障害者手帳を見せたくない!心のバリアを軽減し外出しやすくするアプリ「ミライロID」とは?
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ライター:Media116編集部
みなさんこんにちは!Media116編集部です。みなさんは障害者手帳の割引を受ける際に、手帳の現物を提示することに抵抗感やめんどうくささを覚えることはありませんか?今回ご紹介するのは、スマホアプリに障害者手帳の情報をインストールするだけで現物の提示をしなくても良くなる!?アプリ、「ミライロID」について取材してきました!
障がいのある私がもっと外出しやすくなる!?「ミライロID」ってなに?
株式会社ミライロが開発した人と企業をつなぐ、障害者手帳アプリ「ミライロID」。ユーザーは障害者手帳の情報、福祉機器の仕様、求めるサポートの内容などを「ミライロID」に登録し、それを提示することで提携している公共機関や商業施設において障害者割引や、必要なサポートをスムーズに受けられるというものです。
「ミライロID」の最大の目的は「障がいのある人が外出しやすくなる社会を実現すること」。障がいのある人と企業、相互の情報共有の負担を軽減しスムーズにすることでそれを実現しようという試みです。例えば「カバンなどから出すのが面倒」というバリアや、「障害者手帳を出すことへの抵抗」という心のバリアを、スマホを提示するだけで軽減し、障がいのある方がより外へ出たいと思うきっかけづくりに貢献しています。
■ミライロID WEBサイト
障害者手帳の代替手段として利用できるだけではなく、一定期間になると登録者の障がい特性に合わせた情報が届くという便利さもあります。車椅子ユーザーにはメンテナンス情報であったり、その他身体障がいのある方には福祉機器情報についてなど。障がいに関することだけではなく、住まい、仕事、バリアフリーでのお店情報が配信される仕組みです。
(配信については今後、順次実施を予定しています)
2019年8月末時点での「ミライロID」が利用できる協力企業は下記の通りです。
●鉄道
西武鉄道株式会社(回数乗車券または定期乗車券の発売のみの取扱い)
※他の乗車券の場合には適用されません。
※回数乗車券または定期乗車券の区間は、西武線内の駅に限られ、他社局を含む連絡定期乗車券の発売時には適用されません。
嵯峨野観光鉄道株式会社(全3駅)
●タクシー
日の丸交通株式会社
西武ハイヤー株式会社
●航空
日本航空株式会社
●バス
西武バス株式会社
●レジャー
株式会社アワーズ(アドベンチャーワールド)
吉本興業株式会社(ルミネtheよしもと)
株式会社ACM(アンパンマンこどもミュージアム)
今後、交通事業者など更に連携の輪を拡大させていく見込みです。
「恋人の前では障害者手帳を出したくない」開発までの想い
ご自身も車椅子ユーザーである株式会社ミライロの代表取締役社長垣内さんが「ミライロID」を開発するまでの経緯や想いを語ってくださいました。
「私が障害者手帳を交付されたのは5~6歳頃でした。その時に私は障害者手帳というものを知らなくて、すごく違和感があったんです。障がい者とみなされることによって割引があることにも。自分だけ割引があることへの違和感、そして人前で障害者手帳を見せることへの抵抗がありました。」
「家族の前では出せても恋人の前では出したくない。障害者手帳を見せることなく、QR決済みたいにパッと提示できたらいいなという個人的な想いがありました。また、性善説に立てばありえないことですが、障害者手帳の不正利用が多く、企業も確認の手間が追い付かず持て余してしまっているという現状をどうにかできないかと考えたことが開発のきっかけでした。」
障害者手帳にはプライバシー情報が満載だと垣内さんは言います。例えば障害者割引の適用には必要がない「氏名」など、知られたくない・知られる必要がない部分まで、提示の際に見られてしまいます。必要な情報だけを、必要に応じて公開できれば良いのではないかと考えられているそうです。
「ミライロID」でクリアしたい課題は2つ。障害者手帳を提示するという心理面の負担の軽減と、利便性を向上させることだと言います。
国と企業を動かす!期待を一心に受けて
「ミライロID」を開発するにあたり一番にネックになったのは国が定める規則でした。障害者手帳で割引を受けるには「現物確認」と言って障害者手帳の現物を利用したい場で提示しなければならないというルールがありました。スマホ携帯で障がい内容を提示する「ミライロID」を普及させるためには「現物確認」が大きなネックだったのです。
