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インクルーシブで活発なイベント「コオフクマスク2020」レポート!誰でもおしゃれを楽しめる社会へ

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ライター:遠藤光太

おしゃれはいつでも誰でも、したいときにできるもの・・・ではありません。例えば、車いすユーザーは、既製の服を着る動作が難しかったり、身体にフィットする服が少ないということも。また、発達障がいなどで感覚過敏があると、服の縫い目がチクチクと感じて着づらく、選べる服が少なくなるという方もいます。

 そうした課題を解決するために活動しているのが、任意団体コオフクです。「私らしく。あなたらしく。誰でも、おしゃれを楽しめる社会」をコンセプトに、2016年、アパレル業界出身の有志が集結しました。服のリメイクの他にもさまざまな活動を行い、みなのQOL向上を目指しています。「コオフク/CO-FUKU」とは、「CO(共同、相互)服 」「考服」「幸福」の意味があるそうです。

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コオフク代表の西村佳子さん

 コオフクはこれまでにもさまざまな活動を行なってきました。「コート」を題材にしたワークショップでは、当事者から困りごとを共有し、服作りのプロのみなさんとともに、両袖にファスナーのついた着脱しやすいチェスターコートなどを制作しました。
 また、成果を発表する展覧会も行いました。来場者は、車いすに乗って鑑賞する、視覚障がいを体験して鑑賞するなど、ここでも多様な人々への想像力を掻き立てるような趣向が凝らされていました。

CO-FUKU masQ コオフクマスク2020開催!

 今回、コオフクがテーマにしたのは、マスクです。
 コロナ禍を通してさまざまなデザインのマスクが流通し、新たに“おしゃれアイテム”としても定着していますが、一方で、障がいのある方々には着脱が難しかったり、合うものが少なかったりするのも事実です。

 そこで、困りごとを抱える当事者、アパレルメーカー社員、学生、一般参加者など多様な方々がオンラインで集いました。「CO-FUKU masQ コオフクマスク2020」と題する今回のイベントでは、複数回のワークショップを通してそれぞれのニーズを理解し、考え、マスクを制作します。そしてイベント出展にて成果物を披露し、最後には、必要とされている方にお届けできるよう各社でアイデアを出していきます。
 なお、本イベントは任意団体コオフクのほか、株式会社アダストリア、株式会社ワールドの協力、渋谷区の後援によって実現しました。また、株式会社三陽商会が協力するワークショップもこの期間に並行して行われています。

 ワークショップDAY1が開催されたのは、関東甲信地方の梅雨明けが発表された8月1日。拠点となった株式会社アダストリアのオフィスには最低限の人数のみが来場し、オンラインで参加する50名近いみなさんとともに、いよいよワークショップの開催です。

※本取材は、最低限の人数の参加、こまめなアルコール除菌やフェイスシールドの着用など、万全の感染対策を期して実施しました。

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会場を提供した株式会社アダストリアは、「GLOBAL WORK」「niko and ...」「LOWRYS FARM」など、多くのブランドを展開してるアパレル企業です。CSR活動の一環として、「⾃分らしくファッションを楽しめる社会」を掲げ、コオフクの活動をサポートしています。

障がいのある方とオンラインイベント

 さて、イベント本番です。当事者のみなさんとコオフクは、当事者同士の横の交流や渋谷区の広報などを通して少しずつ広がっていったそうです。今回は、事前に決められた6〜8名ずつのグループに分かれて話し合いをします。

 ちなみに、イベント開始前に行われた各グループのリーダー・サブリーダーの事前ミーティングでは、「情報保障」についても確認されていました。オンライン会議を利用するにあたって、聴覚障がいのある方がいるグループでは、できるだけチャット機能を活用することなどを確認。イベントへのアクセシビリティを確保していきます。

 冒頭は、西村さんによるイントロダクションです。
「マスクつけにくい人のマスクって、ないですかね?」との声を耳にして、多様なニーズに気づいたそうです。

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そして西村さんから、有意義なワークショップにするためのお願いごとが提案されました。

・この時間を楽しもう
・参加者それぞれの価値観を受け入れよう
・自分らしく貢献しよう

マスクに対する当事者のニーズとは?

