選択肢のない街(福祉サービスの地域格差問題について)
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ライター:風来坊
東北の片田舎で精神障がい(発症時は統合失調症と診断、現在は双極性障害他)と身体障がい(事故で利き手の小指が動かない、薬指は変形している)と共に生きている「風来坊」と申すものです。私の会社員時代の楽しみは“ごはん(食事)”でした。「今日はカレーにしようかな。カツ丼もいいな。やっぱりラーメンにしよう。」福祉サービスだって同じように自分にあったものを選択できるのが当たり前です。でももし、嫌いな食べ物を食べ続けなければならないとしたらどうでしょう。私のお話は当たり前のことが許されない“選択肢のない街”のお話です。
え?自分が地域の福祉サービスを受けられなかった意外な理由
現代の日本では障がい者が福祉サービスを選択できるという制度になっています(2003年から始まった支援費制度というものです)。
それ以前の日本では「〇〇という障がいのある人は××という福祉サービスを使いなさい」という障がい者には選択肢のない制度でした(これを措置制度といいます)。
では、2021年の現代において障がい者に選択肢があるかというと当然ですが地域差があります。
大都市や福祉に関心がある自治体ではたくさんの団体やサービスがあり、そうした地域で暮らす障がい者は選択できる機会に恵まれています。これはとても幸せなことだと思います。しかし、僻地や福祉に関心がない自治体では障がい者はどのように生活しているのでしょうか。
このお話は東北の片田舎で精神障がい(統合失調症)と身体障がい(事故で利き手の小指が動かない、薬指は変形している)と共に生きている私のお話です。
10年程前、私は障がい者の就職の支援をしていました。
しかし、同僚からのいじめで私は体調を崩し、退職、精神科に入院と悪い方へ転がっていきました。
退院した私は市役所に福祉サービスを求めたのですが「あなたが使えるサービスはこの地域にはありません」と言われてしまいました。どうして私が住んでいる地域で福祉サービスを受けられないのかというと、私が働いていた会社が“この地域で福祉サービスを提供している唯一の社会福祉法人”だったから、なのです。
私は現在も怖くて足が震えてしまうため、その社会福祉法人に近寄れません。
福祉サービスの地域格差
しかし、そこに行かなければ福祉サービスはこの地域で提供してもらえないそうで、その件について市役所に相談した結果として市役所から戻ってきた答えが「あなたが使えるサービスはこの地域にはありません」だったのです。
そこで、私はインターネットで受けたい福祉サービスをできるだけ近くで提供している場所はないかと自力で探すことにしました。
すると数件市内の法人がヒットしたので連絡してみると「市の条例で業種を変えました」という答えが戻ってきました。
どういうことなのか詳しく聞いてみると、私が住んでいる市では数年前に“福祉サービスは特定の法人しか提供してはならない”という条例が施行されたというのです。この条例の施行により、地域の小さな社会福祉法人は活動できなくなり、福祉サービスを提供できなくなったというのです。
この話を聞き、私は「大きな社会福祉法人しか福祉サービスを提供できないのでは障がい者の選択の機会が奪われてしまいます」と市議達に相談することにしました。すると市議は「その条例を知らないけど、大きな社会福祉法人は間違ったことをしないでしょ。」と自信満々で私に答えたのでした。
福祉サービスは誰のためのもの?
皆様にお聞き致します。
皆様は、
・お菓子を食べたくなることはありませんか?
(私はポテトチップののりしおが好きです)
・ジャンクフードを食べたくなることはありませんか?
(私はハンバーガー、ポテト、チキン、牛丼、カップラーメン、好きな食べ物がたくさんあります)
私だけの考えになってしまいますが、栄養バランスが整った食事だけが人を生かすのではないと思っています。ですから、大きな社会福祉法人(バランスの整った食事)の存在を否定しませんが、小さな社会福祉法人(ジャンクフード)だって地域に必要なはずなのです。
しかし、私の暮らす東北の片田舎では「障がい者は社会福祉法人△△で福祉サービスを受けなさい」という選択肢のない福祉が現代でも継続しているのです。
これでは福祉サービスは誰のためのものなのでしょうか。
行政が提供しやすいものだけが福祉サービス?
今は西暦何年?
以上が私の「選択肢のない街」のお話でした。
最後になりますが、私は現在も福祉サービスを受けられておりません。
そんな私を支えているのがリハビリに始めたプラモデルとそれを励まして頂いているSNSでの人との繋がりです。
人を傷付けるのも、救うのも、人のようです。
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ライター 風来坊
東北の片田舎在住のアラフォー。 児童虐待、いじめ、パワハラ、自傷による措置入院を経験。 田舎では福祉に偏りがあると考え30代から大学で福祉を学ぶ。 数年前には事故で利き手が不自由になり、現在はリハビリを兼ねた趣味(プラモデル、ニードルフェルト、UVレジン)に没頭中。 いつか全ての人が楽しめる駄菓子屋を開きたい。
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