そのためミライロは省庁に何度も根気強く現物確認の規則を変更するよう提言をしてきました。そして2019年の1月、省庁は現物確認の規則を取り払い、不必要とすることに決めたのです。ミライロの熱意が国を動かしたと言っても過言ではありませんでした。
普及させていくためには国を動かすと同時に、企業も動かしていく必要があります。企業はそれぞれ決まったオペレーションがあり、それを変えていくことはとても難しく時間のかかることです。協力企業に手を挙げてもらうまでには時間がかかりました。しかし、長く障がい者支援を行ってきたミライロの実績を信頼して頂き段々とその輪が広がっていったのです。
垣内さんはもう一つ、現在課題になっていることがあると言います。2019年7月にリリースしてから、障がい特性やお住まいの地域などについて幅広い方が登録されているそうです。しかしまだ精神障害者手帳で障害者割引を受けられる協力企業が少ないことや、全国規模で展開するということに追い付いていない現状があると言います。沢山の期待や応援の声を頂いている中で、期待に沿えるように輪を広げていきたいと語るのでした。
どんな小さな声も聴く「当事者目線」での改良
「ミライロID」は当事者の感情や声に寄り添って開発されていることが大きな強みでもあります。座談会を開催し声を集めたり、様々な意見を取り入れることによって当事者目線の開発に取り組んできました。
例えば精神障害者手帳で割引が使える協力企業を増やして欲しい、施設で暮らす知的障がいのあるお子さんの療育手帳を親御さんが管理しているので家族間で共有できるようにしてほしい…といった要望や、「もっと外に出たい」という想いからレジャー施設の協力企業を増やしてほしいといった要望まで様々です。
「ミライロID」のタッチだけで改札を通過できるようにしてほしい、車椅子の座席確保をネット上でできるようにしてほしい…など、企業との長いスパンでの交渉も必要になる要望もあるそうです。対応は一見難しいのでは?と感じるような要望でも、垣内さんはひとつひとつの声を大切にし、「少し時間はかかるけれど、必ず実現させる」と言い切るのでした。その垣内さんの一言は、「ミライロID」の無限の可能性を感じさせるには十分でした。
成功体験の積み重ねが外の世界との懸け橋
「障がい者が外出をためらうということにはいくつかの要素が絡んでいると思います。今は昔ほどありませんが、車椅子の自分に対する周囲の視線が気になったり。または。バリアフリーが整っていて行ける場所がわからないということで外出を控えてしまったり。金銭面の問題もあるでしょう。」
ミライロが運営する「Bmaps」ではバリアフリーで楽しめるお店を掲載しています。そのデータ上では現在約8000軒のお店がバリアフリーで楽しめるのだと言います。そういったツールを使い、一歩外に出てみて、成功体験を積むことが大切だと垣内さんは語ります。
「意外とここもいけたりするんだ、と段々とわかってきて、ひとつできれば次に、今度はここ行ってみようかなという希望や願望みたいなものが芽生えてくると思うんです。」
外に出て楽しかった、という「成功体験」が積み重なることで障がいのある方のQOLが向上していくのではないかと言います。
最後に
「ミライロID」をアップデートしていく上で、垣内さんはみなさんに伝えたいことがあると言います。
「是非みなさんのお声をお寄せ頂きたいです。どこで使えるようになったらいい、どういう機能がほしい、ここが不完全なので使いづらい、アクセシビリティの観点からの相談などみなさんの視点や経験を元にアップデートしていきたい。」
ひとつひとつの改良も「当事者目線」を一番に考え、利用者の幸せを追求するその姿は非常に素敵で、そして今後もできることで応援していきたいと強く思ったのでした。
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「ミライロID」についてのお声や、ミライロに対しての応援のお声はこちらから!
■ミライロIDリクエスト募集
こちらの下部に、場所のリクエストフォームがあります。
■アプリ内のアンケートからもお声を届けて頂けます!
■Twitterでも募集しています!
どうぞお気軽にお気づきの点などお寄せください。一緒に「ミライロID」を盛り上げていきましょう!
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障がいのある方のためのライフスタイルメディアMedia116の編集部。障がいのある方の日常に関わるさまざまなジャンルの情報を分かりやすく発信していきます。
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