「みんなの”普通”は普通じゃない」母の言葉が12年間の呪縛を解いた
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ライター:わに
皆さんこんにちは!てんかん当事者でゼネラルパートナーズにてライターをしているわにです。以前の記事でも書いてきましたが、私は障がいを負ってからこれまで「普通」の生活がしたい、と思いに囚われながら生きてきました。私と同じ思いをされている方もいらっしゃるかもしれません。しかし私はある日母から言われた一言でその呪縛から解かれたのです。
「健常者と同じ」それが幸せだと信じていた
以前、こちらの記事を書きました。
記事:「普通」の幸せってなに?~てんかんと診断されてから10年、障がいを受け入れたことで拓けた世界~
記事の中で私は「普通の人」「普通の生活」「普通の幸せ」・・・「健常者と同じ生活をしたい」という想いに縛られてきたと書きました。健常者と同じことをして、同じ生活をして、同じ目線で物事を見る。それこそが「幸せ」だと思っていたのです。
しかし現実は、健常者がしなくてもよいことを私はしなければならない、健常者ができることを私はできない。そんなことの積み重ねでどんどん自分の首を絞めていったのです。
恋愛をしていても「“普通の人”と付き合ったほうが彼は幸せになれるんじゃないか」「私に障がいがあることで付き合っていて苦労をかけてしまっている」という想いがいつも常に心のどこかにあって申し訳なさすら感じてしまっていました。
常に健常者と障がいのある自分を比較して、私はこう思うのでした。
「健常者は発作に怯えることもなく当たり前のように生活をして、薬の飲み忘れはないかの確認も必要なく、どこに行くにも何をするにも制限はなく、ただただ純粋に楽しめる。それが“当たり前“であるかのように。」
私は羨ましかったのです。そして、悔しかったのです。
障がいを負ってから「健常者は当たり前のように“普通”の生活を送っている。それが幸せだとも知らずに。私もその“普通”が欲しい。」そう叫び続けてきたのです。
12年間の呪縛を解いた母の言葉
叫び続けて12年の歳月が過ぎていました。
「普通」の呪縛が解けなかった私にある日母がこう言ったのです。
『あなたは“普通”になりたいっていつも言うけれど、みんなの”普通”は普通じゃないんだからね。』
私はすぐに母の言葉の意味を理解することはできませんでした。しかしその言葉の意味を聞いているうちに、いかに私が浅はかな考えを持って更にそれを記事として世に出してきたのかと、己を恥じました。
母は続けて私にこう伝えました。「健常者、障がい者、LGBT、シングルマザー・ファザー、海外移民…多様性が高まってきているこのご時世で他人の生活を一概に”みんな同じ=普通”の生き方だと決めつけてはいけない」と。
外からみれば「普通の生活」をしているお隣さんや、自分にできない「当たり前のこと」を当たり前にしている人でも、実際その人たちの生き方は千差万別で、皆、色々な方向に葛藤を抱え努力し、何気ない顔をしているだけなんだと。
『私達には健常者に与えられたような「当たり前の幸せ」はありません。何かしらの制限を打ち砕く努力、より快適に過ごすための努力、幸せに生きるための努力を私達はしています。』
過去に私は記事の中でこう綴りました。
しかし「何かしらの制限を打ち砕く努力、より快適に過ごすための努力、幸せに生きるための努力」それをしているのは私達障がい者だけではなかったのです。
健常者と障がい者の心の境界線
この時まで私は健常者の気持ちを考えようともしていませんでした。一線を引いて傍観者になって、その人たちの困難や葛藤を知ろうともせずに一概に「普通の生活」をしていると思い込んでいました。そして彼らは「当たり前に享受している“普通”」を幸せとも感じずに、垂れ流しているのだと憎みさえしていました。
しかし違ったのです。私は物事に様々な側面があることを忘れ、自分のいる側からしか彼らを見ていませんでした。そんな自分が恥ずかしく思えてきました。
私もその「普通のように見える人たち」と同じく葛藤を抱え、困難を克服しようともがいて生活をしている。乗り越えなければならない壁が「障がい」というだけで、彼らとなんら変わりはなかったのです。一見当たり前の生活を普通にこなしているように見える他人を羨むのは検討違いだったとその時ようやく気づかされました。
もし皆さんが障がい上できないことで葛藤を感じたり、辛い思いをして障がいがある自分が嫌になってしまった時。周りの人は普通で自分は普通じゃない、自分に当たり前の幸せはないんだ、そう考えてしまった時。思い出して欲しいのです。
「みんなの”普通”は普通じゃない」と。
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ライター わに
17歳の時に側頭葉てんかんを発症、精神障害者手帳2級の障がい者。 酸いも甘いも経験してきた熟れ時アラサー女子。 「全力で働き全力で遊ぶ」がモットー。 誰彼構わず噛みつき周囲をヒヤつかせるため「わに」。 過激な記事を投稿しようとし編集長に止められるのが日課。
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