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「就職への一歩が踏み出せない・・・」生活保護からの自立を考える~ピアサポートの観点から~

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ライター:統合失調症のある方向けサービス リドアーズ

皆様こんにちは。リドアーズお茶の水で支援員をしている高橋です。今日は4月1日、いよいよ新年度がスタートしました。新しい一歩を踏み出す方も多いと思いますが、一方で「なかなかその一歩が踏み出せない」、そんな方もいらっしゃるのではないでしょうか?

本日のテーマは「生活保護からの自立」 ― 私自身がうつ病で生活保護を受けていた頃のエピソードを交えながら、新しい一歩が踏み出せるようになるまで、そして改めて働くことや自立について考えて行きたいと思います。

働くということを考えた時、就職が決まることが目標ではありません。就職したら、長く働き続けること、即ち安定的に就労できることが重要になってきます。しかし生活保護を受給している方の中には、身体や精神の疾患、何らかの障がい等「働きたいけど働けない」という状況の方も多くいらっしゃいます。また「就労への意欲が持てない」という方もいらっしゃると思います。

病状が良くなれば、就職できるのでしょうか?
支援機関に通えば就労に繫がるのでしょうか?

私自身が生活保護を受給していた時、働きたいけれど働ける自信がなく、なかなか就労への一歩を踏み出せない、といった時期がありました。その頃のエピソードをお話しさせていただきます。

うつ病発症から生活保護受給までのエピソード

私がうつ病を発症したのは、家事・育児に追われていた頃でした。もともと完璧主義や、すべき思考の強かった私は、家事や育児がちゃんとできていないと思い、寝込むことが多くなりました。離婚することになり、病状がどんどん悪化。就労もままならなく、やがて生活保護を受けての一人暮らしを始めました。

体調が良いと感じる時間はほとんどなく、常に具合が悪くしんどい状況が続きました。通う場所は病院だけで、人との繋がりも希薄になって行きました。生活保護を受給すると、毎月1日になると生活保護費が振り込まれます。そんな生活の中、だんだんと働くことの目的、生きる意味さえも見失って行きました。

生活が苦しいイメージ

このままではいけないと思いつつも、なかなか就労への一歩を踏み出せない。その原因は何でしょうか。

当時の私は、自分が働いているイメージさえも持てなかったのです。毎日ほとんどの時間を具合が悪い状態で過ごしている自分が、毎日オフィスへ行って仕事をしているイメージというものを全く持てませんでした。更に、仕事に就いていない期間が長く、面接を受けても採用に繫がるとは思えない。ろくに職歴のない自分を雇ってくれる場所なんてあるわけがない。就労へ繫がる手立てがない・・・と勝手に思い込んでいました。

ある日ふと、通院先の病院にデイケアというものがあることを知った私は、見学に足を運びました。その頃は、働くことを目標としていたわけではなく、なんとなく毎日鬱々とした日々をなんとかしたいという思いからです。やがてデイケアに通い始め、やっと人と繫がるということを知り、更に生活の中で少しずつ「楽しむ」ということができるようになりました。

やっと楽しめるようになり笑顔がこぼれるイメージ

就労への動機づけ ~ピアサポートが鍵~

就労へ向けてのリハビリを開始したきっかけは、デイケアで就労を目指している仲間の姿に出会ったことです。スーツを着ているメンバーさんに尋ねると「合同面接会に行ってきました」とのこと。当時の私は、障がい者雇用、合同面接会・・・そういった制度や機会について何も知らなく、仲間から就労に必要なことをたくさん教えていただきました。

やがて「ここで皆と一緒に頑張っていたら、もしかしたらこんな私でも働くことができるかも・・・」と考え始めました。そして就労支援のスタッフに相談に行ったことで、私の就労へのリハビリがスタートしました。

生活保護を受け、家に一人でいて人との繋がりがなかった頃は、就労に繫がる手立てがなく八方塞がりのように感じていました。しかし、デイケアでは働くために必要な心理教育やSST、当事者研究、疑似職場でのPCを使った業務など様々なプログラムが用意されていました。

