Windows画面読み上げソフト、初心者にオススメなのは?
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ライター:榎戸篤(えのきど)
こんにちは!視覚障がいのライター、榎戸(えのきど)です。新型コロナの蔓延が長引いていますね。そのような影響もあり、PCを初めて使う方もいるのではないでしょうか?
そこで今回、Windowsの音声ユーザーには必須の画面読み上げソフトについて取材。初心者にオススメなソフトを調べてきました。
「とにかく、最初の一つを教えてほしい」
「情報はいろいろあるけど、何を買えばいいの?」
「それぞれのメリット・デメリットを教えて!」
という方、ぜひご覧ください!オススメの紹介の前に、各読み上げソフトのメリット・デメリットなどをまとめてみました。
視覚障がい者用 Windows画面読み上げソフト(スクリーンリーダー)まとめ
名前 | 購入価格(目安) | メリット | デメリット |
PC-Talker | 年6000~7000円前後。 ネットリーダーとのセットで年9000円前後(3 年契約時) | ・実績・ユーザー数が多い ・基本的なソフトが充実 ・音声が良い ・漢字・点字の読みが丁寧 | ・一部のWebサイトに対応できない部分がある |
NVDA | 無料 | ・導入コストがかからない ・読み上げられるWebサイト数が多い | ・PC-Talkerより音声が落ちるという声も。 |
ナレーター | 無料 | ・最初からWindowsに搭載 ・基本的に無料 | ・対応していないアプリ・Webサイトが多い ・漢字変換など打ち込みにやや難あり |
JAWS | 15万円前後 | ・機能が充実している ・読み上げられるアプリ ・Webサイト数が多い | ・導入コストがかかる ・操作がやや複雑 |
https://span.jp/useful/appli_list/index.html
※価格は、個人が実費で買った場合のものです。
さて、いよいよ本題。
今回は視覚障がい者向けのPC教室を行うNPO法人スラッシュの副理事長で、自身も音声でPCを操作する山賀信行さんに「初心者にオススメなソフト」を聞いてきました。
ズバリ!初心者にオススメな視覚障がい者向け画面読み上げソフトは・・・「PC-Talker」!
山賀さんに「初心者・PCが苦手な人にオススメなソフトは?」と聞くと、まずあげてくれたのはPC-Talker(株式会社 高知システム開発)でした!
その理由をまとめると、
1・Word、ExcelなどのOfficeソフトに強い。
2・専用ソフトが充実している。
3・視覚障がい者が使いやすい設定にできるソフトがついてくる。
4・音声が聞き取りやすい。
とのこと。
2・専用ソフトについて、PC-Talkerにはネット・メール・読書・住所管理などを行うことができる専用ソフトがあるそうです(ネットの専用ソフト・ネットリーダーなどは別売)専用のソフトであるため、補助機能が充実しているということです。
3・視覚障がい者が使いやすい設定にできるソフトがついてくるというのは、例えば通常スタートメニューからプログラムを選ぶ場合、3階層になっていて、上下・左右にカーソルを移動させなければなりません。この仕様だと、音声ユーザーにとっては今どの位置にいるのかがわかりにくいです。しかし、PC-Talkerにはスタートメニューを一列にしてくれるソフトが付いてくるそうです。
また、押しているキーが何かを教えてくれるキーボードガイドなどもついてくると言います(後述のNVDAにもついているそう)
4・音声が聞き取りやすいというのも、画面読み上げにおいてはポイントだと言います。
たしかに僕も、聞き取りにくい音声を使い、何度か聞き直して時間のロスになった経験があります。
山賀さんは「PC-Talkerは視覚障がい者に長年愛用されてきた蓄積、高水準の技術があります。そのため、かゆいところにまで手が届いているような、手厚い配慮がある感じがあります。やはり初心者やPCが苦手な方にはまずPC-Talkerをオススメしています」と語りました。
ネットを重視するなら・・・「NVDA日本語版」
では、PC-Talkerが完璧かというと、弱い部分もあるそうです。
たとえば、Webで作業をするサービス(Zoomをアプリではなくネットで使う場合や、ギガファイル便、ネット上でのデータ変換サービスなど)は、PC-Talkerが使えないケースや、使いにくいケースがあるとのことです。
そこでWebで力を発揮するのが、NVDA日本語版(NVDA日本語チーム開発)です!
