薬害エイズ裁判。和解から20年の今、HIVとエイズについて正しい知識を持とう。
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ライター:Media116編集部
1980年代の薬害エイズ事件により、不治の病とのイメージが強いエイズ。
血友病患者に対して非加熱製剤を利用したことから、全血友病患者の約4割がHIV及びエイズに感染したとし、製薬会社と厚生省(現:厚生労働省)に対して、損害賠償を求める訴訟が起きました。この痛ましい事件の裁判が本日3月29日に和解し、今日でちょうど20年が経過します。この経験からも、今日はHIVとエイズについて正しく理解し、差別や偏見が少しでも減ることを願います。
HIV感染=エイズではない
まず皆さんに知って頂きたいのは、タイトルの通りHIV感染が=エイズではないということ。
この事実だけでも、どれだけの方がきちんと理解していたでしょうか。
HIVというウイルスに感染すると免疫力が低下します。
初期症状として風邪のような症状が起きることがありますが、多くの人が自覚症状のない時期を数年過ごします。その後、免疫力の低下が進行し(※1)、指標となる疾患を発症するとエイズ発症と考えられています。
※1 現在ではウイルスの増殖をおさえ、免疫力を維持する薬が開発され、この進行をおさえることが可能となっています
日本だけでも年間約1,400名のHIV感染者、エイズ発症者
日本で初めてエイズ発症が報告されたのは1980年代に遡りますが、以来患者数は増えています。年度ごとに多少のばらつきはあるものの、厚生労働省エイズ動向委員会報告によると2015年(平成27年)発表の新規HIV感染者は990人、エイズ患者は423人と、年間で約1,400人の新規感染者がいると言われています。
主な感染ルートから見る、正しい知識と理解
これまで説明をしていたHIV感染についてですが、感染力は極めて弱く、日常生活においてうつるということは、まず起こりえないといっても過言ではありません。しかし誤った知識や思い込みで多くの人が傷つき、辛い思いをしているという事実を是非知ってもらいたいものです。
感染ルートは主に、下記3つに分けられます。
1、 性的感染 (HIV患者との性行為による感染)
2、 血液感染 (注射器の2次利用など。血液を経ての感染)
3、 母子感染 (HIV患者の女性による出産時に子供への感染)
このように、日常生活においての感染ルートではないため、
・一緒に食事をすると感染する
・一緒にお風呂に入ると感染する
・咳やくしゃみでも感染する
といったような行動では感染するリスクはないのです。
その為、職場にHIV感染者やエイズ患者がいるからといって、不安になることはありません。
医学の進歩と共にコントロール出来る病気へ
近年の医学の進歩に伴い、HIV・エイズは不治の病からきちんとコントロールをし、長生きが出来る病気への変化を遂げました。
デンマークの調査によれば1996年以前はHIV感染後の平均余命は7年と短命ではありましたが、医学の進歩に伴い平均余命は40年前後まで伸び、例え25歳でHIVに感染をしても、65歳までは健康に生活をすることが出来るという研究データも存在します。
残念ながら今の医学でも、この病気を完治させるということは未だ難しいものの、多くの方が定期的な通院(数ヶ月に1回程度)と1日1回~2回の服薬のみで、体調をコントロールしているのです。
また感染者の70%以上が、社会で就労している一方、会社に対して障がいの有無を開示している割合はまだまだ、日本での偏見・差別が強いことが伺えます。
このような記事から、HIV・エイズへの偏見、差別が減り、1人でも多くの感染者が生きやすい世の中になる事を願うばかりです。
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