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まだまだ根深い・・・調査でわかった障がい者への差別と偏見の現状

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ライター:わに

みなさんこんにちは!てんかんと闘いながらゼネラルパートナーズで勤務しているわにです。実は弊社では「障がい者総合研究所」という障がい者の身の回りや意識に関する調査を行っている機関があります。そこで今回興味深い調査結果が出たので、みなさんと一緒に考えていきたいと思います!どうぞお付き合いください。

私達障がい者の59%は日々の中で差別や偏見を感じている

2016年4月1日に障害者差別解消法が施行され、障がい者への差別の禁止や、合理的配慮の提供が求められるようになり、約1年半が経過しました。しかし差別・偏見の解消や合理的配慮の普及に関しては、まだ多くの時間が必要になるのだろうと思います。
今回は障がい者総合研究所が昨年12月に実施した障がいと差別・偏見についての調査をひも解いていきたいと思います。

まず、326名の対象者の方へインターネットにて「日常生活において、差別や偏見を受けたと感じる場面があるか」という調査を行いました。その結果、「頻繁に差別や偏見を受けたと感じている」、「ときどき差別や偏見を受けたと感じている」と回答した人は59%という結果が。

日常生活において、差別や偏見を受けたと感じる場面があるか

今回は回答数の多い身体障がい者と精神障がい者で比較を行いましたが、障害別での差はほとんどありませんでした。

では、「どのような場所で差別や偏見を受けたと感じた経験があるか」の調査をしたところ、最も多かったのは「職場」で半数を超える56%、次に「公共交通機関」で30%でした。

どのような場所で差別や偏見を受けたと感じた経験があるか

ちなみに私は「差別や偏見を頻繁に感じている」に一票です。調査結果にもあったように、特に毎日使用する公共交通機関での偏見や差別は事故のようなもので避けられないんですよね。
私の場合、電車で優先席に座ればよく白い目で見られますし、ヘルプマークをつけて優先席の前に立っても、席を譲ってもらえるのは10回に1回程度です。

以前、電車で受けた差別・偏見を記事に書かせていただきました。

関連記事:「ここはあんたみたいなのが座るところじゃないんだよ!」と怒鳴られたてので、優先席の対象が誰なのかJR東日本に問い合わせてみたところ・・・」

簡潔にお話しすると、ある日優先席に座っていたら初老の女性に「どけ!ここはあんたみたいなのが座るところじゃないんだよ!年上に譲れ!」と怒鳴られ、「私は障がい者です。てんかんという障がいで、万が一倒れてしまわないか不安なので2本乗り過ごして、今この席に座っています。」と説明すると、「障がい者は障がい者らしく謙虚にしろ!」と暴言を吐かれたという内容です。
「障がい者らしく謙虚に」…この言葉こそが社会に根深く残っている差別・偏見の象徴なのではないかと感じました。

さて、他の方は具体的にどのような差別・偏見を感じているのでしょうか。

<公共交通機関で受けた差別・偏見>
「精神障碍者はJRの運賃割引がない。他の鉄道会社も同様。(50代/女性/精神障がい)」
「電車で着座した時に、身体の悪い人は優先席に座れば良いのにと言われた。しかし視力障がいでどこが優先席かも判らず、大変悲しい思いをしました。(50代/男性/身体障がい)」
「見た目では健康に見えるので、多目的トイレや優先座席を使うときに、変な目で見られたり、実際に「健康な人がここを使うな!!」と言われたことが何度もある。心の傷になり、それ以来毎回気になってしまう。(30代/女性/精神障がい)」

コメントにもあったように、精神障がいと身体障がいでサービスの割引が違うこともまだまだ合理的配慮に欠ける社会であることを表していますよね。
また優先席問題は本当に、すぐにでも解消されなければならないと思います。JR曰く「ご体調を不安に思われている方であれば、誰でもお座り頂いて結構です。」とのことですが、実際の周囲の目はそんなに優しくありませんよね。

