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フィンランド大使館主催の映画『ブラインドマン』上映記念レセプションに参加しました

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ライター:遠藤光太

©D6 Motion Pictures


ジェンダー平等の達成度が高い国として知られるフィンランド。そんなフィンランドの人々にとって「平等」という言葉には、私たちが想像する以上の意味が含まれているかもしれません。男性も女性もその他の性の人も、同性愛者も異性愛者も、老いも若きも、健常者も障害のある人も、文字通り‟すべての人”が、社会で生活するうえで平等な機会を得る権利が認められるようになっています。

今回は、そんなフィンランドで制作された映画『ブラインドマン』の上映記念レセプションに参加しました。

フィンランド映画『ブラインドマン』が映画祭に

2023年で20周年を迎えた映画祭「EUフィルムデーズ」で、フィンランドの映画作品『ブラインドマン』(監督:テーム・ニッキ)が上映されました。これを記念してフィンランド大使館が開催したレセプションに、Media116のライターが参加しました。

このレセプションでは、映画『ブラインドマン』の魅力に触れるだけでなく、障害のある人の権利を守るフィンランドの取り組みについても知ることができました。映画の魅力と、フィンランドの取り組みについて、レセプションで得た知見をお伝えします。

©D6 Motion Pictures
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盲目の車いすユーザー、1人で旅に出る

映画『ブラインドマン』は、車いす生活を送る盲目の主人公のヤーッコが、難病の女性に会いに行く物語です。

孤独な日々を送るヤーッコ。唯一の心のよりどころはシルパ(ヤーッコが愛する女性)との電話の時間でした。遠く離れたところに住む2人は、会ったことはありません。しかし、毎日電話を繰り返しているうちに、ヤーッコのなかに愛が育まれていったのです。

ある日、病状が悪化して動揺するシルパの声を電話越しに聞いたのをきっかけに、ヤーッコはシルパに1人で会いに行くことを決意。シルパのもとへ向かう途中、ヤーッコは予想を超える困難に直面することになります。  

ヤーッコは、スマートフォンの音声読み上げツール(スクリーンリーダー)を使っています。映画を観てまず驚かされたのは、音声読み上げのスピードの速さでした。音声読み上げユーザーの中には、彼のようにスマートフォンを使いこなす方が少なくありません。

そしてヤーッコは、スマートフォンを片手に大冒険へと出かけていくことになります。詳細なネタバレは避けますが、非常に過酷な描写や演出があり、どんどん引き込まれていく作品でした。

主人公のヤーッコを演じたペトリ・ポイコライネンは、多発性硬化症を発症しており、彼自身も視力を失い、現在車いすで生活を送っています。ペトリ・ポイコライネンは今回、2022年にフィンランド・アカデミー賞(ユッシ賞)で主演男優賞を受賞しました。

©D6 Motion Pictures
©D6 Motion Pictures

「障害のある人にとって電車で出かけることは大冒険ではなく、日常的な出来事であるべき」

レセプションは、プロンタカネン参事官による挨拶で始まりました。プロンタカネン参事官は、映画『ブラインドマン』の鑑賞を終えた私たち参加者向けて、フィンランドにおける障害のある人の権利について話してくれました。

「映画『ブラインドマン』は、ヤーッコとシルパの愛、ヤーッコに降りかかる不本意の冒険に加え、社会のバリアフリーについても扱っています。 なぜなら、障害のある人にとって電車で出かけることは大冒険ではなく、日常的な出来事であるべきだからです」

フィンランドでは、法律によって障害に基づく差別が禁止されています。すべての人が日常的に平等に扱われること、すべてのものへのアクセシビリティ(アクセスのしやすさ)があることが保障されていると、プロンタカネン参事官は語ります。

「私たちは、アクセシビリティは他の権利を実現するための前提条件だと考えます。

アクセシビリティは多くの場合、公共交通機関、学校、オフィスなどに物理的にアクセスできることを意味しますが、私はそれに加えて、インターネットなどの通信手段もアクセシビリティが必要であると考えています。さらに、アクセシビリティは、特別な対応だけではなく、態度や考え方としても理解すべきです。

フィンランドにおけるアクセシビリティについて、たとえばオンラインのサービスでは、視覚障害のある方が見やすい色が使われること、機械で識別が可能なテキストが使われることなどに注力しています」

追加でインタビューを実施しました

レセプション終了後、フィンランド大使館プロンタカネン参事官にメールで追加インタビューをしました。回答いただいた内容の一部をご紹介します。

フィンランド大使館プロンタカネン参事官近影
フィンランド大使館プロンタカネン参事官近影

Q 今回、『ブラインドマン』が選定された背景・経緯はどのようなものでしたか?

A EUフィルムデーズではいつも、クオリティが高く、世界を新しい視点から見せてくれる作品を選ぶよう心掛けています。このような理由から『ブラインドマン』に決めましたが、最適な選択だったと思います。

Q フィンランド大使館として、障害のある人を含むD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を推進するために、ほかにはどのような活動を行っていますか?

A 国連人権理事会理事国(2024年まで)の大使館として、弱い立場にある人々の人権を保障することを重要事項と捉えて、仕事に取り組んでいます。これは、世界中にあるフィンランド大使館で共通しています。フィンランドではとくに、先住民、障害のある人、LGBTQの人々の権利に注意を払っています。

Q この映画は主人公がネットで知り合った女性に会いに行くというストーリーですが、フィンランドでは障害のある人がインターネットを利用するための支援やバリアフリー化はどのように進んでいますか?

A 欧州委員会が発表するデジタル経済社会指数(DESI)によれば、フィンランドは現在、ヨーロッパで最もデジタル化された国です(DESIは5つの項目:接続性、人的資本、ネット利用度、デジタル技術の統合、デジタル公共サービスに基づいて算出されます)。オンラインサービスに関していえば、フィンランドの法律(デジタルサービス提供法)が、公共オンラインサービスのアクセシビリティを保証しています。たとえば音声読み上げ可能など、誰もが平等にアクセスできないといけない仕組みになっています。

Q 日本とフィンランドでは障害のある人に対する社会的な認識や環境にどのような違いがあるでしょうか?

A 回答するのが難しい質問です。個人的な意見ですが、たとえばフィンランドの学校では障害のある子どもたちも一緒に通うインクルーシブ教育を行っているので、障がい者が普通に社会の一部を構成していることに慣れているのかもしれません。私が高校生だったときも、車椅子生活をしていた女の子がクラスメートでした。

おわりに

今回、映画上映とレセプションに参加させていただき、『ブラインドマン』とフィンランドでの障害のある人に対する取り組みについて知るきっかけとなりました。

国内だけでなくこのように海外の取り組みについて知る機会があれば、日本でも障害のある人々の生活をより良くすることができると感じます。

また、筆者は普段からよく映画を鑑賞していますが、『ブラインドマン』の完成度の高さには目を見張るものがありました。機会があれば、Media116読者のみなさんにもぜひ鑑賞していただきたいです。

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ライター 遠藤光太

発達障がいの当事者。二次障がいでうつ病になり、休職を経験。現在、フリーライター。さまざまな媒体での記事執筆のほか、テレビ番組等で活動中。

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