そして何より自分にとって有難かったのは、共に「働きたい」という思いを持つ仲間の存在。長く働くということを経験してこなかった仲間たちと「働くとはどういうことか」「何のために働くのか」ということを話したり、既に働いている仲間の経験談を聴くこともできました。

スーツを着ているメンバーと語り合っているイメージ

「働けるかもしれない」という希望は、どんなに支援者が無理に背中を押しても生まれてくるものではないと感じます。実際に当事者が、自身の経験したことの中から生まれてくるもの ― 仲間との経験の分かち合い、即ち「ピアサポート」の力によって、就労に向けての力や希望が生まれてくるのだということを実感しました。

生活保護からの自立を経験して~働くことによって得られるもの~

自身が生活保護受給という経験を通して痛感したことは、ただ単に心身が健康になったら働ける、ということではなかったということです。自立を困難にする様々な要因が絡み合っているように感じました。自立を目指しても、正規雇用にはなかなか就けなかったり、生活保護から何とか脱却できてもワーキングプアでの生活になり相対的貧困から抜け出せないという現状があり、問題は山積みです。

私は前職は障がい者雇用で一般事務の仕事をしておりました。働いて3か月が経過した頃、保護廃止決定通知書が届きました。当時、生活保護を受給していた仲間から給与の額を聞かれ答えたところ「それじゃあ、働いても働かなくても同じだよね」と言われたことがあります。給与の額だけを見ると、生活保護の受給額と変わらないという現実がありました。ではなぜ私は働きたいと思ったのか・・・その部分をお伝えしていくことの大切さを感じます。

大切さを感じているイメージ

私が働くことによって得られたものは ― 所属すること、役割を持つこと、仕事を通して人と繋がること。そして衣食住、自分の健康、仕事、趣味、人間関係、これからの生き方・・・これらに対して、自分で選択し、自分で責任を持つということ。そして自分の人生を、自分で引き受けることができるようになると、少しずつ自分に良い感じを持てるようになります。稼ぐ(労働力を提供して対価を得る)という経験を通して、自己肯定感、自尊心が生まれます。ちょっとずつ「自信」という砂をためていく ― そんなイメージです。

精神障がいのある人が、それぞれ自分が求める生き方を主体的に追求する「リカバリー」という概念があります。こういう生活がしたいという夢や希望を持ち、主体的に生きていくことを指します。就労においても、自分にとって「働く」とは何なのか ― 自分にとっての理想の働き方、理想の生き方を追求していく「自分にとってのリカバリー」という軸がしっかりあると、長く働き続けることができると思います。


希望のイメージ

経験の分かち合いが力になる

自分が就労を目指していた時、果たして生活保護から脱却することなんてできるのだろうか、そして働いて生活保護から脱却しても生活ができるのだろうかという不安がありました。実際に生活保護から自立された方の経験を聞きたかったのですが、出会うことができませんでした。ネットで調べてみても、生活保護から自立した方の経験談は出てきませんでした。私が自身の経験を語るようになったのは、経験の分かち合い ― 「ピアサポート」が力や希望に繫がると実感したからです。

実際に経験した方の話を聞くことによって、一歩を踏み出す勇気を持てるということがあると思います。働くまでの苦労、そして働いてからの苦労、働いて得たもの・・・そういったことを分かち合える環境は大切だと思います。同じ働くという目標に向かう仲間が集まる就労移行支援事業所やデイケアなど、ご自身に合った場所に繋がることで、就労への一歩を踏み出せるかもしれません。

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ライター 統合失調症のある方向けサービス リドアーズ

統合失調症のある方向けの就職支援サービス。統合失調症がある方の就職や安定就労のためのノウハウなど、統合失調症に関するさまざまな情報を発信していきます。

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公式HP
http://www.redoors.jp/

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