関連記事:「ここはあんたみたいなのが座るところじゃないんだよ!」と怒鳴られたてので、優先席の対象が誰なのかJR東日本に問い合わせてみたところ・・・」

そして一番は「職場」ということでしたが、みなさんの職場はいかがでしょうか?
モニターの方の声では
<職場で受けた差別・偏見>
「LDを理解してもらえず、職場で帰れとか、死ねと言われた。(40代/女性/精神障がい)」
「ケアレスミスが多いこと等が理由で、事務所での扱いが雑になり、最終的には解雇された。(20代/女性/精神障がい)」
「以前の直属の上司から精神疾患を公開して雇用されているにも関わらず機嫌の悪い時に嫌味や契約更新時にも暴言モラハラを受けた。(60代以上/女性/精神障がい)」
「以前の会社で障がい雇用で採用されたが、受け入れ部門が障がい雇用に前向きではなく、暴言を言われて、1年で契約満了された。(40代/女性/身体障がい)」

こんな時代錯誤の対応がまだ根深く残ってるんですか?と驚きを隠せませんでした。
これから法定雇用率が上がるのに、社内の対応が、ひとりひとりの障がい者に対する偏見が改善されていないならどんなに不幸な結果を招くでしょうか。
弊社で開催している障がい者への合理的配慮や差別偏見の解消を目的としたセミナーにお越しいただく企業様は段々と増えています。私はもっと理解が広まってほしいと希望を持っていますが、一方で、遅れている企業も多くあるのが現状なのです。

47%の人が差別や偏見を受けていても誰にも相談できない環境

障害者差別解消法なども制定され、きっと今は障がい者への見方や接し方が変わるべき時、「転換期」なのだと思います。
しかしまだまだ差別や偏見は根強く残り続けるのでしょう。
つらい思いをした時、嫌な思いをした時、みなさんは誰に話していますか?
実際に差別や偏見を受けたと感じた際の相談先を聞きました。
その結果、47%と約半数が「誰にも相談していない」ことがわかりました。

実際に差別や偏見を受けたと感じた際の相談先

差別や偏見を受けても相談しない、できない環境はどんなにつらいことでしょうか。
確かに私自身、そのような事が起こった時には、誰にも相談できないことが多いです。
やはり、「わかってもらえないのではないか」「話しても変わることではない」と思ってしまい、心の奥底にしまい込んでしまうのです。

障害者差別解消法は私達を助けてくれていない?

障害者差別解消法について、詳しくご存知でしょうか?実は意外と当事者の方も知らなくて、「知っていて、きちんと内容も理解できている方」は29%しかいないという調査結果がでました。

障害者差別解消法について、詳しくご存知でしょうか

【障害者差別解消法とは】
ご説明をすると、2016年4月に施行された法律で、国・都道府県・市町村などの役所や、会社やお店などの事業者が、障がい者に対して正当な理由なく、障がいを理由として差別することを禁止したものです。また、この法律では、役所や事業者に対して、障がい者から社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲で対応すること(事業者の場合は対応に努めること)が求められています。なお、「障害者差別解消法」は雇用以外に関するものを対象としており、雇用に関するものについては、同時期に施行された「改正障害者雇用促進法」にて規定されています。

障害者差別解消法は浸透しているか

障害者差別解消法の社会への浸透について、聞いたところ、92%が「浸透していない」と回答しました。

「昨年の障害者差別解消法の施行(2016年4月1日)以降、あなたに対する差別や偏見は改善したと思いますか。」という質問には89%が障害者差別解消法の施行以降も、差別・偏見が「改善していない」と感じているとわかったのです。

昨年の障害者差別解消法の施行(2016年4月1日)以降、あなたに対する差別や偏見は改善したと思いますか。

「昨年の障害者差別解消法の施行(2016年4月1日)以降、合理的配慮を受けやすくなったと思いますか。」という質問に関しては、施行以降も、合理的配慮を「受けやすくなったとは思わない」という回答が84%にのぼりました。

昨年の障害者差別解消法の施行(2016年4月1日)以降、合理的配慮を受けやすくなったと思いますか。

私の周囲でも、障害者差別解消法の施行以降何一つ変わったことはありません。水面下で何かが改善されているのか、知らないところで何かが変わっているのか・・・その可能性はあるのですが、体感として「何も変わっていない」ということが率直な感想です。
優先席に座れば白い目で見られるし、ヘルプマークをつけていても席を譲ってなんかもらえない。てんかんではエステにも通えないしジムの入会も断られる。「合理的配慮って何?」そんな言葉しか浮かばないのです。

関連記事:「え!?てんかんだと痩せることすら許されない!?某有名ジムに入会希望したところ・・・」

差別や偏見のない社会を目指して

うだうだと私のように不満ばかりを言っていても環境は変わりません。みなさんは差別や偏見をなくしていくために、どうしたらよいかと考えているのでしょうか?

