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「言葉で重さを伝え合う」ユニバーサルボードゲーム「グラマ」のワークショップを開催しました

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ライター:中たんぺい

「見ても見なくても見えなくても楽しめる」をコンセプトに大学生6人のグループ「ビーラインドプロジェクト」が開発した、ユニバーサルボードゲーム「グラマ」。視覚障害のある人とそうではない人、視覚障害のある人同士、視覚障害のない人同士がそれぞれ一緒に楽しみ、コミュニケーションの壁を乗り越えることを目的に開発されました。

2021年に実施されたクラウドファンディングでは、1,126,000円もの支援を獲得。その後、グラマを手がける「ビーラインドプロジェクト」は、北は宮城から南は福岡まで60回以上のワークショップを開催し、ボードゲームのアップデートをしながら、製品化への道を探っています。

今回、ゼネラルパートナーズが運営する就労移行支援事業所「atGPジョブトレ」の秋葉原第2事務所で、グラマのワークショップが開催されました。参加者は、atGPの就労移行支援サービスを利用している人とその卒業生です。そのワークショップの様子をレポートします。

見出し:「りんごの重さは……?」言葉で伝え合う難しさと楽しさがわかるゲーム

「グラマ」はおもりの重さを言葉で説明し合い、4人で袋の重さを揃えるゲームです。巾着袋の重さを言葉で伝え合うとき、ルールが2つあります。ひとつは、場所を決めること。例えば、スーパーマーケットにあるもの、コンビニにあるものなどのように、言葉を連想しやすいように具体的な場所を決めます。

ふたつ目のルールは2番目に重い人の巾着袋に重量を合わせること。話し合い、基準の重さを決め、チームで認識を合わせていきます。

グラマの巾着袋を取る参加者
グラマの巾着袋を取る参加者

四角い木や楕円の石でできたおもしの入った巾着袋がゲームの参加者に配られ、テーマは「スーパーにあるもの」に決まりました。各グループ、伝え方に苦戦して戸惑いながら話し合いをしています。

「自分の重さは、玉ねぎ3個分かな」
「難しい……。食パン1袋分?」

全員がイメージしやすい言葉を想像しながら、重さを話し合いで決めていきます。

2番目に重い人が決まったら、巾着袋におもりを入れたり、抜いたりしながら調整。準備が整った段階で、4つの腕がついたてんびんに、巾着袋をのせていきます。

てんびんに巾着袋をのせる様子
てんびんに巾着袋をのせる様子

準備が整い、「せーの」で手を離すと……。
てんびんが倒れた様子
てんびんが倒れた様子

バランスが取れず、てんびんが転倒。「あー」とため息が漏れます。
ただ、ゲームを通じてコミュニケーションを重ねて、会場は和やかな雰囲気になりました。

「後悔の重さ」とは……?

グラマでは、感情などの抽象的な概念もテーマとして挙げられます。この日、選ばれたテーマは「後悔」。配られた巾着袋の重さを、自分が後悔したシーンで伝え合います。例えば、「ジュースを買ったときに別の種類を選んでおけばよかった」「忘れ物をした」のように表現をします。

最初のゲームのときとは異なり、場所の指定はありません。また、感情は人によって持つ意味合いが大きく異なるため、より一層チームでのコミュニケーションが重要です。重さをどのように言葉に変えていけばいいのでしょうか。

テーブルで伝え方を参加者と一緒に考える三浦さん
テーブルで伝え方を参加者と一緒に考える三浦さん

「道案内しようか迷ってしなかったときの後悔くらい」「自分はそんなに後悔をしない」「ゲームでアイテムを取ることを忘れた」と真剣に話し合い、ときに笑い声も混じりながら、会場は盛り上がっています。

そして、一通り準備を終えたら、てんびんに巾着袋を載せ、「せーの」で手を離します。

巾着袋の重さが釣り合ったてんびん
巾着袋の重さが釣り合ったてんびん

なんと成功です! みんなの拍手の音が部屋に響きました。

最後に、ゲームの参加者に感想を聞いたところ、「伝えるときに、マイナーな製品の名前を上げてしまうと伝わらないことがあったけど、楽しかった」「後悔のテーマで、髪を切りすぎたという意見が出て共感が大きかった」といった声が上がりました。

多くのフィールドでグラマを広げていきたい

左から浅見幸佑さん、三浦輝さん
左から浅見幸佑さん、三浦輝さん

2021年にクラウドファンディングで目標を達成した「グラマ」。現在の状況と今後の展望を、「ビーラインドプロジェクト」の浅見さんに話をうかがいました。

「グラマは、自己開示や相互理解を手助けしてくれるツールです。これまでは視覚障害のある方や福祉関連の業界から声をかけていただくことが多かったのですが、現在はもっと輪を広げようと思って、就労移行支援事業所や学童などにもこちらからお声がけさせていただいています。現在のゲーム開発の進捗度は60%くらい。まだまだ道のりは長いです」

グラマは言葉で伝え合うボードゲームです。お互いにコミュニケーションを深め合えるため、見える人同士で遊んでも大きな気づきがあります。

また、ワークショップを開いてきて、サービスの提供の仕方も考える部分があるそうです。

「ボードゲーム単体でも楽しめるとは思うのですが、今回のようにゲームに慣れている僕たちのような人たちがファシリテーションをすることで、よりコミュニケーションが深まると思っています。プロダクトだけではなく、トータルでの体験をお届けできるように考えていきたいですね」

今回のワークショップでは、「ビーラインドプロジェクト」の方々が、各テーブルで例を挙げたり、話を振ったりしながら進行したりすることで、参加者が安心しながら楽しんでいるように見えました。言葉での表現は難しく、自己開示に繋がるようなテーマは緊張しがちです。そのため、ファシリテーターの役割は大きそうです。

最後に、今後のプロジェクトについて語っていただきました。

「プロジェクトの出発点は、見える人・見えない人・見えにくい人がごちゃ混ぜになって、一緒にコミュニケーションの壁を越えていくことでした。この部分に関しては、手応えを感じていますし、素晴らしいものだと思うので、もっと広めていきたいです。ただ、まだまだ視覚障害のある人とそうでない人が一緒に楽しめる場は少ないです。視覚障害や福祉以外のフィールドでも活動して、相乗効果でコミュニケーションの壁をなくしていきたいですね」

ビーラインドプロジェクトによるユニバーサルボードゲーム「グラマ」の開発とワークショップは続いていきます。

ビーラインドプロジェクトのウェブサイトやTwitterで、情報をチェックしてみてください!
ビーラインドプロジェクトのウェブサイト

以下、ビーラインドプロジェクトのTwitterです。最新情報は下記をご覧ください。
https://twitter.com/BlinedProject

編集協力:parquet(パーケット)

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ライター 中たんぺい

フリーライター。障害、メンタルヘルス、テック、キャリアなどのジャンルで記事を執筆。読んだ人の居場所になれるような文章を目指して、日々の取材に臨んでいます。群馬在住、ADHDの当事者。

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https://kanmasukamasu.com/

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