小学生にもわかる「障害者差別解消法」~人に優しくする法律~
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ライター:風来坊
昔の日本には「障がい者を家の中に閉じ込める法律」がありました。しかし、今の日本では「障がいが有る人も無い人も同じ場所に居られるようにする法律」があります。そして「人に優しくしよう」という法律もあるのです。あまり広まっていない「障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)」とはなんでしょう?
障がい者を閉じ込める法律があったらどう思いますか?
1900年の日本には「精神障害者監護法」というものがありました。
この法律では、精神障がい者がいる家庭は警察署に届けを出して家族(精神障がい者)を家の中に閉じ込めておかなければいけませんでした(家に閉じ込めることを私宅監置と言います)。
1931年には「癩(らい)予防法」というハンセン病の患者を療養所という場所に閉じ込める法律がありました。
悲しいことですが、日本ではこうした障がい者を閉じ込める法律がたくさんありました。
しかし、障がいが有るとか、無いとかで人の価値(素敵なポイント)が決まるでしょうか?
運動が得意ということも素敵なポイントですし、音楽が得意なことも素敵なポイントです。
優しいということも素敵なポイントですし、面白いということも素敵なポイントです。
障がいが有ることで不便なことはありますが素敵なポイントまで消えることはありません。
この文章を書いている私は事故で利き手が不自由になり鉛筆で字を書くのは苦手になりましたが、キーボードや音声入力を使うことで今も文章を書くことができています。
つまり、私は障がいで鉛筆が持てないので不便なことはありますが、文章を書くという私の素敵なポイントは消えていないのです。
素敵なポイントがある人を不便なポイントもあるからと閉じ込めることに意味なんてないのです。
2016年には「障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)」という法律ができました。
この法律では「障がいが有る人はこっちに来ないで」と職場やお店が言うことは禁止になりました。
つまり、この法律で障がいが有る人も無い人も同じ場所に居られるようになったのです。
しかし、同じ場所に居られるようになっても障がい者には不便なことや困ったこともあります。
閉じ込められることがなくなっても不便なことや困ったことがたくさんあっては障がいの有る人は安心して外出できません。
そこで障害者差別解消法では「困っている人に助けてと言われたらできるだけお手伝いしましょう(これを合理的配慮と言います)」というルールを決めました。
利き手が不自由な私が障害者差別解消法の合理的配慮で誰かに助けて欲しいときは
利き手が不自由な私が障害者差別解消法の合理的配慮で誰かに助けて欲しいときは、
私「すいません。手が痛くてボタンが押せないので代わりにエレベーターのボタンを押してもらえますか?」
元気な人「いいですよ。」
ポチッ
私「ありがとうございます。」(*´▽`*)
元気な人「どういたしまして。」(*´▽`*)
とお互いの笑顔の上で行われるのです。
しかし、障害者差別解消法の合理的配慮は誰かのワガママを許す法律ではありません。
例えば、悪い人が「自分は障がい者でお金にも困っているから財布を丸ごと置いていけ」と言ってきても、その話が無茶や無理(これを過重な負担と言います)だと思えば言うことを聞かなくて良いのです。
つまり、障害者差別解消法は、困っている人と元気な人がお互い気分良く過ごすためのルールを決めたものなのです。
そして、この法律の困っている人とは障がい者だけではなく、小さな子、妊婦さん、お年寄り、ケガをしている人など、困っている全ての人が対象なのです。
このように昔の日本では「困っている人(障がい者)を閉じ込める」という法律がありましたが、その法律が間違っている事に気付いたので、今の日本では「障がいが有る人も無い人も同じ場所に居られるようにしよう」という法律に代わりました。そして「人に助けてとお願いされたら親切にしよう」という法律もできました。
障がいが有る人も無い人も同じ場所に居られるようになったことは素敵なことだと思います。
しかし、「困っている人に優しくしましょう」と法律で決める必要があるのでしょうか?
困っている人に優しくするということは法律で決められなくても当たり前にすることではないでしょうか。
当たり前のことを大人にさせようとすると法律を作らないといけないのかも知れませんね。
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ライター 風来坊
東北の片田舎在住のアラフォー。 児童虐待、いじめ、パワハラ、自傷による措置入院を経験。 田舎では福祉に偏りがあると考え30代から大学で福祉を学ぶ。 数年前には事故で利き手が不自由になり、現在はリハビリを兼ねた趣味(プラモデル、ニードルフェルト、UVレジン)に没頭中。 いつか全ての人が楽しめる駄菓子屋を開きたい。
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