「緊急措置入院」が私に教えてくれたこと
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ライター:わに
こんにちは!ゼネラルパートナーズでライターをしているわにです。私はてんかんとそれに付随する器質性気分障がいがあります。17歳の時、てんかんと診断され27歳まで10年間受容することができずにいました。その10年という長い間に様々な困難やトラブル、紆余曲折がありました。その中でも私が鮮明に覚えているのは「緊急措置入院」です。今回は「いかに障がいと向き合うことが大切か」ということを皆さんにお伝えしたいという想いとともに、自分への戒めも含め書いていこうと思います。
※少々ショッキングな体験を書いていますので、お気持ちが敏感な方は読むのをお控えくださいませ。
「緊急措置入院」ってナニ?
「緊急措置入院(きんきゅうそちにゅういん)」とは、精神障がいのある方の入院形態の一つです。簡単に言うと精神障がい者が著しく自傷・他傷行為に及んだ場合・もしくは及ぶの危険性がある場合に2名以上の精神保健指定医の診察が一致した場合、強制的に入院させられるというものです。
(それには詳しい要件や法律などがあるので詳しくはこちらを参照してください。)
■自傷行為
致死性の高い自殺企図、致死性が高いとはいえない自殺企図、自殺の意思表示行動、自殺の言語的意思表示
■他害行為(未遂を含む)
身体的損傷を伴う対人暴力、前記以外の対人暴力、器物破損、その他の触法行為相当の他害行為、触法行為以外の他害行為・迷惑行為
といった自分や他人に危険が及ぶと判断された場合に適応されます。(日本精神科救急学会ガイドラインより)
「服薬なんて気休め」私は治療を諦めた
私は難治性の側頭葉てんかんで、数種類の薬を飲んでも発作のコントロールができません。最初のうちは「きちんと服薬して、生活リズムを整えればきっと発作は止まる!」そんな淡い期待をしていました。しかし「難治性」そう聞いた時その期待さえ消えたのです。
「どうせ治りもしないし発作のコントロールもできないなら、通院も服薬も無駄じゃない。」
そう思った時から私は通院を辞め、自己判断で断薬をしました。何かが吹っ切れたように摂生していたアルコールも浴びるように飲み、生活リズムも乱れに乱れ、潰れるほど飲んでオール三昧という日々を続けました。その間もちろん発作は頻繁に起こっていました。
しかし、
「ああ、また発作か…どうせ治んないんだからなるようになればいい」
不安も恐怖もありませんでした。「どうせ現状は変わらない、死んだってかまわない」。完全に自暴自棄になっていたのです。その間、頻繁にきていた病院や親からの電話を取ることはありませんでした。
「自分が自分ではなくなった」深い傷を残した緊急措置入院
そんな状態が1年ほど続いた頃、ちょっとした対人トラブルがキッカケで自分が自分ではなくなったのです。
正気の沙汰ではありませんでした。
叫び、怒鳴り散らし、泣き、暴れ、自分のはずなのに自分がコントロールできない。警察と救急隊員に囲まれ、麻酔を打たれ、次の記憶は窓に鉄格子のある部屋の中でした。
大げさなまでの厳重な鍵のついたドア、制限される行動、取り上げられる私物、ベッドの横で泣く親。
「若気の至り」では済まない状況でした。一歩間違えれば人に危害を加えていたかもしれない、ここにさえいなかったかもしれない。自暴自棄になった結果がこれでした。
その時からこう思うようになったのです。
「治療を諦めるのは自分の勝手。しかし、家族や人様に迷惑をかけるような状態になるのは違う。」
その後は通院・服薬・摂生を欠かしませんでした。病状が改善するとは、依然、信じてはいませんでしたが。
「こんな薬を飲んだって治らない。」そう愚痴をこぼしても、恨んでも憎んでも、毎日欠かさず飲み続けました。私はその小さな粒をいくつも飲むことで「生かされている」のだと、あの緊急措置入院を経て理解させられたからです。
その生活を10年続け、通院や服薬、摂生などとにかく行動を継続することで「障がい受容の心」を芽生えさせ、紆余曲折を経て27歳になってようやく受容できたのでした。
もう現実から目を逸らさない
摂生や節度を持つことは容易なことではありません。また、それを継続することも強い意志が必要です。まだ障がいを受容できない方、受容できている方でも現実から目を逸らしたくなる時もあるかと思います。
しかし症状をきちんと把握し、医師と対話をしてみてください。思わぬ希望が見えてくるかもしれません。そして、自分の弱い部分も受け止めた上で障がい受容を目指すことは、もしかすると近い将来あなたの更なる成長に何かしらの影響を与えてくれるかもしれません。
どうか私の苦い過去が少しでも皆さまのお役に立ちますように。
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ライター わに
17歳の時に側頭葉てんかんを発症、精神障害者手帳2級の障がい者。 酸いも甘いも経験してきた熟れ時アラサー女子。 「全力で働き全力で遊ぶ」がモットー。 誰彼構わず噛みつき周囲をヒヤつかせるため「わに」。 過激な記事を投稿しようとし編集長に止められるのが日課。
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