「マスクをつくる」というゴールへ円滑に進んでいくために、参加者のみなさんには事前にアンケートが行われ、各グループメンバーにはその解決案を持ち寄ってもらいました。浮かび上がってきたニーズは、以下のようなものでした。

・マスクが見えない、見にくい
・マスクがつけられない、はずしにくい
・普段の生活でマスク外す、置く、しまうといった動作が難しい
・マスクが息苦しい

「マスクがつけられない、はずしにくい」という困りごとを伝えたのは、グループリーダーも務める堀江奈穂子さんです。堀江さんは右半身に麻痺があり、左手のみでマスクの着脱をしているため、マスクの位置がずれてしまったり、一方がよれてしまったりするそうです。グループの話し合いでは、堀江さんが実際にマスクを着脱する様子を画面越しに見せていました。

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堀江奈穂子さん

 他のグループでも、マスクが見えづらくて上下や裏表を間違えてしまう、たんの吸引をする際にマスクの取り外しが難しい、といった困りごとが共有され、それらを解決するデザインの話し合いが活発に交わされました。

 最後には各グループが話し合いの成果の発表です。
 ワールドの「アンビルト タケオキクチ」デザイナーの大迫マサアキさんは、話し合いの最中に描き起こしたイラストを見せながら発表しました。このように、当事者、服作りのプロ、学生や一般参加者など多様なみなさんがともに考えることによって、ニーズを現実的にデザインし、量産化までをも見据えていくことができます。同社広報の阿部さんは「悩みは当事者のみなさんに聞かないとわかりません。弊社の技術をうまく活かしてもらえたらと思います」と語っていました。
 大迫さんたちのグループでは、着脱がしづらいという課題に対して、首にかけておけて、指一本で着脱できるようなマスクが提案されていました。

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大迫マサアキさんによるデザイン案のイラスト。今後さらにブラッシュアップしていきます。

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「シブヤフォント」を用いた生地。シブヤフォントとは、渋谷でくらし・はたらく障がいのある人の描いた文字や数字を、渋谷でまなぶ学生がフォントとしてデザインしたパブリックデータで、2019年にグッドデザイン賞を受賞しています。渋谷区は2016年からコオフクのワークショップに協力し、2017年から後援してきました。

多様なメンバーによる活発な意見交換が実現

“寝たきり芸人”として活躍するあそどっぐさんも参加。あそどっぐさんは、「マスク一つとっても、いろんな人がいろんなアイデアを出していて、自分では思いつかないような考えに触れられました」と感想を共有しました。

 とてもエネルギッシュな西村さんも、初のオンライン大規模イベントに、最後は少々お疲れの様子。
「こちらの会場はしーんとしていて、実感があるようなないような…(苦笑)でも、トークルームに入るとどこも積極的な話し合いで、ホッとしました。2時間ありがとうございました」

 各グループのインクルーシブなメンバーのみなさんが、非常に活発な意見交換を交わしていたのが印象的でした。

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誤ってオンライン会議の部屋から退出してしまうなどのトラブルもありましたが、スタッフが臨機応変に対応し、オンラインイベントを支えました。

CO-FUKU masQ コオフクマスク2020のこれから

 マスクだけを考えても、多様な人々には多様なニーズがあります。そして、異なる立場の方々が集まって、活発に意見交換をすることで、不便の解消だけでなく、おしゃれを楽しめるようなきっかけが作れるーー。普段とは異なるオンライン開催でしたが、素敵なイベントとなりました。

 これからさらにワークショップを重ね、各グループのマスクを具現化していきます。CO-FUKU masQ コオフクマスクの完成披露は、9月にオンライン開催される「2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展」の予定。今後のコオフクの活動にも要注目です!

文・写真:遠藤光太

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ライター 遠藤光太

発達障がいの当事者。二次障がいでうつ病になり、休職を経験。現在、フリーライター。さまざまな媒体での記事執筆のほか、テレビ番組等で活動中。

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