インド人障がい者とその日常(障がい者自転車放浪inインド編③)
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ライター:keita0206
こんにちは、上肢障がいのケイタです。まだまだ暑い日が続きますね(執筆当時9月)。インドは季節で言うと秋に入りかけの時期みたいですが、それでも日中はまだまだ暑いです。前回、障がい者の方に直接インタビューしましたが、その後インドの貧困層や彼らの生活環境についていろいろインタビューをさせていただきました。今回はその内容をご紹介していきたいと思います。
俺がいろいろ案内してやる!俺は徳を積みたいだけだぜ!
前回、インドの障がい者の方にインタビューさせてもらった後、もう少し詳しく、彼らの生活について聞きたいと思い、彼らのいそうな寺院を探していた。
「Hey Japanese!何か探してるのかい?」
いきなり近寄ってくるインド人のおっさん。向こうから何か言い寄ってくる輩は、話に乗るとろくなことがない。この時私はまだその点について甘かった。
障がい者のいそうな寺院を探していると伝えると、オーケー!案内してやるよと。
あんまりたくさんお金は渡せないよと伝えると、
「No Money!俺はカルマをなくして徳を積みたいだけなんだ!」と、耳障りの良い言葉が返ってくる。
胡散臭さを感じつつも、興味本位もあり案内してもらうことにした。
案内してくれたマリー。仕事は何してるのと聞いたらガバメントスタッフと。嘘の疑念はこの後確信に変わる。
連れていかれたのは大きな寺院。マップで見るとシーク教の寺院と書いてある。中に案内されると、帽子はとってターバンを巻いてくれ、半ズボンはダメだから長ズボンを履いてくれ、ここで靴を脱いでくれなど、しきたりが日本のお寺や神社より結構厳しい。
寺院の中には、無料の配給食も提供されており、障がい者や物乞い人たちもそこによく食べに来るそうだ。誰でも施しを受けることができるため、私も見学しつついただいてみた。
インドの寺院。デリーの街から近い。
インド人のカメラアングル感覚
おどけるマリー
この国に来て初めてお目に掛かるバリアフリー。
配給食を作っている食堂の風景。
すべての人に施される食事。無料だが結構おいしい。
俺の家に来ないか?
一通り寺院を見せてもらった後、マリーから
「俺の家の近くにお前が探しているような障がい者が何人かいる。よかったら俺の家に来ないか?」との提案が。うーむ。知らない人の家に着いて行くの危ないと再三聞いているが、どうしても見てみたい好奇心が勝り、行ってみることにする。狭い部屋に入れられそうになったら、入らないようにすれば大丈夫だろう。
タクシーで家に案内されると、着いたのは日本の団地のような場所。たくさんの住居者で賑わっており、団地の通り道には露店もちらほらある。団地の中心には、リバーのような場所もあり、そこで多くの人がトランプをしたり、タバコを吸っていたりした。
団地の溜まり場
ここでは、日本人のような他人との壁はほとんどない。
インドにはイケメンが多い①
近くに学校があったので、案内してもらう。学校は、制服や教育費等諸々無料で、そのお金は政府が賄っていると言う。つまり、お金がない家庭の子でも、教育は等しく平等に受けることができる。
フリースクール。英語の読み書きなどを教わることができる
中学か高校。制服や教材は政府が無償で提供してくれる
インドにはイケメンが多い②
マリーの家を案内してもらう事にする。案内されたのは、玄関のドアもない家と言うより解放された空間。ここに父、母、妻、娘と自分の5人で住んでいると言う。
広さで言うと8畳から10畳程度か
家賃を聞くと、15,000円ほどで住んでいると言う。電気と水はタダで、食事は毎日、団地の公的な炊き出しがあるので、それで賄っていると。値段は日本の家賃より安いと言えば安いが、玄関がない分、プライバシーや騒音が気になるので、多分日本人には合わないだろう。
ベッドが1つしかなかったので、どうやって寝ているのか聞いたところ、ベッドに2人寝て、後の3人は床で寝ていると言う。中々大変な生活だ。
こちらは部屋2つセット。15,000円程度の家賃。場所や条件によってまちまちなのかも知れない
インド人の貧困と教育環境
実際に障がいを持っている方の家にも案内してもらう。案内してもらった。家の男性は幼い時から目がほとんど見えないそうだ。今回も色々と話を聞かせてもらった。
Q:仕事は何かしてますか?
A:仕事は何もしてません。文字の読み書きが出来ないので働く事ができません。姉がゴミ拾いや物乞いをするので、それで助けてもらってます。
Q:物乞いは1日どのくらい稼げますか?
A: 1日多くて700円程度です。
Q:ゴミ拾いの仕事ならどのくらいの稼ぎになるのですか?
A:kg/30円前後です。
ゴミを10キログラム拾っても、300円程度にしかならないのなら、物乞いをしたほうが楽だろうと言うのも確かにうなずける。
幼い頃より目に障がいを持った男性と、その姉
後日、親しくなった医者のインド人に、学校で無料で読み書きを教わる事が出来るのに、なぜ働けない人が未だ多いのか聞いてみたところ、
「親に学歴がなくて仕事がないと、当然物乞いをして収入を得ないといけません。親が物乞いをするより、子供が物乞いをした方が、哀れみも感じやすく、多くのお金がもらえます。親からすると、子供を学校に行かせるより、物乞いをしてもらった方が、一家の支えになるのです。幼い頃から生活のため、物乞いや親の手伝いをさせられる子供は多いです。つまり、物乞いと言う楽にお金を得られる手段があるからこそ、教育の機会が阻まれてしまい、子供もまた成長して物乞いになってしまうのです」
との事。
貧困により、教育の機会が阻まれてしまう悪循環が起きているのである。
いろいろ話を聞かせてもらった後、
「お金はいらないから、何か食べ物が欲しい」という要求があったので、お礼に露店で買ったものを少し提供した。
ちなみに今日1日案内してくれたマリー。別れ際になって、腹が減っているから、何か飯をご馳走してくれと。こんなこと言ってくる時点で、絶対ガバメントスタッフじゃ無いのだが、この前にも途中ジュースを奢ったり、タクシー代を払ったり、家族に食べ物を買ってあげたりしたので、飯なら寺院や配給食で賄えるだろうと言うとキレ出すマリー。冒頭の徳を積みたいだけだと言っていた内容からの手のひら返しにこちらもイラッときたが、何かあってもまずいので、去り際に約400円ほど掴ませるととりあえず大人しく去って行った。
しかし後から考えると、色々寺院やインド人の生活環境を生で見れたのはかなり勉強になった。もう少しお礼をしておくべきだったのか、それとも仕事に就かず物乞いさせるのは本人と家族の為にならないと厳しく対応すべきだったのか。旅を続ける中で、じっくり考えていきたいと思う。
続く
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ライター keita0206
1992年福岡県生まれ。先天性四指欠損という、左手の指が生まれつき4本無い状態で生まれる。大学4年生の就活の最中、ママチャリ日本一周を思い立つ。大学卒業後は就職せずアルバイトで資金を貯め、2015年5月〜2016年9月までの約1年4ヶ月で、ママチャリでの日本一周を達成。その後クラウドファンディングにて旅の記録を書籍化。旅後は大阪で一人暮らしをするも、旅したい欲求が溢れ2022年7月〜12月にバイクで2度目の日本一周を達成。現在は自転車インド一周の旅に向けて準備中。
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