【交わりが大切という意見】
「差別・偏見は絶対に無くならない。子供の頃から、障碍者と健常者が混ざって同じ生活をする。「こんな人・あんな人も居る」と大人が教えないと、子供の頃から偏見を持つと思う。(40代/女性/身体障がい)」
「障害者が表に出て行くこと。色んな人がいる、と知識だけで知るのと実際の生活の中で知るのでは説得力が違う。精神障害者もできる範囲でカミングアウトしていくとこが大切だと思う(30代/女性/精神障がい)」

【障がい者側から主張していくべきという意見】
「差別される側も、黙ってないで、声を上げるべきだと思います。(50代/女性/身体障がい)」
「合理的な配慮も必要ですが、障がい者が権利ばかり主張するのもよくないと感じました。(50代/男性/身体障がい)」

【法律や教育に言及する意見】
「残念ではありますが、なくならないと思います。だから、その人達を守るための法律のあり方を形成していくことが必要と考えます。人は温かく、冷たいものですから。(60代以上/男性/身体障がい)」
「非常に難しい問題。法的に差別や偏見を禁止したところで、心の内面の差別や偏見はなくならない。表面上を取り繕っても、うまくいかないように思える。「社会に障がいがある」ことを認め、「誰もが暮らしやすいバリアフリー(物理的なものだけでなく、制度やコミュニケーションなど全て)社会」を真面目に構想し、教育からトータルで変えていくことが必要だと思う。(30代/男性/精神障がい)」
「自分を含めて、精神疾患の人間は、目に見えないので、分かりにくく、理解してもらうのに限界がある。今後、自分の様な精神疾患や身体障害者の事を学校の授業の一環として取り上げて欲しい。(60代以上/女性/精神障がい)」

【その他の意見】
「皆が障がい者の痛みを分かるような体験などをできる社会実験などが必要ではないでしょうか。(60代以上/男性/精神障がい)」
「「天才などと言われるような限られた成功例」か「仕事に就けない可哀想な人」という両極端な情報発信ばかりでなく、身近な一般企業の中で社会生活を送っている例の紹介。(20代/男性/精神障がい)」

【「わからない」という意見】
「どのようなことが必要か…ずっとずっと考えてきたけど、わからない。健常者と障がい者の共存は、無理なのかとあきらめたくなる。(50代/女性/精神障がい)」
「まったくわからなく、ただ、困っている時に少しでも助けてくれるような気持ちを持てる社会になれば(40代/女性/身体障がい)」

「どうしたらいいのかはわからない」「差別や偏見は絶対になくならない」そんな声も多々ありましたね。

でも私は諦めたくないのです。

まだ障害者差別解消法が名ばかりの法律でも、きっと今が転換期だと思うのです。社会が、人々が段々と私達を受け入れる方向に変わってきている・変わらざるを得なくなってきていると。
そしてきっと差別や偏見をなくしていくことは法律なんかでは縛ることはできなくて、私達自身が「私達という人間もいるんだ!」ということを、社会に発信し続けることが鍵になるのだと思っています。

今回の調査結果の詳細はこちらでご覧いただけます。

障がい者総合研究所「障がい者に対する差別・偏見に関する調査」


障がい者総合研究所では、「すべての人に活躍の機会」がある社会を目指し、障がい者の声を集め発信する活動を行っています。ご興味のある方はこちらからアンケートモニターに登録してください。

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ライター わに

17歳の時に側頭葉てんかんを発症、精神障害者手帳2級の障がい者。 酸いも甘いも経験してきた熟れ時アラサー女子。 「全力で働き全力で遊ぶ」がモットー。 誰彼構わず噛みつき周囲をヒヤつかせるため「わに」。 過激な記事を投稿しようとし編集長に止められるのが日課。

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