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「日本から障がいという言葉と概念をなくす」~ミンナのミカタぐるーぷの障がい者と企業のお仕事マッチング~

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ライター:aki

栃木県鹿沼市の就労継続支援A型事業所からスタートした「ミンナのミカタぐるーぷ」。
「日本から障がいという言葉と概念をなくす」を経営ビジョンとし、事業所を利用するメンバーを「利用者さん」と呼ばずに「ミンナ」と呼んでいます。
東京のIT企業のバックオフィス業務を受注し、全国の就労支援事業所とマッチング。企業にも事業所にも利用する「ミンナ」にも喜ばれています。
ありそうで無かった障がい者の就労支援の形を実現するミンナのミカタぐるーぷ。その事業内容と今後のビジョンについて、取締役事業部長の川田さんにお話を聞きました。

最新のAI技術を支える仕事

「いま、IT系の受注で多いのが、人工知能、AIのアノテーションという作業です」
取締役事業部長の川田さんは、明るくこう話します。
「ミンナのミカタぐるーぷ」は、3つの事業があります。1つ目が就労継続支援のA型事業所「ミンナのミライ」、2つ目がB型事業所「ミンナのナカマ」、そして3つめが就労支援事業所専門のお仕事マッチングサービス「ミンナのシゴト」です。

AIといえば最新技術の話で、障がい者の就労とは無縁だと思う人もいるかもしれません。AIアノテーションとは、「最初は空っぽのAIの箱に、正解を教えていく作業」と川田さんは説明します。

「食事の写真であれば、これは“そば”、これは“天ぷら”…という風に、メニュー名をタグ付けしていきます。AIを完成させるためにはこのような作業が写真何万枚分もあります。このメニュー写真の事例はカロリー計算と関連付けてダイエットアプリに活用されました」
AIアノテーションは、スマートフォンのアプリや最新の自動運転技術などを開発する際に不可欠な作業です。
ミンナのシゴトではAIアノテーションのほか、リスト作成やアンケート集計、データ入力業務などを受注しています。これらのパソコンを使った細かい作業は、大手企業のサービスを支えるとても大事な業務です。こうしたIT関係の様々なバックオフィス作業を多く請け負っているのが、大きな特徴のひとつです。

川田さんお写真
今回取材にお応えいただいた川田さん

大手企業と就労支援事業所をマッチング

代表の兼子文晴さんは、ご自身がうつ病をわずらい、就労継続支援A型事業所を見学に行きました。そのとき、健常者と変わらず仕事をこなす利用者の姿に障がい者のイメージが大きく変わりました。そして同時に障がい者の仕事に、大きな可能性を感じたといいます。
もともと営業職でバリバリ活躍していた兼子さんは、2013年に自身で栃木県鹿沼市にA型事業所「ミンナのミライ」を立ち上げ、営業活動に回ります。当初は簡単な軽作業などが業務の中心でした。しかし、データ入力にチャンスがあるとひらめいて飛び込み営業をします。そして受注したのが名刺登録データベースの入力作業でした。「IT業界の裏方作業にも障がい者の仕事のチャンスがある」と実感し、2016年にB型作業所の「ミンナのナカマ」を立ち上げたのちに、「ミンナのシゴト」を2018年に開始します。

兼子さんお写真
ミンナのミカタぐるーぷ代表 兼子さん

「ミンナのシゴト」は、大きな受注にも対応できるように、多くの事業所に登録してもらっています。そしてBPO(※1)を軸とした、仕事のマッチングサービスを立ち上げます。説明会で全国を回りましたが、現在では説明会に回らなくても、口コミで新たな事業所が登録するサイクルができています。2022年の4月1日現在で全国で314の事業所が登録しています。

「いま、大手企業はSDGs(※2)やESG(※3)の実現を課題としています。さらに、障がい者の法定雇用率を守ることも必要です。一方、福祉業界である事業所は、どうやって営業をしたらいいかわからない、値段設定も自分たちでは難しいという課題がありました。」

この需要と供給をつなぐべく、代表の兼子さんと取締役事業部長の川田さんが営業活動を担い仕事を受注。全国の登録事業所に、受注した仕事を公開しています。そして事業所の希望や規模に合わせて仕事を割り振っています。

販売業・倉庫業のバックヤード業務も受注

リユース業大手のブックオフからの委託業務も好評で、大型店舗での陳列前の準備業務を中心に請け負っています。
リユース業では、消費者から買い取った商品を店頭に並べるための準備作業が必要です。しかし店頭の従業員だけではさばききれず、チャンスロスにつながることもありました。
「例えば買い取った衣類をハンガーにかけサイズ表示のチップを取り付ける作業などを請け負っています。」
ブックオフではミンナのミカタとの業務提携後、売り上げが120%に伸びた店舗もあるそうです。いまでは全国の店舗に近い立地の事業所を紹介し、展開が広がりつつあります。

