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発達障がいのある人が無理ゲーの難易度を下げるには?【後編】

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ライター:遠藤光太

『発達障害の人の会話力がぐんぐん伸びる アイスブレイク&ワークショップ』(著者:冠地情、漫画:かなしろにゃんこ。/講談社)が出版されました。著者の冠地情さんは発達障がいの当事者で、ご自身の生きづらさを原点に、これまで1000回以上のワークショップを主催。前編に引き続き発達障がい当事者の遠藤光太がお話を伺いました。

さらに遠藤光太が突っ込んでみた!

こんにちわ、桜の季節も近づきつつある今日この頃です。
いかがお過ごしでしょうか。

この度、『発達障害の人の会話力がぐんぐん伸びる アイスブレイク&ワークショップ』が出版されました。著者は「イイトコサガシ」の冠地情さんで、かなしろにゃんこさんが漫画を描いています。

発達障がいの当事者でもある冠地さんが主宰する「イイトコサガシ」は、コミュニケーションを安心して練習できるワークショップを提供しています。これまでの開催実績は全国43都道府県、都内47区市(離島以外全域)で、回数は延べ1000回以上!本書はその確かな実績に裏打ちされたワークショップのメソッドを、かわいらしい漫画で読みやすく仕上げられています。

今回は本書の出版を記念し、同じく発達障がいのあるライターの遠藤光太が、冠地情さんにお話を伺いました。それでは、後編をお楽しみください!

前編記事はこちら

https://www.media116.jp/other/9193

バンジージャンプで、コミュニケーションの怖さを実感!?

冠地さんがバンジージャンプを飛んだときのこと。後ろを向いて背中からまっすぐ倒れるように飛ぶのがセオリーなのですが、「1、2、3、はい!」と急かすように促されて降りてみると、怖さで身体をひねってしまったそう。また、同行した方によると冠地さんは階段を登る途中で何度も立ち止まっていたそうですが、ご自身は全く覚えていなかったとか…。

「自分と向き合うってこういうこと?」と、冠地さんは感じたとのこと。つまり、「ワークショップに来て自分と向き合うことは、もしかしてバンジージャンプを飛ぶぐらい怖いことなのではないか?」と。

イイトコサガシのワークショップに参加する方には、コミュニケーションに困りごとを持っている方も多くいます。それでも改善しようと意を決し、向き合いたくなくなるような「自分」に向き合う覚悟で来てくれる方に、どんな場を提供できるか。冠地さんは「うまくやるための場じゃない」と強調します。前編にもあるように、イイトコサガシが大切にしている価値観は「試しただけで大成功」。バンジージャンプぐらい怖いからこそ、参加して試せただけで肯定される場を作っているのです。

冠地さん自身の生きづらさ。そして本を“共創”した

冠地さんご自身も発達障がいがあります。人間関係がうまくいかなくなって引きこもることを繰り返し、親御さんから「いい加減にしなさい」と叱責されていた経験もあるそう。そんな中、本書の制作では編集者や漫画家のかなしろにゃんこさんと関係を築いて“共創”を実現した結果、早くも重版がかかっています。

「『社会性』と『自分らしさ』」の折衷がわかってきたのかなと思います。僕じゃない人(編集者)がどこにフォーカスし、優先順位を付けていくか、勉強になりましたね。

それでいて、自分自身が書きたいことはきちんと主張する“セルフ・アドボカシー”も実践していました。コツは「意見や思いはきちんと伝えて、そのあとは相手の意見もしっかりと受け入れること」です。「丸くなったんですかね」と笑う冠地さんのやわらかい表情が印象的でした。

発達障がいについては、冠地さんは「問題はそこじゃない」と断言します。

「生きづらさには本当はたくさんのパターンはなくて、『退化硬直しているかしてないか』だと思ってるんですよ。試さないと、可動領域が狭まっちゃうので。たくさん試してみて、“情報”を“知識”に変換する。そして試す範囲を広げていって“知恵”、さらに“叡智’へと変えていくことが大事だと思っています」

特性の濃淡や種類は人によって多様ですが、小さな「試し」から始めてみることで、生きづらさは緩和されていくのかもしれません。

“人生無理ゲー”の難易度を下げたい

冠地さんは「“人生無理ゲー”の難易度を下げること」を目指しているそうです。

「本当は魅力や可能性に恵まれている人たちが搾取されている状況はいやなんですよね。それをリセットしたい。“無理ゲー”な人生の難易度を下げたいんです。1人の天才を生み出すよりも、1万人の生きづらさを解消したほうが、イノベーションも生まれると思って活動しています」

そのために開催している「試しただけで大成功」のワークショップは、真似されることも大歓迎だといいます。

「読んでくれた方には、(イイトコサガシに参加するだけでなく)ぜひ自分で実践してほしいです。

魅力や可能性の種まきをしたい人は、ファシリテーター(ワークショップを良い方向に導く進行役)になるのがおすすめですね。ファシリテーターは、自分の後ろに誰もいないゴールキーパーのようなものです。命令しちゃいけないし、怒ってもいけない。これは鍛えられますよ!」

「今後どんな人でありたいですか?」と訊ねると、「うーん」と考え込んでから「悪い意味での既得権益になりたくない。全てさらけ出して、次世代に還元できる人でありたいです」と力強く語ってくれました。

取材を終えて

連日のワークショップでお忙しい時期に取材に応じてくれた冠地さん。学生時代の授業で話が脱線してしまうとき、表情がキラキラしていた先生の雰囲気が好きだったそうですが、ゼネラルパートナーズ本社で行われたインタビューでは、楽しい「脱線」を挟みながら、活き活きと語ってくれる姿が印象的でした。『発達障害の人の会話力がぐんぐん伸びる アイスブレイク&ワークショップ』を、ぜひ手に取ってみてください。冠地さん、ありがとうございました!

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ライター 遠藤光太

発達障がいの当事者。二次障がいでうつ病になり、休職を経験。現在、フリーライター。さまざまな媒体での記事執筆のほか、テレビ番組等で活動中。

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