
レジや受付横などに置けるコンパクトな卓上型
あらかじめ想定されるやりとりのいくつかをシートに書いて貼り、指差しなどで確認が出来るものとなっている。ホワイトボードも付いているので細かなやりとりにも対応。
これまでもアナログからデジタルまで「筆談ボード」や「指差し帳」「字幕アプリ」は各種あり、それぞれ利用してきた。しかし場面によっては、どこか今ひとつ痒いところに手が届かない、一方通行にも似た感覚があった。
銀行やバスなど「筆談具あります」の表示/案内がかかっているのを見かける事も増えたが、実際は残念ながら活用されるシーンは極めて少ない。
咄嗟の際の「書く」はまどろっこしさを呼ぶもので、加えて時間が制限されている中では、読み取りにくい字となる場合もある。結果、二度手間となり、互いに申し訳なさが生まれてしまうのだ。
私のように中途失聴者で口話が出来る者は「聞こえている」と勘違いされる事も非常に多い。相手は筆記して、こちらは声で返事をする時間差。なんとなくフェアじゃない感じ。
特に接客の場では要点だけを書いて欲しいのだが、接客業であるが故に「全文」書かれる方ばかりという点も、時間や手間に拍車をかける。個人差はあれど、当方なら「他に何か?」だけでよいのだが、「他に何かご用件はございますでしょうか?」となる。「単語だけでいいので」と伝えても心情的にそれが出来ないわけだ。何だか心苦しい。モヤモヤはいつもついてまわる。
そこでノートラブルの良さのひとつに「提供側が用意する」という点がある。あらかじめ用意する事でまごつきは減り、利用度に従って上書きされ、使い勝手も上がっていくだろう。将来的には外国人や高齢者、他の障がいにも応用される可能性も秘めている。
実物を知るまで、メカニカルな何かをぼんやりとイメージしていたせいだろうか。手にした時の第一印象は、手作り感とあたたかみ。そう言えば、品物の説明を受ける中に、強く印象に残った部分があった。
それは「ピンク色の紙」に表される「ここは”気持ち”を書く欄です」という一言に集約される。
ノートラブルのクラウドファンディングはこちらへ!
ノートラブル
ノートラブル
ノート(筆談)とNoトラブル(コミュニケーションの壁をなくしたい)をかけたものが由来だという。
よいネーミングだと思う。
あらかじめ想定されたやりとりをスタッフが話し合って決める事で、職場の輪、コミュニケーションにも役立つだろう。
加えて手書きであることは「手紙の良さ」に通ずるものがある。少なくとも書いている間は「相手の事を考えている」。であるからこそワンクッションあっても、もらうと嬉しいもの。
この時代だからこそ。
アナログで。
考え、思いやり、
心に触れるものを。
やがてSFや近未来映画で描かれるような、言語を超えて、空中に会話が表示されたり、脳にダイレクトに訴えかける仕組みも生み出されるかも知れない。学習したAIによる、本音や建て前までも網羅した「意訳」も現れるかも。
「聞こえる/聞こえない」「見える/見えない」「わかる/わからない」等は全て「感じる」事が出来る世の中になるかも知れない。
そうしてそれはもしかしたらとてもシンプルな形になるのではと思うのだ。つまり手をつなぐ、触れるといった、ハートに訴えかけるものではないだろうかと。
どんなにどんなに進化したとして、ヒトがヒトである限り、そこにココロがある限り、ふれあいやぬくもりは生き続けるから。
人とのつながりで大切なものは何か。そう、これは原点。
そうした「思いやる心」から生まれたものが商品化され、接客をする上での不便を解消し、理解や笑顔を呼び、所謂WIN-WINの関係になれる──。
大学対抗のSカレ(公式サイト)を突破した和歌山大学の学生チーム「ライクアス」が、この夏、商品化に向けてクラウドファンディングに挑戦する。
垣根を越えていく未来を想像し、多くの過程を経て、ここまで来たライクアス。
大きな大きな応援の輪を作ってほしい。
さあ、みんなの願いを乗っけて、明日のために。いざ、いざ!
ノートラブルのクラウドファンディングはこちらへ!
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ライター 池田都
1968年生まれ。5才からの片耳難聴を経て、中途失聴。映画レビューを中心としたフリーランスライター。パリのアメリカ人ならぬ東京の大阪人。「ひとの心は善である」という揺るぎなき思いが、揺らぐ時もある今日この頃を生きています。 Twitter: https://twitter.com/two_is_one
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