一つじゃない 第14回
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ライター:風来坊
電子レンジで食べ物を温めることを「チン」と言っていた時代から時は流れ、現代では文字数を増やした「レンチン」という呼び方が一般的になりました。
過去には「ナウい」「チョベリバ」等の言葉が生まれては消えていき、そうした言葉の変遷にアラフォーの私は着いて行けず「詰んだ」と思う日々を送っているのです。
そんな中で、ふと「マイノリティを取り巻く言葉の変遷はどうなっているのだろう」と思うのでした。
文字数を節約することが正しい?
私は「ドライブコーダー」を「ドラレコ」と縮めて文字数を節約するロジックに納得できるタイプです。
ですから、過去には電子レンジで食べ物を温めるときに「チン」と言っていたものが、現代では「レンチン」と文字数が増えたことに対し不可解に思っています。
1970年代に連載が開始された漫画「ブラックジャック(手塚治虫)」では身体障がい者を縮めて「身障者(しんしょうしゃ)」と表現されています。更に現代のスーパーでも身体障がい者のために用意された駐車スペースに「身障者用駐車スペース」という案内看板を挙げている所もあります。
しかし、身障者に対して精神障がい者を「精障者(せいしょうしゃ)」と表現するでしょうか?
知的障がい者を「知障者(ちしょうしゃ)」と表現するでしょうか?
現代の福祉は「身体障がい者」「精神障がい者」「知的障がい者」を分け隔てなく支援する「三障害一元化」という方針の下で展開されています。
ですから、他の障害で適用されないような「文字数の節約」を身体障がいの方だけに適用するのは不適切なのではないかと私は思うのです。
ネットスラングが正しい?
俗語のことを「スラング」と言います。
俗語とはあまり上品な言葉ではない辞典に載っていない言葉とご理解頂けると概ね正解です。
例えば「かっこ悪い」を表す「だせぇ」と言うのが良い例です。
このような俗語はインターネット上でも発生し、それを「ネットスラング」と言います。
「ググる(グーグルで検索する)」や「コピペ(コピー&ペースト)」のように、他者へ脅威を与える可能性が低いものもありますが明確に他者を蔑み、傷付ける言葉も存在しています。
例えば「池沼(いけぬま)」です。
これは他者を蔑む言葉であり、同時に知的障がい者への理解を歪曲したものなのです。
「池沼」は音読みすると「チ・ショウ」となり「知的障がい者」を表すそうなのです。
そして「池沼」は他者を蔑む際に「お前は池沼だ」といった使われ方をするのです。
私がこの「池沼」という言葉に最も怒っている理由が「知的障がい者を蔑むシンボルとしていることです。
知的障がい者は健常者と変わらず、国家資格(自動車の運転免許など)も取れますし、働くこともできます。
そんな人たちを偏った考え方で「蔑むシンボル」にする人たちの方が劣った種族であり、こうしたインターネットという自身の身を隠しながら他者を攻撃する卑怯な人々の方を「蔑むシンボル」にすべきだと私は思うのです。
テレビのコメントが正しい?
「メンヘラ」という言葉は元々は「メンタルヘルス」であり、それ自体は悪い言葉ではありませんでした。
しかし、現代の使い方としては「妹がメンヘラだからその友達もメンヘラ(メンヘラ=頭がおかしいと言いたいらしい)」と言ったようにネガティブな際に使われるようになってきており、更にテレビで悩み事を話した人に対し、お笑い芸人が「ここはなんのホスピタル(病院)やねん!」と嘲笑い、暗に「悩みを持っている人=嘲笑の的」という方程式を社会に垂れ流したことで、日本はメンタルヘルスで悩んでいる方が自身の悩みをオープンにし難い国になっていると私は感じています。
そうしたテレビが無責任に垂れ流した情報のせいで、治療を受けることを躊躇する人に対しテレビはどのようにフォローするのか?実際には何もフォローをしないのでテレビで面白おかしくメンタルヘルスについて触れることに関して私は非常に憤っているのです。
マイノリティを取り巻く悪しき言葉の変遷
知的障がい者のことを昔は「精神薄弱者(心が弱い者)」と表現していました。
そして現代のネットスラングでは「池沼」です。
どちらの言葉も「その人」を見ず勝手にその人の価値が低いと思い込みぶつけられた暴言です。
日本人はいつになったら他者を頭ごなしに否定することを辞められるのでしょうか?
全ての日本人の心が貧しいとは言いませんが、あなたの周囲にも心の貧しい日本人が隠れているかも知れませんよ。
そうはなりたくないものです。
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ライター 風来坊
東北の片田舎在住のアラフォー。 児童虐待、いじめ、パワハラ、自傷による措置入院を経験。 田舎では福祉に偏りがあると考え30代から大学で福祉を学ぶ。 数年前には事故で利き手が不自由になり、現在はリハビリを兼ねた趣味(プラモデル、ニードルフェルト、UVレジン)に没頭中。 いつか全ての人が楽しめる駄菓子屋を開きたい。
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