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一筋縄ではいかない障害者年金の請求手続き~ジャーナリスト桐谷匠の体験談~

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ライター:桐谷匠(きりたに たくみ)

みなさん、こんにちは。今回はフリーランスのジャーナリストである桐谷匠(筆名)さんに、ご自身が統合失調症を発症した後に、障害者年金を受給するまでに体験したご苦労を赤裸々に語って頂きました。

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~「事後重傷」という罠にハマった私の場合~

私は統合失調症者であり、約10年前から障害者年金を受給している。ちなみに障害等級は3級であり、年間の年金支給額は60万円ほどだ。ここで障害者年金について多少の知識をお持ちの方は、

「え? 障害者年金って障害等級が1~2級じゃないと受給できないんじゃないの?」

と疑問を持たれるかもしれない。

そう、もしあなたが年金加入履歴において国民年金への加入歴しかもたない場合は、3級以下の障害等級と認定されたケースでは、障害者年金は受給できない。ただし、私の場合、会社勤めをしていた期間が比較的長く、その間、企業の厚生年金に加入していた。そのため、「障害者厚生年金」というカタチで障害者等級が3級であっても年金が支給されるのである。

本来、統合失調症は障害等級1~2級と認定されるべき疾患である。しかし、それを3級と認定されてしまう例は少なくないようだ。私の場合、障害者厚生年金が下りることがわかっていたので「まあ、いいか」と放置したのだが、国民年金への加入履歴しか持たない人はそうはいかない。「不服申し立て」というきわめて面倒な手続きを行わなければならない。

そう、障害者年金の受給は一筋縄ではいかない。マニュアル通りに手続きを行えば、それで万事OKというわけではない。私は体験的に確信しているのだが、年金の支給額を可能な限り低く抑えるための「トラップ」がいろいろ仕掛けれているのである。今回は、そのことを書こうと思う。

私が医師のカルテで統合失調症と認定されたのは、今から16年前の40歳のとき。幻覚・幻聴などさまざまな症状がでていたのであるが、それでも数年間は病にもがき苦しみながら仕事をしていた。完全に就労不能となってからは、仕方なく貯蓄を取り崩して生計を立てた。そして、いよいよ貯蓄が底をつきかけたとき、病院のPSW(精神保健福祉士)からまず障害者年金の受給申請をしてみないかとの提案を受けた。病を発症してから6年が経ち、私は46歳になっていた。

私は、制度に無知だった。言われるままに最寄りの年金事務所に何度も足を運び、そのたびに手渡される書類に必要事項を記入していった。そしてそれらに医師の診断書を添えて年金事務所に提出した。当初、私の請求のカタチは遡及請求(障害認定日請求)となるということだった。難しい説明は省いて簡単に記すが、遡及請求の場合、私が統合失調症と認定された40歳の時点(つまり請求を行った時点の6年前)まで遡って年金が支給される。

実際には支給の上限は5年分までなのであるが、それでも5年分の障害者年金がまとめて手に入る計算だった。結果的に私の障害等級は3級であったから、年間約60万円×5年間で約300万円が懐に入るはずだったのである。私は、少しほっとした。これで後一年ぐらいは食いつなげる、闘病に専念できると思ったのである。

しかし、そこで思わぬ事態が生じた。私は統合失調症と認定される数年前、仕事上のストレスからノイローゼ状態に陥り、精神科クリニックに数か月、通院していたことがあった。その事実が年金事務所に発覚したのだ。

年金事務所の担当者は、私に「その通院していたクリニックの診断書を取ってこい」と命じた。私はわけがわからぬまま、言われた通りにした。次に担当者はその時点での私の主治医――つまり私を統合失調症と認定した医師に手紙を書いた。「請求者(つまり私)の場合、もともと神経症を発症していたものが、“事後的”に統合失調症に重症化したものと理解してよろしいでしょうか」という文面だった。

こちらも制度に疎い主治医は「その通りです」と担当者の指摘を追認してしまった。結果、どういうことが起こったか。私の障害者年金の請求のカタチが「遡及請求(障害認定日請求)」から「事後重傷請求」というものに変わってしまったのである。

すると、どうなるか。これも難しい説明は省く。一言でいうと統合失調症と認定された日まで遡って支給されるはずの年金が、支給されなくなるのだ。つまり、懐に入るはずだった数百万円が支給されず、障害者年金の受給申請が認可された当月からの額しか支給されなくなるのである。

私は激しく憤った。「なぜ、事後的に重症化した場合は遡及請求が認められないのか」「かつての軽いノイローゼと現在の統合失調症の因果関係などどうやって証明できるのか」――担当者に激しく詰め寄った。前者に関しては何の合理的な説明もなく「それが決まりですから」の一言で押し切られ、後者に関しては「因果関係はあなたの主治医が証明しています」と切り返されて終わりだった。

年金事務所に仕組まれたのは間違いないだろう。彼らとしては、支給額を可能な限り抑えたい。そのとき、私に神経症で精神科クリニックに通っていた前歴があることを嗅ぎつけ、それを利用して無知な私を「事後重傷」という罠にハメたのである。これは決してうがちすぎではない。この国の役所というのはそういうものである。

最近、ネット上の障害者関連サイトなどでも「障害者年金の貰い方」の類のノウハウが盛んに流布されているが、今回、私が書いたような生々しい裏事情まで詳らかにしたものは残念ながら見受けられない。これから障害者年金の申請を検討している方々に、私は言いたい。手続きとしての障害者年金の申請は、確かにノウハウにある通りだ。しかし、そこにはいくつものトラップが仕掛けられている。くれぐれも慎重にことを運んでいただきたいと、老婆心ながら考える次第である。

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桐谷匠

ライター 桐谷匠(きりたに たくみ)

桐谷匠(筆名) 1960年、横浜市出身のジャーナリスト。業界紙記者、編集プロダクション勤務、コピーライターなどを経て、フリーランスのジャーナリストとして今日に至る。40歳を迎えた’00年、統合失調症を発症。幻覚・幻聴などさまざまな症状に苦しみながら仕事を続けてきたが、一時は完全な就労不能状態となり、生活保護を受給していたことも。ここ数年は体調と相談しながら月刊総合誌などへの寄稿を中心に執筆活動を行っている。精神障害者福祉手帳2級を所持。現在、障害当事者とその家族のためのウエブマガジン「D.culture」編集部所属。本名で著書を二冊、上梓している。

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http://disability-culture.jp/

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