最新製品も!視覚障がい者向け製品・サービス発表会レポ
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ライター:榎戸篤(えのきど)
2022年10月14日、視覚障がいの課題を解決する製品などを発表する「VISI-ONEアクセラレータープログラム」デモデイが開催されました。
賞金は、なんと総額1200万円!
発表された最先端の製品・サービスとは、どんなものか?
そして、受賞した企業とは?
レポートしていきます!
「VISI-ONEアクセラレータープログラム」とは?
VISI-ONE(ビジワン)アクセラレータープログラムは、視覚障がいに関わるイノベーションの創出を目指し、企業・団体からのアイディアや製品の事業案を募るものです。
主催は参天製薬株式会社(以下 Santen)、特定非営利活動法人日本ブラインドサッカー協会(以下 JBFA)、一般財団法人インターナショナル・ブラインドフットボール・ファウンデーション(以下 IBF-Foundation)。
第1回となる今回の発表会(デモデイ)には、約40件ほどの応募から選ばれた6社が集結。総額1200万円の賞金(受賞企業2社に300万円、6社全てに100万円)が授与されました。
発表された最先端の視覚障がい者向け製品・サービスとは?
気になる発表企業と製品・サービスは以下の通りです。
▼株式会社 Ashirase
靴に器具を挿入し、足元を振動させることで目的地まで道案内をしてくれるナビゲーションシステム「あしらせ」を発表。
ナビゲーションシステム「あしらせ」使用イメージ
「あしらせ」は、すでに多くのメディアで取り上げられており、2022 年度内のサービス開始を目指しています。
▼株式会社GATARI(ガタリ)
スマートフォンのカメラを空中にかざすと、あらかじめ設定された音声コンテンツを楽しめる「Auris(オーリス)」を発表。
MRプラットフォーム「Auris(オーリス)」使用イメージ
博物館・テーマパーク・商業施設などでの利用が想定されており、晴眼者向けコンテンツはすでに導入事例もあるそうです。
▼クラスリー株式会社
現在開発中の、テキスト原稿を人間に近い精度で読み上げるソフト「Alterly(オルタリー)」を発表。
音声読み上げソフト「Alterly(オルタリー)」イメージ
▼株式会社コンピュータサイエンス研究所
カーナビゲーションのように、目的地へ音声でガイドするスマ―トフォンアプリ「EyeNavi(アイナビ)」を発表。
右左折、交差点の場所、障害物の有無を音声で伝えてくれるアプリで、現在実用化を進めているそうです。
視覚障がい者歩行支援アプリ「EyeNavi(アイナビ)」使用イメージ
▼MAMORIO株式会社
現在開発中の、自動販売機の場所、販売している物の情報などをナビゲートするアプリを発表。
自動販売機の場所探知&購入ナビシステム使用イメージ
▼リンクス株式会社
点字ブロックに貼られた QR コードをiPhone のカメラで読み取ることで、音声で目的地まで誘導してくれるアプリ「shikAI(シカイ)」を発表。
音声誘導アプリ「shikAI(シカイ)」使用イメージ
すでに東京メトロの 9 駅で採用実績があるそうです。
受賞は株式会社 Ashiraseと株式会社GATARIの2社!