NVDAはWebアプリやプログラミングに強く、上記のようなサービスも使えるケースが多いようです。
山賀さんは、「なので、初心者の方はまずPC-Talkerを使ってみて、そしてNVDAを併用するのが良いと思います。NVDAはユーザーからお金を徴収していないので、導入コストもかかりませんしね」と話してくれました。
(ただし、山賀さんは「ユーザーからお金を徴収していないと言っても、ソフトをメンテナンスをしてくださっている方たちがいるので、お金がある時で良いので寄付などを行ってもらいたい」とも付け加えました)
画面読み上げソフトJAWSは初心者にオススメか?
画面読み上げソフトとして、JAWS(有限会社 エクストラ開発)もよく耳にします。そのため初心者にオススメか、山賀さんに聞いてみました。
結論、「初心者の個人ユーザーは必要ないと思う」とのことでした。
JAWSは、機能がかなり充実し、「JAWSでできないことはほぼない」とのことですが、費用がかなりかかるようです。購入だけでも15万円前後、それに加えバージョンアップにも数万円単位で追加料金が発生するそうです。
よって初心者には、まずはPC-TalkerとNVDAをオススメするとのことです。
インストール不要の読み上げソフト「ナレーター」は初心者に使いやすいか?
最後に、Windowsに最初から搭載されているナレーター(マイクロソフト株式会社)についても聞いてみました。
実は僕も、ネットで長文を読むときに少し使っています。基本的にインストールや購入が不要なため、手軽なんですよね。
ただ山賀さんいわく「ナレーターは「ファイルを開く」「設定をする」といったPCの基本的な操作までしかカバーできていないのが現状」だと言います。
また、文書・ネットなどを簡単に読むことはできますが、書くことは難しいとのこと。
なので、拡大文字ユーザーが補助的に使う分には活用できますが、音声ユーザーにとっては難しいそうです。
おわりに
ということで、初心者へのオススメなのは・・・
「PC-Talker」と「NVDA」の併用でした。
当然ですが、画面読み上げソフトは用途によって使い分けが必要なようです。
ぜひ今回の記事を参考にしつつ、ご自身の用途に合ったものを見つけていただければと思います。
▼NPO法人スラッシュの情報
今回取材にご協力いただいた視覚障がい者向けPC教室のスラッシュの情報です。僕もお世話になったことがありますが、1対1で親切に、個々のレベルにあわせて教えてくれます!
最寄り駅:東京都 JR中央線荻窪駅徒歩5分ほど
営業日:水・木・土・日
営業時間:10:00~16:00
電話:03-5397-0644
メールアドレス:slash101@me.point.ne.jp
http://www4.point.ne.jp/slash/
※現在新型コロナ対策として、オンラインでの授業を行っているとのことです。
▼山賀信行さんのHP
取材に応じてくれた山賀さんのHPです。お役立ち情報が満載です!
https://www.yama3nomori.jp/
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ライター 榎戸篤(えのきど)
テレビ番組の制作会社で働きながら、ライターとして活動する視覚障がい当事者。3歳の時、保育園で転んで怪我をし、弱視に。視力は左0.06、右0。 障がい当事者ら向けの旅行サイト「COTRAVEL」などで執筆中。 https://www.cotravel.jp/mypage/5e9438bd76fc4/ 記事のご感想などありましたら、こちらにいただけると有難いです。 uj092021@yahoo.co.jp 記事は、ひとつひとつを丁寧に、懸命に、心をこめて・・・書かせていただきます!
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