一つじゃない 第6回
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ライター:風来坊
10円硬貨の表は「平等院鳳凰堂(世界遺産)」という寺院が描かれ、裏は植物(常盤木)が描かれています。
表と裏では見た目が違いますが、お店では「表」を出しても「裏」を出しても同じ価値で処理されます。
つまり、見た目が違っても10円は10円なのです。
しかし、「ギザ10」という硬貨の側面にギザギザが施された10円は製造数が少なくコレクターには10円以上の価値で取引されているそうです。
モノの見方は一つじゃない。
風来坊の恋愛観もひとつじゃない
私、風来坊は恋愛マスターではありませんが何度か異性とお付き合いしたことはあります。
精神障がいも身体障がいもなかったときは、合コンに参加してパクパクご飯を食べている間に異性と仲良くなれたので恋愛を難しく思っていませんでした。
その後、精神障がいを患うと「出会いがあっても相手に精神障がい者とバレたらどうしよう…」という不安がよぎるようになり、実際に異性とお付き合いするようになってもお相手に病気がバレないか不安でした。
そんなある日、当時お付き合いしていた看護師さんとお泊りしていた際に薬を飲んでいるところを見られ、彼女は薬の「殻」に書かれた薬品名を見て「あなた精神障がい者…なの?」と聞いてきました。私は「うん…少し眠れなくて。」と答えると彼女は何も言わずに付き合い続けてくれました(でも、別れました)。
「障がい者だから」「バレたらどうしよう」と心配し過ぎて、必要以上に自分を飾ったり、隠すことは意外に無意味なのかも知れませんね。
支援者の障がい者像もひとつじゃない
私の大学時代の卒業研究は「障がい者の恋愛」でした。
「障がい者の恋愛」を題材に選んだきっかけは友人の障がい当事者の「結婚したいから婚活を頑張っている」という話でした。
「障がい者だから恋愛してはいけない」なんて法律はないのに、私は様々な福祉施設で当たり前のように障がい者の恋愛をコントロールしようとしている様を見てきました。
障がいがあろうが、なかろうが、お互いを受け入れられる存在を求めることを他人に邪魔されるなんてことはあってはならないのに、どうして福祉施設は人の恋愛をコントロールしようとするのか。
私は県内の複数の福祉施設に「利用者(障がい当事者)の恋愛についてどう思うか?」とインタビューして回りました。
その中で印象的だったある施設の管理者(50代・女性)から帰ってきた回答が
「そんな(障がい者の恋愛)ニーズある?」
「そもそも利用者(障がい者)は自分と話せて満足している。」
でした。
その管理者は「自分は長年、福祉畑で働いている(訳:自分は福祉のベテランだ)」と豪語していましたが、彼女には「障がい者も人間」という考えが抜け落ちているように思え、私は彼女の口から出る言葉を不快に思っていました。
人間には「所属欲求」というものが存在し、自分がグループに所属していると安心する性質があります。
それは「学校」「職場」だけでなく「家族」「恋人」も含まれるので、「障害があろうが、なかろうが、お互いを受け入れられる存在が欲しい」と思うのは人として当然のことで、隠す必要なんてないのですが、障がい当事者を取り巻く環境はそれを許してくれないのかも知れませんね。
障がい者の恋愛観もひとつじゃない
テレビで車いすに乗った男性が支援員と思われる女性に「自分は見た目のせいで恋愛できない。」と話すと支援員と思われる女性は男性を励ましましたが、男性は「じゃあ○○さん(支援員と思われる女性に対し)俺とセックスできる?」と続けて話したのでした。
男性は支援員と思われる女性に甘えて話したのでしょうが、異性に対して平気で「俺とセックスできる?」と聞く様子に私は違和感を覚えました。
私の違和感はさて置き、男性の中では「恋愛=セックス」という認識のようです。
私はこれと似た言葉を大学時代に聞いたことがあります。
それは卒業研究である障がい当事者に「あなたの恋愛観を聞かせてください」とインタビューした時のことでした。
「恋愛は風俗で代用できる」
私にはない価値観でした。
おわりに
好きな人と「チューしたい」「エッチしたい」と思うのは当然の事です。
しかし、それ以外にも、自分の話を聞いてくれる、自分を受け入れてくれる、笑顔を見せてくれる、という心の安定を得られるのが恋愛だと私は思っているので、障害があろうとなかろうと、あなたに機会が来たなら怖がらずに飛び込んで頂きたいです。
宝くじのように「ハズレることもある」とわかっていたら、チャンスが来たときは挑戦した方がお得だと思いませんか?
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ライター 風来坊
東北の片田舎在住のアラフォー。 児童虐待、いじめ、パワハラ、自傷による措置入院を経験。 田舎では福祉に偏りがあると考え30代から大学で福祉を学ぶ。 数年前には事故で利き手が不自由になり、現在はリハビリを兼ねた趣味(プラモデル、ニードルフェルト、UVレジン)に没頭中。 いつか全ての人が楽しめる駄菓子屋を開きたい。
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