脳性まひのある私が、重度訪問介護の利用で一人暮らしをして、はじめてコンビニに行った話
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ライター:久田李菜
私には脳性まひという障害があります。文字を書くことと話すことは自分一人でできますが、着替えや入浴といった日常生活には介助が必要です。
いつの頃からか「障害があるからできない」とあきらめ、殻に閉じこもっていた私が、大学進学をきっかけに一人暮らしを始めることになりました。その経緯や思い、今の状況をつづります。
18歳ではじめて、コンビニにコスメがあることを知る
18歳から一人暮らしをしていちばん驚いたことは、コンビニにコスメが売っているのを知ったことでした。
一人暮らしをして、私ははじめてコンビニに行きました。夜遅い時間にどうしてもアイスが食べたくなり、家の近くにあるセブン・イレブンに行ったのです。
店内で買い物するのはこのときがはじめてでした。食べ物が売っているのはもちろん知っていましたが、私は、文房具やコスメ、雑誌、生活用品など、さまざまなものが売っていることを知らなかったのです。「コンビニで生活に必要なものが揃ってしまう」ということに衝撃を受け、そして感動しました。
一人暮らしをするまでは車の中で誰かが買ってくることを待っていることしかできませんでした。新作や限定商品が店頭に並んでいることも知らず、具体的に商品を指定することもできなかったため、いつも同じものばかり食べていたような気がします。
おそらく大半の人は、自分が覚えていないくらいの小さい頃に、コンビニの店内に入ったことがあると思いますが、私は18歳で、はじめてその経験をすることができたのです。
好きなときに好きなものを食べられることは、当たり前ではありませんでした
介助者に口頭で指示をする難しさ
18歳から一人暮らしを始めた私は、重度訪問介護という福祉サービスを利用しています。掃除、洗濯、料理といった一人暮らしに必要な家事全般や身体介助を、私の指示のもとで介助者が行います。実際に経験してみて、これが意外と難しいことがわかりました。
初めてみそ汁を作った時は、料理の指示をした経験もなかったため、具材の切り方もよく分かりませんでした。具材にも十分に火が通らないうちに火を止めてしまい、とても硬くて、味も濃すぎたのを覚えています。
そんな失敗をしながら、少しずつ味付けを調整しては試してみて、自分好みの仕上がりや味付けを見つけられた時の達成感は大きかったです。今のマイブームはひじきの煮物で、よく作って食べています。
もうひとつ難しかったのは、洗濯物を畳むことです。口頭で畳む方向などを正確に伝えることは、実演できない私にとって、とても難しいことなのです。口頭で伝わらないときは、参考になる動画を見てもらったり、すでに収納してあるものを参考にしたりします。発想を変えて畳まずにハンガーに掛けたままにすることもあります。洗濯物ひとつとっても、色々な方法があることを見たり聞いたりしながら学びました。
誕生日をお祝いしてもらいました
自分で判断する機会が少なかったことを実感
私にとって指示を出すのが難しかったのは、それまでいつも先回りして動いてもらうことが当たり前の生活を送っていたからです。自分で何も要望を伝えないまま済んでしまったことが多くありました。ある程度決まったスケジュールの中で生活してきた私にとって、一日をどのように過ごすのかを自分で決めることは、とても難しいことでした。
自分で判断する機会が圧倒的に少ないと「何をやりたいのか、やっていいか」すらわからなくなっていくのだと痛感しました。
私は失敗を繰り返して、自分の生活を組み立てていきました。私の生活をサポートする介助者の多くは、学生の方です。それぞれの経験値や価値観も違います。一人暮らしを始めたばかりの人や家事をあまりしたことがなく初めて包丁を握る人など、得意不得意は本当にさまざまです。
一人暮らしを始めてから10年たった今でも、指示を的確に出すことは苦手です。私も介助者も不完全ですが、お互いに試行錯誤しながら、日々を過ごしています。
私の生活を支える現在の介助者は全体で15名ほどです。予定によって活動時間に変動はありますが、9時~18時の日中、19時~翌朝8時の夜間で、それぞれ1名ずつ、二交代制でサポートしてくれています。1日に22時間ヘルパー制度を利用しているということです。
誰かがそばにいることは、ときにはストレスにもなることもあります。しかし、私は介助者がいることで気兼ねなくトイレに行けたり、食べたいときに食べたいものを作って食べたり、旅行に行けたりできています。誰かの顔色を窺うことなく自分のタイミングで介助を頼めることは、自分の殻を破る大きなきっかけになりました。
介護制度の現状。家族介護が当たり前?
訪問介護は、居宅介護と重度訪問介護に二分されます。私が利用しているのは重度訪問介護です。
重度訪問介護は、居宅介護と比べて単価が低く設定されています。利用時間が短いと事業所にとってのデメリットが大きくなってしまうこともあり、重度訪問介護を実施する事業所は少ないのが現状です。私の住んでいる自治体でも実施している事業所は少なく、私は他の自治体にある事業所を利用しています。さらに地方に行けば行くほど、制度そのものを知らない専門職や行政の担当者も多いという実感もあります。
また、未だに「家族介護が当たり前」という考えが根強く残っているのも大きな問題だと感じています。この負の連鎖が制度を使いにくくし、必要な人にサービスや情報が行き渡らない現状を引き起こしているのではないでしょうか。
誰もが環境に左右されず、自分の人生を自分らしく生きていけるようにするためにも、制度全体の在り方を見直す必要があると、私は思います。
「障害があるからできない」ではなく「どうしたらできるか」。重度訪問介護サービスを利用することで、私の考えは変わりました。人生は一度きり。私が私の人生を生きるために、少しでも多くの方々にこのような選択肢があることを知ってほしいです。
みゆさん(中央)とゆりさん(右)は、所属している団体のヘルパー兼メンバーです
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ライター 久田李菜
1995年1月6日生まれの28歳 脳性麻痺という障害で、手足に麻痺と体幹機能障害がある。 18歳から重度訪問介護の制度を利用しながら、1人暮らしをスタートさせた。 口癖は、「なんとかなる!!」
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