美容室が楽しくなる!バリアフリー美容室を車椅子ユーザーが体験してきた!
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ライター:Media116編集部
みなさんこんにちは!Media116編集部です。皆さんは行きつけの美容室はありますか?障がい配慮があって、設備面でも気持ちの面でもバリアフリーな空間で髪を整えてもらう…そんな美容室を見つけるのは、なかなか難しいですよね。今回ご紹介するのはバリアフリー美容室「familiar(ファミリア)」です。是非次回の散髪の際の参考にしてみてくださいね!
設備だけではない、心のバリアフリー
写真:「familiar」スタッフの皆さん
さて今回ご紹介する「familiar」。「familiar」とは『親しい、遠慮なく気兼ねない、打ち解けた』という意味があり、そんな関係をお客様と築いていきたいという想いから名付けられたそうです。屋根裏部屋風の店内は、バリアフリー&キッズルーム完備!入口にも左から赤ちゃん、ベビーカーの親子、車椅子のピクトグラムがあります。普段美容室に行きづらいと感じることのある方が、心地よく安心して時間を過ごして欲しいという想いがあるそうです。
「familiar」は国立駅と谷保駅の中間地点にあります。当日、私達はJR国立駅からバスで向かいました。そして「第一団地」停留所で下車しお店に向かいました。少し入り組んだところにあり、どうしてこの立地にされたのか気になったので店長の老田(オイダ)さんに伺いました。
元々国立駅前のサロンで働かれていたという老田さん。独立を考えた時に懇意にしてくださっていたお客様起点でお店の場所を考えられたそうです。同時に、前職では障がい者の受け入れがほとんどできず、その時から障がいについて意識されていたそうです。独立する時には障がいのある方も年配のお客様も来店できるようなお店を作りたいとこの場所を選ばれたそうです。
入店時からバリアフリーへのこだわりをみることができました。こちらのスロープはなんと手作りだそう!実際に車椅子体験をし、どの角度ならスムーズに入店できるか考えながら製作されたそうです。
店内はとてもキレイで開放感のある空間です。広々とした部屋の中に席が2席のみ…なぜ?と疑問を感じました。しかし、これには大きな理由が…
「車椅子が通れる広さをつくることを重視しました。この規模のお店だと6席作れると保健所の方には言われましたが、そうしてしまうとバリアフリー上難しく、2席にしてゆとりをもたせました。保健所の方にはもったいないと言われましたが(笑)席を増やしてしまうと来ることができないお客様がいたり、自分のやりたいこととずれてしまうのならやるべきではないと思いました。」老田さんはそう語ります。
「familiar」には身体障がいのある方が多くいらっしゃるそうです。口コミで認知度が広がっているといいます。
「病院の先生が紹介してくれることもあるそうです。元々担当の患者さんがこのお店の事を知っていて、話を聞いた先生がこういうお店があるらしいというお話を他の患者さんにされて広がっていきました。」
例えば静岡の病院に入院している方など、県外から来る方も多いと言います。「時間をかけてでも来たいサロン」と認知されていることがよくわかります。ヘアドネーションされる方も多く、月に4人程来店があると言います。
基本的には付き添いの方やヘルパーの方に傍にいてもらう形をとっているそうです。
トイレもバリアフリー様式で、車椅子が旋回できる程の広さをとっています。トイレの両脇には手すりも付いています。
誰もが来やすい美容室に
こちらは小さい子を持つ親御さんたちに嬉しいキッズスペース。
「お子さんが小さいうちは美容室に行けない人が多いですよね。お子さんを預けられない方が使ってもらえるようにキッズスペースを用意して貸し切りでご案内をしています。」と老田さん。お子さんが遊んでいる雰囲気を見ながらカットできるのも良い点ですよね。
「健常者・障がい者・ママさんパパさん・高齢者…皆が来やすい美容室は少ないし、ありそうでないですよね。最近ではお子さんお断りの美容室も多いし…自分も父親だから子供が小さいと周りに気を遣ってしまう気持ちがわかります。だからこの美容室ではそういうストレスをなくしたいんです。」
ご自身がパパだからこそわかるお子さんをお持ちの方の気持ち、そしてその気持ちに寄り添った美容室づくりをされているのです。
椅子への移乗の際には必要な介助をしてくださり、慣れている様子も伝わってきます。
見たことない!レールの上を動くシャンプー台!?