気になる受賞企業は・・・
「Business Innovation Award」に株式会社 Ashiraseが、
「Social Innovation Award」に株式会社GATARIが、
選出されました。
以下、2社の発表内容です。
▼Ashiraseのプレゼン内容
歩行ナビゲーションシステム「あしらせ」の発表には、千野歩代表取締役CEOが登壇しました。
株式会社Ashirase 代表取締役 千野歩さん プレゼンの様子
千野CEOは、視覚障がいのある家族が事故にあったことがきっかけで研究を始めたと話しました。
そのうえで視覚障がい者が歩行する時、「情報を一気に集めることで大切な情報が抜け落ち、道に迷ったり、交通事故にあっている現状」を知ったと語ります。
そして安全面に集中できるよう、「あしらせ」は聴覚を邪魔しない振動で誘導を行うようにしたといいます。
「障害物も教えてもらえるか?」という質問に対し、千野CEOは「安全は利用者にお任せしています」と答え、その理由を「あしらせが壊れた時、利用者の安全能力が落ちていて歩けなかったというのは違うと思います。あしらせは安全だけれども、安全能力もついていくという将来が良いと思っています」と話しました。
今後の展開についても、利用者のデータを集め、視覚障がい者が迷いやすい場所、つまずきやすい道などを解析し、歩きやすい道を提案・案内する構想も語りました。
筆者は、このビッグデータが解析されることで、あしらせの機能が向上するだけではなく、視覚障がい者の事故の解明、安全な道路・交通に向けた提案にもつながるのかもしれないと感じました。
▼GATARIのプレゼン内容
スマホのカメラを空中にかざすと音声コンテンツが流れる「Auris」の発表には、竹下俊一代表取締役CEOが登壇。
株式会社GATARI 代表取締役 竹下俊一さん プレゼンの様子
「街はメディアでもあって、様々な情報と出会う場でもあります。しかし、視覚障がいの方はそういった情報を得ることをあきらめざるを得ない課題があると知りました」と述べ、「この製品で豊かさや楽しさを提供したい」と話し始めました。
プレゼンでは、デモ動画も上映されました。
施設を案内する男の子のアナウンスが流れ、「3メートル先に階段があるよ。全部で40段」という基本情報に加え、「ここから先はオフィスエリア。左手は建てている途中だけど病院ができるんだ。右手のガラスの向こうには展示場が広がっているよ」といった景色の説明や、「この店はお酒があるダイニングバーだよ。クラフトビールがおいしいって。営業時間は〜」という店舗情報まで教えてくれました。
今後の展開について、Aurisはすでに晴眼者などに向けたコンテンツが存在しており、ここに視覚障がい者向けコンテンツを加えることを考えていると話しました。
筆者は、すでに広く利用されているアプリにコンテンツがプラスされることで、普及しやすく、実現しやすそうだなと感じました。
株式会社Ashirase 受賞発表の様子
株式会社GATARI 受賞発表の様子
インタビュー イベント企画の思い
最後に、今回の「VISI-ONEアクセラレータープログラム」を主催したSantenの朝田雄介さんにインタビューを行いました。
―――この企画は、どのようにして始まったのでしょうか?―――
朝田さん「JBFAとIBF-FoundationさんとVISI-ONEプロジェクトのやりとりをする中で、視覚障がい者の雇用も活性化するには新たな製品・事業が生み出されるしくみそのものを作ることが大事なのではないかという話になりました。
実現できた人はほとんどいないけれど、もしできれば、製品・サービスを開発する後続の方も生まれるのではないかと考えました」
―――発表会を通じて、企業が変わったことはあったのでしょうか?―――
朝田さん「数カ月間、アドバイザリーボードとして視覚障がい当事者に発表企業の企画や実証へ加わってもらいました。そのことで企業側も変わっていったと感じています。
最初はどのようにコミュニケーションしたらよいのか戸惑いもあったのですが、どんどん身体的な特徴などは気にならなくなり、より深い課題に取り組んでいったと感じています。
私自身も、視覚障がいがあるからこそ出てくる新しい発想、努力から見えてくる視点などを聞いて、刺激をもらいました」
―――最後に、プログラムの今後の展開を教えてください―――
朝田さん「これから、『インクルーシブ領域で新しい事業を作るといえば、VISI-ONEだよね!』と言ってもらえるようになってほしいなと思っています。そして、ここからユニコーン企業が生まれるようになったら良いなと考えています」
最先端の視覚障がい者向け製品やサービスが集う本イベント。
ここには開発企業だけではなく、主催者の熱い思いもありました。
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ライター 榎戸篤(えのきど)
テレビ番組の制作会社で働きながら、ライターとして活動する視覚障がい当事者。3歳の時、保育園で転んで怪我をし、弱視に。視力は左0.06、右0。 障がい当事者ら向けの旅行サイト「COTRAVEL」などで執筆中。 https://www.cotravel.jp/mypage/5e9438bd76fc4/ 記事のご感想などありましたら、こちらにいただけると有難いです。 uj092021@yahoo.co.jp 記事は、ひとつひとつを丁寧に、懸命に、心をこめて・・・書かせていただきます!
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