【超福祉展】視覚障がい者の世界の見え方から思う健常者・障がい者という区別のない新しい世界
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ライター:Media116/超福祉展2017
こんにちは、わにです。てんかんがありながらゼネラルパートナーズでライターをしています。
「超福祉展」、とうとうはじまりましたね!「超福祉展」とは、障がいのある人や高齢者、LGBTなどのマイノリティ、福祉そのものに対する「意識のバリア」を、従来の福祉の枠に収まらないアイデアやデザイン、テクノロジーで超えていくという福祉の一大イベント。今年で4回目の開催です。
今年の「超福祉展」は、Media116が1週間密着で取材し皆様にレポートをお届けすることになりました!まさに「超福祉展」ウィーク。福祉の領域で何が起きつつあるのか?障害を抱えた人をはじめ、マイノリティに対するバリアはどう変わっていくのか?
まずは「視覚障害者の世界の見え方」というテーマで開催されたシンポジウム。イチ障がい当事者として参加してきました。
ゴールは「同じにする」のではなく「差異」を認めること
登壇者は東京工業大リベラルアーツ研究教育院の伊藤亜紗・准教授。同じ人間の中でも自分と体の違う人がいるという「身体の多様性」に注目して研究を始め、視覚障がい、聴覚障がい、吃音などさまざまな障がいのある方に話を聞いているそうで、今回は視覚障がいをテーマにした講演でした。
伊藤さんは障がいを「福祉論」ではなく「身体論」として捉え、研究を行っています。
「福祉とは最終的には”健常者と障がい者の差異をなくしていく”のがゴール。しかし、身体論とは”同じにする”のではなくその”差異”に注目する研究です。」
そう、この「差異」という言葉が今回のキーワード。
差異こそ興味深い、と伊藤さんは言います。
「例えば目が見えない人が行きたい場所に自力で行けない、というシチュエーションがあった場合、福祉の観点では点字ブロックを配置することを考えるでしょう。それはとても大切なことだけれど、見える人がそこまで行くのと、見えない人が白杖を使って点字ブロックを目印にたどり着くのでは、結果的に同じところにたどり着いたとしても、その過程には大きな差異があります。その差異があることを認めることこそが重要です。」
では、目が見える人と見えない人では、その過程に一体どんな差異があるのか?
伊藤さんは「目が見えない人は五感全てを駆使することで、目の見える人には無い”マーク”を持っている」と言います。「マーク」というのは、目の見えない人が時間や空間を把握するために利用する「感覚の基準」のようなもの、と言えばイメージが沸きやすいでしょうか?
例えば、目の見えない人がしましまの柵の横を歩いた場合、柵の横を通り過ぎるだけで、柵の隙間から聴こえる音が変わって、しましまな柵があることが分かるといいます。他にも鳥の声で電線があることを認識したり、両足裏の感触で道の段差・材質を判断したり、、、顔全体に受ける風や髪の毛の引っ張られる感じなど、自らの「マーク」を駆使して世界を把握しているとのこと。
―― 目が見える人と見えない人にある「差異」です。
モノの”存在”に対する考え方自体に「差異」がある?
見えない世界の特徴は「予想できないこと」。
例として、伊藤さんは海鮮丼を食べるシーンを挙げていました。海鮮丼のように色々な種類のネタが一つの丼に盛り付けられている場合、口に入れた瞬間に想像していたネタと違う味に出くわす「期待はずれ」が起こり続けます。「見えない世界において予期ができないというのはとても重要なこと。そして、突き詰めて考えるとモノの”存在”に対する考え方自体が違うのではないか?」と。
見えないゆえモノの存在が予期しきれない→想定外のことが起こる→驚く、という一連の流れを毎回繰り返さないように、見えない人には、「それが存在している・していないの中間の感覚がある」のではないか。つまり「あるかもしれないし、ないかもしれない」という前提で行動しているということになります。
目が見えている人同士にも「差異」がある
「ソーシャル・ビュー」という芸術作品の鑑賞法があります。これは目が見えない人と見える人が「一緒になって」作品を鑑賞する、という試みです。目が見える参加者がその作品の特徴を言葉にし、見えない人が質問を投げかける。こうしたコミュニケーションを通じて視覚障害者は言葉で作品を観賞するというものです。
重要なのはソーシャル・ビューが、「見える人が見えない人のために作品を説明する」という、視覚的なサポートのみを目的とした鑑賞法ではなく、「見えている人の間でも説明の言葉がかなり違う」という差異を経験できること。
目が見えていたとしても、繊細な色の違いを言葉で説明するのは大変な作業です。なぜなら、そうした微妙な違いを言語化する能力に乏しくなってしまっているから。ソーシャル・ビューによって、目が見える人が見えない人に対して当たり前だったことを詳細に言語化する必要が生じ、脳内のあらゆる棚から言語を張り出して説明し、その結果分かり合えたり、分からなかったり・・・を繰り返します。
その過程において、見えている人同士でも、青っぽい紫を「なすの色」「やくざが着ているジャケットの色」「ラベンダーの色」などかけ離れた言語で説明するということが発生します。
――それこそが、目が見えている人同士でも「モノの見え方・感じ方に差異がある」証拠とのことでした。
健常者・障がい者という区別のない世界
「見えない人の世界の見え方」に関する話を聞きながら、イチ当事者としてふと感じたこと。それは「見える人の中にも感じ方の違いがあること、それは人間は本来個々で異なる存在であることを示しているのだ」ということ。
障がいがあること・無いことに関わらず、そもそも人間一人ひとりの感じ方自体に「差異」があるというのであれば、「健常者」や「障がい者」という括りにどんな意味があるのだろう?
見えるか見えないか、聴こえるか聴こえないか、それはただの人という個体としての「差異」であり、それを認める社会であるべきだと。「健常者」「障がい者」そんな区別がなくなる世界になるといい、と強く思わせてくれた講演でした。
「2020 年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展」11/13(月)まで開催中!
会場:渋谷ヒカリエ 8F「8/(ハチ)」
時間:11:00-20:00 (最終日は 16:00 まで)
サテライト会場:渋谷キャスト、ケアコミュニティ・原宿の丘、ハチ公前広場、代官
山 T-SITE、みずほ銀行渋谷支店、SHIPS 渋谷店、モンベル 渋谷店
URL :超福祉展公式ホームページ
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ライター Media116/超福祉展2017
2017年11/7(火)~11/13(月)まで渋谷にて開催される「2020 年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう 展」。 マイノリティや福祉そのものに対する意識のバリアを変えていく福祉の一大イベントをMedia116が密着取材します!
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