こちらのシャンプー台は福祉機器ではありませんが、移動の負担をなくすということに特化しています。使っている美容室は多くないとのこと。シルバーの部分がレールになっており、レールに沿ってシャンプー台が移動してくる形です。
椅子に座ると、椅子が回転しシャンプー台の方に向いていきます。同時にシャンプー台もレールに沿って椅子に近づいていき、車椅子から移動移乗することなくシャンプーを受けられます。
一般的な美容室であれば、カットは車椅子上で行ってもシャンプーの時だけは車椅子からシャンプー台へ移乗する必要があります。頚椎の保護の面で車椅子の方はシャンプー台に関してストレスを感じていることが多いそうです。また、移乗するのは体力を使いますし、同時に頭にタオルなどを巻かれてしまうとバランスとりづらいという問題が発生してきます。
「一般的な美容室ではどんな角度でシャンプーされるか心配です。スタッフの方が慣れていない場合など、シャンプー中に首がきつくてなって途中で“やめて!”となってしまい、美容室に行きたくなくなることすらあります。」と車椅子当事者のMedia116スタッフは言います。
だからこそ「座ったら全てが完結する」ということはとても重要で、そして何より安心感を感じさせてくれるのですね。
こだわり抜いたバリアフリー設計
老田さんが障がいのある方に興味を持ったきっかけは、親戚に重度身体障がいのあるお子さんがいらっしゃるということからでした。
「自分の知らない世界を身近に教えてくれた存在です。このお店を作る時、バリアフリー設計をするのもその子がきっかけで思いついたということも大きいです。」
美容室だけではなく飲食店でも、「バリアフリー」という表記はあれど実際に行ってみると当事者の納得のいくものではなかったりすることがありますよね。老田さんは「当事者が来たいと思う本当のバリアフリー美容室」を作り上げたかったのです。
使用している椅子は珍しいタイプのモノで、とてもお高いそう…!レッグヒーターもついているので、足元も快適に過ごせます。バリアフリー面で嬉しいのは椅子にコンセントプラグがついているので、床にコードが散乱することなくドライヤー等ができるということ。躓いたりする危険がありません。
こちらが髪を乾かして頂いている様子。確かに床はキレイなまま!設計の段階で、車椅子が通ることができる幅の確保や、動線上にコンセントがないことにこだわりました。コンセント埋めるために床を掘ったりと、デザイナーと相談に相談を重ねこのバリアフリー空間を作り上げたそうです。
「普通に通ってもらえるような美容室になってほしい」
写真:店長の老田さん
独立し、お店を出すときからバリアフリー美容室にしたいと考えていたと老田さんは語ります。
「障がいのある方のボランティアに参加して、話をしていて、美容室に行くことのハードルが高いとしりました。じゃあどういう環境なら来やすいか?ということをリサーチしてバリアフリー設計をしました。行きやすい環境、入りやすい設備・・・人によってケースが違うので求められることも多いし、100人いたら100パターンあるので難しい面もありました。」
老田さんは考えに考えぬいて、試行錯誤の末、この「familiar」を立ち上げられました。
「家で障がいのあるお子さんの散髪をしている親御さんの負担をとってあげたい」
「家の中で過ごすことが多い方に外に出る機会をつくってあげたい」
「非現実的な空間を経験させてあげたい」
そんな思いでこのバリアフリー空間を作られたのだと言います。
「キレイにすることで喜んでくれる。意思の疎通ができなくても“感じ”で喜んでくれているとわかると嬉しいです。言葉で伝わらない価値も醍醐味のひとつですね。」老田さんはそう笑顔で語ります。
どんな障がいがあってもキレイでいたいのは皆一緒ですよね。安心して身を任せられる美容室で、日常とは違う空間を楽しんでみるのはいかがでしょうか。
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