他にも、現在人手不足と言われている倉庫業のニーズは特に感じています。
「もともと検品業務などは慣れている事業所が多いので、むしろ得意分野です」

お仕事中の様子その1
リユース業の陳列準備業務の様子

小規模受注からスタートし、お互いにすり合わせ

新しい業務を受注し実際に作業するにあたって、仕事を請ける事業所や発注側の企業には不安はないのでしょうか。
川田さんは「それこそがわが社の強み」と力強く話します。
「ミンナのミカタぐるーぷには直接運営しているA型B型の事業所があります。初めての取引や新しい業務の場合は、まずは小規模にトライアルで発注していただきます。そして直営の事業所で作業を請けます」

お仕事中の様子その2
実際のパソコン作業の様子

実際に業務をすすめながら、作業時間やわかりにくいポイントなどを検証します。そしてマニュアルを整備し、作業方法の改善を提案します。ある程度業務の流れが固まってきたところで受注規模を拡大し、全国の登録事業所に作業を割り振ります。
大規模な受注でも分割して請け負い、納品前にミンナのシゴトのスタッフが納品物のチェックをおこなって品質の維持に勤めています。
「事業所職員向けのオンライン研修で、パソコン作業の勉強会などのフォローもわが社でおこなっています」
と、登録事業所へのきめ細かなバックアップ体制も整えています。

念願の在宅勤務で直接雇用につながった事例も

こうして業務をすすめていく中で、利用者の「ミンナ」の成長も見られるといいます。
「企業様のYouTubeの動画編集作業を請け負っていた方が、企業の直接雇用につながった例もあります」
この方は、未経験から動画編集を始めました。そして経験を重ねていくうちに「この人にお願いしたい」と言われるまでに成長したそうです。そして、最終的には企業からの直接の雇用につながりました。
「この方は身体に障がいがあったので、在宅勤務を希望していました。そして実際に栃木で在宅のまま、東京の企業の直接雇用につながりました。」
また、慣れた事業所の職員が何かあった場合のサポートに入ってくれるので、企業にとっても本人にとっても安心できる環境で成長ができたといいます。
「こうした事例が、もっと増えるといいなと思います」

このように実績を重ね、バックアップ体制や品質維持に自信があるからこそ、賃金の交渉も自信をもってしているそうです。
「最低賃金以上で交渉をしています」

障がい者が戦力になることを知ってもらいたい

実際に営業活動をする上で難しい点はないのでしょうか。
「人事部の方は、障がい者の雇用率を確保したいという課題を持っていますが、現場の方はどんな仕事をどう切り出して発注できるのかイメージできない、といったことが多いです」
こうした課題を解決するためには、「まずは現場を見ていただく」のが早道だと考え、新たな企画を立ち上げました。それが「支援員体験ツアー」です。
直営のグループホームに研修施設を併設し、宿泊して支援員の業務を体験をしながら、ミンナの一日の仕事を見学することができます。見学に来たほとんどの方が「これほど仕事ができるのか」と驚くといいます。

研修施設での作業の様子
研修施設での作業の様子

宿泊所の写真
宿泊所もあります

泊まり込みのツアーは時間が取れないという方のために、随時見学やオンラインでの相談会も受け付けています。
「実際に、利用者の“ミンナ”が、PCを使った業務をバリバリこなす姿に触れていただくことで、“障がい者が企業の戦力になる”ことを知っていただきたいです」

さらに、今後の目標として「5年以内に上場を目指しています」と川田さん。
「私たちは、障がい者の“ミンナ”がいないと成り立たない企業です。もし上場できたら、障がい者が上場させたした企業ということになります」と力強く話してくれました。

企業も利用者も支援者も成長できる、新しい就労支援の形を見ることができました。「日本から障がいという言葉と概念をなくす」というミッションの実現に向けて、ミンナのミカタぐるーぷは、パワーもアイデアもフル回転の元気いっぱいな企業でした。

ミンナのミカタぐるーぷWebサイトはこちら
お問い合わせ先:info@minnanomikata.com

(※1)BPO
 企業活動における業務プロセスの一部について、業務の企画・設計から実施までを一括して専門業者に外部委託すること。(読み:ビーピーオー)
 (参考:野村総合研究所

(※2)SDGs
 2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された国際目標。2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すため、17のゴール・169のターゲットから構成される。
 (参考:外務省

(※3)ESG
 ESG投資。環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のこと。
 (参考:経済産業省

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aki

ライター aki

ASDの長男と、たぶん定型発達の夫と暮らしています。私自身は診断をうけていませんが、おもちゃを一直線に並べて遊ぶ子どもではあったらしいです。                Twitter: https://twitter.com/akiko_m_psy10

ブログ
https://note.com/aki_m_psy10
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